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支援国を「落とさない」&日土友好の新たな架け橋となった宮崎さん

111205-01BooksKokosuki.jpg 拙ブログの「外国人から見た日本と日本人」シリーズでよく引用させていただいている【私は日本のここが好き!】シリーズ。
 編者はノンフィクション作家で現在(財)地域社会研究所理事を務めておられる加藤恭子さんです。


 2011年8月発行の最新作【私は日本のここが好き!特別版・親愛なる日本の友へ】(東日本大震災版)に、加藤恭子さんの「青年よ、“大使になれ”」と題されたこんなコラムが掲載されていました。
 
【◆20年後の謝意表明

 (東日本大震災に対する)世界各地からの支援の中で、私自身が強い感慨を覚えたのは、クウェートからの原油100万バレル(約450億円相当)の無償援助であった。「20年後の謝意表明」として、オタイビ駐日大使が4月27日、日本政府にクウェート石油相からの親書を渡したと報道にはある。

 では、20年前、日本とクウェートの間には何があったのか?何に対する“謝意”なのか。

 1990年8月2日、約12万のイラク軍がクウェートに侵攻、「湾岸戦争」が開始された。翌年1月には19ヶ国からなる国連の多国籍軍が反撃を開始、2月にはイラク軍は撤退した。

 日本は憲法上の制約から自衛隊が参戦することはできなかったが、130億ドル(約1兆7000億円)もの寄付を行った。だが周囲からの反応の冷たさなどは、手嶋龍一『外交敗戦−130億ドルは砂に消えた』(新潮文庫2006年)にくわしい。諸国からの援助で平和を取り戻したクウェートは、1991年3月11日付のアメリカの幾つかの主要新聞に、感謝を示す全面広告を載せた。感謝の言葉とともに、30ヶ国の国名。その中にJapanがない!あの130億ドルは、たった一つの単語にも値しなかったのだ!すぐにこちらも抗議の全面広告を載せるべきと考えた私は、文面も作ったが、それは拙著『言葉でたたかう技術−日本的美質と雄弁力』(文藝春秋2010年)に収められている。

 これが、20年前の二国間の現実だったのだ。その後、どういう抗議がなされ、クウェートの日本“無視”が“謝意”に変わったのかは知らない。たった一つ知っているのは、コスモ石油から米国との合弁会社の社長となった山本英夫氏の行動である。政府の要請でサウジアラビアに赴任した山本氏は、1991年夏クウェート市に入った。「石油関連技術ワークショップ」主宰のためだったが、昼食会ではクウェート皇太子の隣の席に座った。「このたびのお国のなさったことは、日本国民に対して非礼である」と、山本氏は皇太子に直接苦言を呈したとのことである。こうした指摘や抗議が重なり、20年後の変化に結びついたということなのだろう。

 この事件から教訓を得たとすれば、一番目は、まず、自分のしたことはきちんと公言し、反論があるなら直ちになすべきこと。二番目には、手をさしのべてくれた国の名を、リストなどから決して落としてはいけないということではないだろうか。

◆支援してくれた国への謝意

 ここで、今回の震災に大使、支援を行ってくれた国々へ眼を転じることにしよう。

 6月3日現在の外務省資料によると、救助チームや専門家チームを災害の翌日に早速送ってくれたのは、韓国、シンガポール、スリランカとなっている。13日には、ドイツ、スイス、アメリカ、中国、英国、ニュージーランド、国連となっている。こうして、人的支援が続くのである。

 同じく外務省の5月30日付資料によると、「現時点で計159の国・地域及び43の機関が支援意図を表明」となっている。「外国政府などからの物資支援や寄付金をまとめたもので、民間団体や個人からの支援は含まない」と記されている。現時点では、数はもっと増えているかもしれない。

 159の国や地域からの支援表明!この数に日本人は圧倒されたのではないだろうか。

 (私たちは世界に対してどれだけのことをしてきたのだろう?)
 (日本人は世界中の人たちからこんなに好かれているのだろうか?)などと…

 有事なみの作戦で取り組んだアメリカや、支援物資や義援金の額で日本人を驚かせた台湾の他に、“貧しい”とみなされている国々からも、多額の義援金が送られてきた。

 159ともなると、なじみのある国名ばかりではない。リストからちょっと拾ってみると、グアテマラ、タンザニア、パプアニューギニア、ブルネイ、アンドラ、ラトビア、ガボン、ナミビア、ボツワナ、モルドバ、ガイアナ、マリ、セントルシアなど、(あれ、どこだったかしら?)と考える人もいるに違いない。

 これらの国々、たとえどんなに小さな支援だったとしても、救援の身振りを示してくれた国は、一つとして落としてはいけない。すべての国々に、「有難う」と感謝の気持ちを伝えるのだ。


 5月30日の時点では「159の国・地域及び43の機関が支援表明」でしたが、外務省サイトから最新のデータを見ますと、「163の国・地域及び43の機関が支援表明」ということで、4つの国あるいは地域が増えています。

 せっかくなので一覧を貼り付けておきますね。

外務省>東日本大震災>各国・地域等からの緊急支援
5.支援表明国・地域(9月15日現在)

 以下163の国・地域及び43の国際機関から支援の申し入れがありました(50音順)。

(アジア)
 インド,インドネシア,韓国,カンボジア,シンガポール,スリランカ,タイ,中国,ネパール,パキスタン,バングラデシュ,東ティモール,フィリピン,ブータン,ブルネイ,ベトナム,マレーシア,ミャンマー,モルディブ,モンゴル,ラオス,台湾,香港

(大洋州)
 オーストラリア,キリバス,サモア,ソロモン,ツバル,トンガ,ニュージーランド,バヌアツ,パプアニューギニア,パラオ,フィジー,マーシャル,ミクロネシア

(北米)
 米国,カナダ

(中南米)
 アルゼンチン,アンティグア・バーブーダ,ウルグアイ,エクアドル,エルサルバドル,ガイアナ,キューバ,グアテマラ,グレナダ,コスタリカ,コロンビア,ジャマイカ,スリナム,セントビンセント及びグレナディーン諸島,セントルシア,チリ,ドミニカ(共),トリニダード・トバゴ,ニカラグア,ハイチ,パナマ,パラグアイ,ブラジル,ベネズエラ,ペルー,ボリビア,ホンジュラス,メキシコ

(欧州)
 アイスランド,アイルランド,アゼルバイジャン,アルバニア,アルメニア,アンドラ,イタリア,ウクライナ,ウズベキスタン,英国,エストニア,オーストリア,オランダ,カザフスタン,キプロス,ギリシャ,キルギス,グルジア,クロアチア,コソボ,スイス,スウェーデン,スペイン,スロバキア,スロベニア,セルビア,タジキスタン,チェコ,デンマーク,ドイツ,トルクメニスタン,ノルウェー,バチカン,ハンガリー,フィンランド,フランス,ブルガリア,ベラルーシ,ベルギー,ボスニア・ヘルツェゴビナ,ポーランド,ポルトガル,マケドニア,マルタ,モナコ,モルドバ,モンテネグロ,ラトビア,リトアニア,リヒテンシュタイン,ルーマニア,ルクセンブルク,ロシア

(中東)
 アフガニスタン,アラブ首長国連邦,イスラエル,イラク,イラン,オマーン,カタール,クウェート,サウジアラビア,トルコ,バーレーン,パレスチナ自治政府,ヨルダン

(アフリカ)
 アルジェリア,ウガンダ,エジプト,エチオピア,エリトリア,ガーナ,ガボン,カメルーン,ガンビア,ケニア,コンゴ(共),ザンビア,ジブチ,ジンバブエ,スーダン,赤道ギニア,セネガル,タンザニア,チャド,チュニジア,トーゴ,ナイジェリア,ナミビア,ニジェール,ボツワナ,マダガスカル,マリ,南アフリカ,モーリタニア,モロッコ,ルワンダ

(国際機関)(アルファベット順)
 アジア開発銀行(ADB),アフリカ開発銀行(AfDB),東南アジア諸国連合(ASEAN),黒海経済協力機構(BSEC),カリブ共同体,包括的核実験禁止条約機関(CTBTO),エネルギー憲章事務局,欧州連合(EU),国連食糧農業機関(FAO),地球環境ファシリティ,ガス輸出国フォーラム(GECF),国際原子力機関(IAEA),国際刑事警察機構(ICPO),赤十字国際委員会(ICRC),米州開発銀行(IDB),国際エネルギー機関(IEA),国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC),国際労働機関(ILO),国際麻薬統制委員会(INCB),国際移住機関(IOM),国際科学技術センター(ISTC),国際電気通信衛星機構(ITSO),国際熱帯木材機関(ITTO),国際電気通信連合(ITU),メルコスール,北大西洋条約機構(NATO),国連人道問題調整部(OCHA),経済開発協力機構(OECD),国連災害評価調整(UNDAC),チーム国連開発計画(UNDP),国連環境計画(UNEP),国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),国連教育科学文化機関(UNESCO),国連人口基金(UNFPA),国連人間居住計画(UN−HABITAT),国連児童基金(UNICEF),国連ボランティア計画(UNV),万国郵便連合(UPU),世界銀行,世界税関機構(WCO),国連世界食糧計画(WFP),世界保健機関(WHO),世界貿易機関(WTO)

 加藤恭子さんも言われているとおり、これを見ると本当に圧倒されます。
 改めて「世界の皆様、ご支援ありがとうございます」とお礼を申し上げたいです。


 加藤さんのコラムに話を戻します。

 加藤さんはこれら支援してくれた国・地域に「有難う」と感謝の気持ちを伝える方法として、「有難う大使」を派遣することを提案されています。

 大使と言っても、忙しい外交官の本物の大使に任務を負わせるのは酷なので、未来の人材の育成のために若者を鍛える計画も兼ねて、中学生、高校生、大学生から選抜するのはどうか、というものです。

 提案の是非はともかく、私も個人的に「日本は世界各地から受けた支援のお礼をきちんとできているんだろうか?」と若干の疑問を感じているのは確かです。

 特に民主党政権って、そういうことをおろそかにしてそうなイメージがあるし…。
 実際、台湾に対しては民間人が呼び掛けて感謝広告を出しましたよね。

 湾岸戦争の時に日本が感じたように、「あれ?私たちも支援したのに感謝してもらえてないの?」と寂しい思いをしている国・地域があったりしないでしょうか。

 また、日本から謝意がある程度伝えられた国・地域に対しても、それプラス何かもう一押しあれば友好はもっと深まるだろうなと、ふと思いました。
 その意味では「有難う大使」も悪くないかもしれません。


 東日本大震災でこんなにもたくさんの国が日本に支援表明してくれたというのは、日本が過去にたくさんの国に対して支援をしてきたことの証左でもあります。

 中には、日本と長い交流の歴史があって、互いに何度も助け合ってきた国も少なくないですよね。

 例えば、トルコ(土耳古)。

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 拙ブログでも何度かお伝えしたとおり、トルコは世界でも稀に見る親日国です。
 1890年のエルトゥールル号遭難事故以降、日土友好は進化を続けてきました。

09/5/23付:日本とトルコ 友好の歴史
10/6/21付:世界が忘れない日本の物語「ビーバップ!ハイヒール」より

 最近、トルコの親日ぶりを再認識した出来事がありました。
 今年トルコ東部で発生した大地震がきっかけです。

 10月23日にマグニチュード7.2の大地震が発生し、世界中から多くの救援隊やボランティアが現地に入りました。
 東京のNPO「難民を助ける会」のメンバーも現地で支援活動を展開しました。

 ところが、支援活動をしている最中の11月10日に再び大地震が発生。
 「難民を助ける会」のメンバーである宮崎淳さんが、滞在していたホテルの倒壊により亡くなってしまったのです。

 トルコではインターネット上で、宮崎さんに哀悼の意を表す多くの書き込みがなされました。

 また、在日本トルコ大使館は11月11日、ウェブサイト上で宮崎さんの活動について、「感謝と敬意とともにいつまでも我々の記憶に留まるでしょう」との声明を発表しました。

 さらに、トルコの英字紙やカタールのアルジャジーラ(英語版)は、トルコのアブドラ・ギュル大統領が天皇陛下に手紙を送ったと報じています。

 書簡の中でギュル大統領は、日本から送られた被災地への支援に対して「2国間の友好と親密さの証だと感じた」と記した後、宮崎さんと、今回の地震で負傷した「難民を助ける会」の近内みゆきさんについて触れ、最大級の賛辞を贈ったそうです。

 「私たちトルコ国民は、おふたりの自己犠牲の精神を決して忘れません。被災地・バンにおける献身的な活動を通じて、私たちの心の中に長く記憶されることでしょう」

 宮崎さんの遺体は現地時間11月12日夕方、トルコを離れましたが、出発前にはイスタンブールの空港で、トルコ政府による追悼式典が催されました。
 ひつぎは日の丸に包まれ、政府関係者や現地の救助隊員が見送りました。
 (以上、J-CASTニュース11/14による)

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 さらに、トルコメディアは11月13日、宮崎さんの名前を首都アンカラ市内の通りに命名する見込みであると報道しました。

 アンカラのギョクチェク市長は、「宮崎さんの名前を忘れてはいけない。日本国民と政府に感謝の気持ちを示したい」と述べ、通りの命名を「市議会に提案する」と明言したとのことです。
 また、市長は「トルコ人は宮崎さんを、英雄として思い続ける」と話したそうです。
 (以上、共同通信11/14による)
 
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 【画像は「ぶらぶらブログ」様より拝借。アンカラ城から臨むアンカラの住宅街】

 日本は世界の多くの国から愛されていますが、ただ、ここまで“破格”の待遇をもって日本と日本人に接してくれる国は、台湾などごく一部を除けば、そうはないと思います。

 東日本大震災もトルコ大地震も、それぞれの国と国民にとって大変不幸な出来事であったことは間違いありません。

 ですが、こういった天災あるいは事故や紛争などをきっかけに、日本と世界各国との間に温かなつながりが広がっていく側面もあるのだと気づいた時、私は少し救われたような気持ちになるのです。

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※トルコ地震義援金受付中です。
 東日本大震災や台風12号による水害の際に支援して下さったトルコに恩返しを!
 受付窓口については拙エントリー10/25付及びコメント欄で私の方から和歌山県の口座、また読者皆様から他に複数の口座を提示していただきましたが、「まっとし」さんのコメントにあるように10月28日にトルコ大使館で日本の銀行口座が開設されていますので、現在はこちらに送るのがベストであると思います。
国内義援金口座の開設について(トルコ大使館)
28.10.2011

親愛なる日本国民の皆様、
トルコのヴァン県で発生した地震災害に対する義援金の受付窓口として、新たに日本国内の銀行に口座を開設したことをお知らせ申し上げます。

義援金の受付口座は下記の通りです。

銀行名:三菱東京UFJ銀行
支店名:渋谷明治通支店(支店番号:470)
口座番号:(普)3144041
口座名義:トルコ大使館 災害支援義援金受付口座


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Comments

何時もながら気持ちの洗われる記事に感謝.
学生大使は良いアイディアだ.
そして, 自分達のことばかり嘆いてはいけない
と言うこと. 少なくとも我々は生活できている.
ちび・むぎ・みみ・はな | 2011/12/06 12:51 PM
学生大使だと治安の問題が大きいなぁ・・・
犯罪等に対しての現地人との意識の違いも大きいだろうし。
でも何かの形で恩返しはしたいね
| 2011/12/06 05:05 PM
くっくりさん、素晴らしい記事をありがとうございます。政治でろくな事がない今日このごろ、心が癒されました。
トルコのように日本と真の友好を結んでくれる国を増やすためにも、学生大使はよいアイデアだと思います。歴史をふり返っても、留学生が友好大使の役割を果たした例はたくさんありますからね。
peach | 2011/12/07 02:11 AM
トルコ地震義捐金、前にここで見て、やろうと思ってすっかり忘れてましたw
今日送金します。
蒼々 | 2011/12/07 08:04 AM

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