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日本は独立国家なのか?これで拉致被害者を救えるのか? 元海自士官の問いかけ

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 「正論」2015年4月号(2月末発売)をようやく読了。
 伊藤祐靖(すけやす)さんの記事がとても興味深かったです。

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[画像はチャンネル桜H26/9/23より]

 伊藤さんは昭和39年生まれ。
 海上自衛隊に二等海士で入隊され、「能登半島沖不審船事件」の際、護衛艦「みょうこう」航海長として不審船を追跡。この経験から海上自衛隊の特殊部隊・特別警備隊創設に携わられ、同隊初代先任小隊長に。
 平成19年に退官され、現在は各国の警察、軍隊などで訓練指導されると同時に、予備役ブルーリボンの会幹事長も務めておられます。

【これで横田めぐみさんを救えるか 特殊部隊の本懐 邦人救出論議に思う】

 記事のタイトルはこうですが、私が特に印象的だと思ったのは、実は拉致問題から少し離れた箇所にありました。

 最初は全然違うお話をされているように見えて、読み進むにつれ、根っこで拉致問題とも繋がっていることが分かってきます。

 そこの箇所をできるだけ簡潔にまとめてみます。
 ※以下の画像はイメージです。
 
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 中東・イスラム圏の人々の多くは、日本人を信頼し、尊敬の念で見てくれています。
 伊藤さんによれば、彼らが日本を尊敬する理由は、

・超大国ロシアに戦いを挑み、勝った。
・超大国アメリカと戦争をして、4年間戦った。
・敗戦後、驚異的な復興を遂げた。
・周辺国ばかりでなく、発展途上国に多額の援助をしている。
・宗教的にも何ら衝突はない。
・欧米の人々とは違い、妙な下心がなくて信頼できる。


 日本を尊敬する理由に「平和憲法」を挙げる人はもちろんいません。←これは私の補足。

 ある中東の人は、「中東のゴタゴタは、第一次世界大戦以来、積年の恨みがある白人が絡むと絶対に解決できないが、日本人が介入すればできるかもしれない」と言っていたそうです。

 ここでも「平和憲法」を理由にはしていません。←これも私の補足。

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 彼らが日本を語る時、一番時間をかけ、熱く語るのは、ロシア、アメリカという超大国に挑んだことだそうです。

 そして彼らが日本を尊敬する核の部分は、日本が「国家として消滅する」ことを覚悟してまで、正しいと信じる道を貫こうとした点であり、「それは現在の日本に最も欠けているものだ」と伊藤さんは考えています。


 伊藤さんがそう考えるようになった伏線は、約25年前にありました。

 伊藤さんは26歳の時、アメリカ海軍の空母に約1カ月乗艦しました。
 指定された部屋は3人部屋で、1人は白人の大尉、もう1人が黒人の中尉でした。

 うち黒人の中尉とは階級も勤務場所も同じで、年齢も自分より1つ下と近く、すぐ仲良くなりました。
 ところが、ひょんなことがきっかけでその中尉と口論になったそうです。

 黒人の中尉はこう言ったそうです。

 「日本人は、黒人の歴史を知らないからな。お前のおじいさんは人間から生まれたんだろ?俺のじいさんは人間から生まれたんじゃない。奴隷から生まれたんだ。
 鍵ってものは内側から自分で閉めるものじゃない。外側から白人に閉められるものだ。食べたいもの?好き嫌い?そんなものない。白人から与えられる餌を食べるんだ!
 奴隷解放っていつだか知ってるか?俺が生まれる100年前だ(1865年)。でも、俺は海軍中尉だ。白人に命令をしている」


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 次の日、昼食の時、仲良しのネイティブアメリカンが伊藤さんの隣りに座ってきて、食事をしながら喋っていたら、ふいにこう問いかけられたそうです。

 「お前は、何で奴(同部屋の黒人中尉)と一緒にいるんだ?そんなに一緒にいなくたっていいだろ?奴は黒人だぞ!」

 前日、奴隷の話を聞いて衝撃を受けていた伊藤さんは、「黒人だから何だ!」と言い返しました。

150406-05native.jpg

 するとネイティブアメリカンの彼が返した言葉は……、

 「黒人っていうのは、生きていたいからって奴隷になったような奴らなんだぞ。俺たち黄色人種は、そんなことしない。日本人だってしないだろ。誇りがあるんだ。ネイティブアメリカンは、奴隷になることより、死ぬまで戦うことを選んだ。だからほとんど生き残ってない。日本人だって、屈服することよりも死ぬまで戦うことを選んだじゃないか。
 マッカーサーは逃げたけど、硫黄島、サイパン、日本兵は全員死ぬまで戦った。カミカゼはアメリカ海軍の空母に突っ込んでいった。…本土を焼かれても焼かれても戦い続けた。原爆。それも2発だぞ、落とされて、国土を民間人もろとも焼き尽くされ…」


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 伊藤さんは予想だにしない展開に混乱しました。
 黒人を差別するのかと思ったら、確かに差別だったが、切り口が違ったからです。

 「日本人は、命より大切な誇りの為に戦った、だからああいう戦い方になるんだ」
 とネイティブアメリカンの彼は言い、そして
 「その国の戦士のお前が、何で黒人と仲良くなれるんだ!」
 と喧嘩腰になって言ったそうです。

 しかし、前日に黒人中尉から奴隷の話を聞いており、黒人を貶(さげす)むような言葉を聞き流す気になれなかった伊藤さんは、喧嘩に持ち込む気満々でこう煽りました。

 「お前は、黒人の悪口言ってるけど、その黒人と同じアメリカ海軍に属して、同じ空母に乗ってるじゃないか。インチキアメリカ人なんてやってないで、独立戦争しろ

 すると、さっきまで喧嘩腰だった彼は急にうつむき、「そうなんだ…」と言って、涙を流したそうです。

 伊藤さんは急に胸を締め付けられるような苦しみを感じ、もらい泣きしそうになり、「すまなかった」と一言謝りました。

 民族の持つ深い歴史を知りもしないのに、取り返しのつかないことを言ってしまったと思ったそうです。

 涙を流している彼の傍らで伊藤さんは、こんなことを考えました。

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 「俺にあんなことを言う資格はない。俺こそこんなところにいていいのか?今俺が乗っているのは、わずか50年前に先輩たちが特攻機に乗って突っ込んでいったアメリカ海軍の空母なんだぞ。突っ込んでいった先輩は、何を守るために命を捧げたのか

 今の日本という国の姿を正視していない自分に気づき、「俺こそ独立戦争をすべきなんじゃないか」と思ったそうです。

 と同時に、「突っ込んでいった先輩は、日本が日本の理念でものごとを決断し、実行できる国のかたちを守ろうとしたのではないか」とも。

 25年前に頭をよぎったこの思いを、伊藤さんは保留状態にして、そこで止まってしまっていたそうです。


 それが甦ったのは今年1月。

 伊藤さんは、カイロにおける安倍総理の「ISILと闘う周辺各国に支援を約束する」という演説を聞いた時、建国の理念である“八紘一宇”との隔たりを感じ、強烈な違和感を覚えたそうです。

(伊藤さんはこれまで日本の外交には“八紘一宇”の思想が生きていると考えてきた)

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 そこで伊藤さんが思い出したのが、25年前の、黒人とネイティブアメリカンとのやりとりでした。

 安倍総理が日本の理念でものごとを決断し、発言しているとはとても思えなかった、だから違和感を覚えたのだと。

 「どう考えても日本にとって最優先すべき対象は、拉致被害者だろう。無理やり、あるいは騙されて拉致された彼らを放置しておいて、再三にわたる渡航自粛要請を無視し、自分の意志で、自己責任と宣言して行った人の事件をきっかけに法整備を進めると言ってみたり、必ず償わせると言ってみたり。彼ら(ISILに殺害された)2名をどうでもいいと言っているのではない。誰がどう考えたって優先順位がおかしいだろう」

 「日本は独立している国だと思っていたが、実は空母に乗っている黒人やネイティブアメリカンと同じなんじゃないか?自国の理念で行動できていないんじゃないか?憲法にしろ、外交にしろ…」

 私はカイロでの安倍総理の演説が間違っていたとは思いませんが、拉致問題の優先順位が落ちているんじゃないか、どんどん後回しにされているんじゃないかという危惧は強く抱いており、そこは伊藤さんと意見が一致していると思います。

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 伊藤さんはこの後、記事タイトルにもある「特殊部隊」の話をされています。

 短く言うと、特殊部隊員は「拉致被害者を奪還しろ」という命令が実行されれば、自分の命をもろともせず、淡々と任務を達成しようとする、という内容です。

 このあたりのことを伊藤さんは、「正論」2015年2月号でも述べておられました(昨年11月19日に行われた「予備役ブルーリボンの会」シンポジウムでの発言をまとめたもの)。

 「我が日本国政府は、自国民が『あいつに連れ去られた』ということを具体的に公表して久しい。これは『可能性がある』等のあいまいなことではなく、『連れ去られた』と、一国が世界に公表している非常に重大な事です。それなのに、いまだ穏やかな話し合いしか続いていない。ここまで国民の尊厳と国家の威信を蔑められておいて、なおかつ何を守りたいのか

 「相手に勝てようが勝てまいが関係ない、実力で取り返しに行くと思うんですけれども、我が国はそれをまだしていない。しない理由は一体どこにあるのか

 「その事情を知る、もしくはそれに携わることのできる議員の方々には、その理由と、それで国として成り立つのか、それよりも優先している事は何なのかというのを是非ともお話しいただきたいし、お調べいただきたい」

 「比喩ではなく、本当に命を懸けて拉致被害者を奪還しようと思っている者たちがこの日本にはおります。防衛省がなんと言うかはわかりませんが、現在の日本の力をもってすれば確実にできることです。その作戦に出ることを想定し、その作戦で自らの命が無くなることも覚悟し、毎日心身を錬磨し、本当に命をかけて国民の尊厳と国家の威信を守ろうとしている者が今もいることを、知っていただければと思います」


 今の憲法下で実力行使による拉致被害者奪還がほぼ不可能であることは、もちろん伊藤さんも認識されているでしょう。

 だから伊藤さんの主張を言い換えれば、「なぜ憲法9条を改正しないのか。改正せずに国として成り立つのか。改正よりも優先している事は何なのか」ということであろうと思います。

 拉致被害者が帰国できなくてもいいと思っている日本国民は、たぶんほとんどいません。

 が、「憲法9条を改正するぐらいなら拉致被害者は帰国できなくてもやむを得ない」と潜在的に思っている国民は(政治家も)、実はけっこうな数に上るのではないでしょうか。

 そういう人たちは、自覚していようがいまいが、「人の命や自由よりも憲法が大事」という、本末転倒な考えの持ち主ということになります。
 憲法とは、国民の生命や自由を守るためのものであるはずなのに。

 あるいは善意の塊のような人たちで、未だに「話し合いで取り返せる」と思っているのかもしれません。
 国家のふりしたヤクザ(北朝鮮)とこれまで何度も何度も話し合ってきたが、何も動かない現実に蓋をして。

 最近の報道によれば、憲法改正の最初の発議は早ければ今後2年以内に行われます。
 その時に9条が俎上に載る可能性は今のところ低いようですが、9条改正について国民的な論議になるだけでも、北朝鮮には大きなプレッシャーとなるはずです。


 昨年5月、北朝鮮はその年の夏の終わりか秋の初めに再調査の第1回報告を出すと約束しましたが、先送りにされ続けています。

 挙げ句に4月2日、北朝鮮は、同月上旬に行われる予定だった日朝協議の見送りを示唆する通知文を日本側に送ってきました。
 北朝鮮産マツタケ不正輸入に絡む朝鮮総連の許宗萬議長自宅の家宅捜索を、主な理由にして。


 協議を中断するといった断定的な言い方はしていないことから、日本に対する揺さぶり、特に翌日に安倍総理と家族会との面会を控えていたので、そのタイミングを狙ったのだろうというのが大方の見方です。

 ご家族の高齢化はますます進むのに、一向に解決への道筋が見えてこない。
 安倍さん何とかならんの?!と、私もイライラしてきます。

 が、ここで忘れてはならないのは、北朝鮮が本当に揺さぶりたいのは、安倍政権よりも日本国民だということ。
 だから日本の世論が分断されるようなことがあれば、それこそ北朝鮮の思うツボ。

 全ての拉致被害者の帰国を実現する。
 そのために時間はかかっても、北朝鮮に屈さず、妥協せず。
 それはご家族の希望でもあります。

 青山繁晴さんもいつも言っているように、
 拉致解決の最後の決定権者は“日本国民”です。

140702-25kokumin.jpg
2014年7月2日放送『アンカー』より]

 許宗萬宅の家宅捜索や朝鮮総連本部ビル問題に見られるように、現在、日朝両政府は水面下で激しくせめぎ合っていると思われます。

 政府がこれまでの原則を曲げることなく、「対話と圧力」「行動対行動」を維持し続けるためには、国民の後押しが絶対不可欠です。

 北朝鮮がどんなに揺さぶってきても、私たちは拉致被害者の奪還を決してあきらめないという強い心を持ち続け、それを連中に見せつけましょう。

 それすらできないとしたら、真の意味での日本の独立など夢のまた夢ではないでしょうか。

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※参考リンク
 ・伊藤祐靖さんのフェイスブック

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拉致問題 | comments (11) | trackbacks (0)

Comments

拉致問題は日本国民が声を上げてこそ、というのは真実ですね。
国民の総意が、国を動かすものかと。
(韓国式はダメですがw)
時間が経ち過ぎなのか、世間では関心が薄れています。
本来なら、マスメディアが率先してキャンペーンをやるべきですが、サヨク塗れなのか動きませんね。
(折角の金儲けタイムを逃すとはw)

伊藤氏の体験、これはなかなか示唆に富んだ手記かと。
それぞれの民族にある歴史、これを真摯に見れば、征服者と被征服者の歴史になるかと。
ただ、欧米絡みという注意点は、外してはいけませんね。
その中(欧米植民地主義)で、唯一アジアで歯向かったのが日本、というのも事実。
評価は様々ですが、結果としてはアジアの解放に繋がったことは、誇るべきかと。

伊藤氏の話は、(良いも悪いも含めて)自国の正しい歴史を、日本人一人々々がしっかり学ぶべきだと、訴えてもいるように思います。
オルグイユ | 2015/04/06 02:21 AM
一部引用させていただきました。
アメバなのでトラックバックできません。
ご了承ください。
詠子 | 2015/04/06 08:34 AM
我が子を誘拐した犯人と穏やかに会話する・・・・ありえませんよね。昨夜、横田ご夫妻をテレビでお見かけし、その穏やかな語り口と微笑みに、胸がしめつけられました。生涯を奪われた我が子を探して過ごす・・・これほどつらく悲しい人生はありません。
応援者 | 2015/04/06 09:45 AM
八紘一宇にそぐわないと言っても、売国を党是とした民主政権時よりは3万倍(韓国を介した防衛機密情報の漏えい件数w国会で枝野の承認済み)マシです。
日本人の子供が、アメリカに於いて支那・韓国系アメリ人から加えられている人権侵害である『人種迫害』に対し、総理がアメリカ上下両院総会の場でどのようにアプローチするか注視しております。
hanehan | 2015/04/06 02:32 PM

> 「比喩ではなく、本当に命を懸けて拉致被害者を奪還しようと思っている者たちがこの日本にはおります。

確かに、間違いなくいます。

しかし、一方、日本国民嫌い、北朝鮮好きの、「人非人」、大勢いるのも紛れのない事実です。

平成14年の暮れに出た、西岡力・著、「拉致家族との六年戦争」、−−−《敵は日本にもいた》・・・扶桑社
は読み応えのある本でした。
西岡氏については、私は以前から、「坊やのような顔をしていながら、(本当に童顔です)、滅法度胸のいい男、と評価してきまし
た。

第9章、「北朝鮮、『米支援』、に反対する」・・・・より、

【拉致事件を隠そうとする、『朝日』、の狙い】

を読むと、今更ながら、他紙とまったく異なる、(「産経」、「読売」、はもとより、「日経」、「東京」、とも)、「朝日」、の悪質な情報操作が゛よくわかり、何とも不愉快になるとともに、この新聞に対して怒りが湧いてきます。

最初に97年9月9日に日本人人妻里帰りの段取りが決まった際の新聞報道を見てみよう。
北朝鮮の撒いた、「餌」、にすぐ飛びついたのが、『朝日』、だ。9月10日付朝刊で里帰り合意について、一、二、三面と社会面の4ぺージわたって詳しく報道しながら、拉致事件の被害者家族の失望する声を一言も伝えなかった。『読売』、が社会面で3組6人のアベックと横田めぐみさんの合計7人の家族が、「拉致への言及がないことにいらだちを覚える。トカゲのしっぽ切りのように問題が棚上げされた」、などと語るのを詳しく伝えるとともに、一枚載せた写真も日本人妻の家族のものでなく、息子を拉致された福井のお父さんのものを採用するなど対照的だ。

なお、『毎日』、『日経』、も『朝日』、と同じく、被害者家族の声を伝えなかったが、『東京』、は横田さんのお父さんのコメントを伝え、『産経』、は拉致被害者家族救出のために60万近くの署名を集めた新潟の支援団体のリーダー小島晴則しのコメントを載せた。
その上、『朝日』、は1963年石川県の沿岸で漁業操業中に北朝鮮工作船に拉致された寺越武志さん、(日本政府はこの事件をいまだに拉致と認定していない)、が、9月4日北朝鮮の朝鮮中央通信社を通じて発表した談話を、9月10日付社会面で22行にわたって長々と紹介した。言論の自由がまったく保証されていない独裁体制下で寺越さんが自由に自分の意思を表明できないということは自明であるにもかかわらず、そのような事情にいっさい触れず、『朝日』、は談話の中から次の2節を直接引用した。

「自分が最近のいわゆる拉致事件と一緒に語られることは、共和国の尊厳を傷つけるものだ」、「もし日本を訪問することになれば、北朝鮮代表団の一員として参加する」
そもそも談話で語られているように寺越さんが拉致されたのでなく遭難中に北朝鮮の漁船に救助されたのなら、なぜその直後に日本側に連絡がなかったのか、どう考えても説明がつかない。テロリストが拉致した人質に、「自分は幸せだ」、という談話を発表させた際、それをそのまま引用報道するということは、犯罪に加担することを意味する。『朝日』、の報道はまさにそれを行ったのだ。

《拉致事件からなるべく日本人の関心を離れさせたい》、という、北朝鮮の狙いどおりの報道ぶりだ。そのことは、『朝日』、が9
月10付夕刊で、橋本首相が里帰り合意について語ったコメントをどのように報じたかを見るとよりいっそうよく分かる。
各紙の報道を合わせると、その日午前、橋本首相は官邸の番記者に次のように語っている。
「〔これ自体、一歩踏み出して動き出した。これは僕が二年生ぐらいの時から、里帰り問題がくすぶり続けていたから、ようやく動いたという意味で交渉に当たった人たちにご苦労さんと言いたい。その上で最初の人数とかそのほかどこまで詰まっているのか、(交渉担当者が)、帰って報告を聞かないと分からない。
少なくとも〔日本の捜査当局が拉致と判断し公表した〕、(A)、行方不明者となっている人たちの安否調査が課題として残っている。少なくとも〔拉致という判断しかあり得ないもの〕、(B)、に対して、もちろん、そうは認めないだろうから、安否調査には協力してもらいたい。その辺の話がどういうふうになっているのか、まだいろんな問題が゜残っている。その意味でまさにスタートという感じだ。まだまだ道のりは長い」、「産経」、9月11日付朝刊、「橋本日誌」、より。括弧、(A)と(B)の部分に注目してほしい、橋本首相はここで、北朝鮮による日本人拉致に関して、「日本の捜査当局が拉致と判断し、公表した」、「拉致という
判断しかあり得ないもの」、だという明確な立場を示している。その上で北朝鮮に対して、「少なくとも、(拉致された日本人の)、安否調査には協力してもらいたい」、との最低限の要求を行っている。
筆者に言わせれば、その要求を通すためには何らかの北朝鮮への制裁処置が不可欠であり、その点で少し不十分にも思えるが、原則的立場は守られている。

ところが、この首相のコメントを、「朝日」、(9月10日付夕刊)、は次のように報じたのだ。短い記事なので全文引用する。
「里帰り合意、首相が評価、(見出し)、橋本竜太郎首相は10日、日本人妻の里帰り問題で、日本と朝鮮民主主義人民共和国、(
北朝鮮)、の両赤十字による連絡協議会で一時帰国の時期や人数について合意したことについて、『これ自体、一歩踏み出して動き
出した』、と延べ、日朝関係改善への第一歩として評価した。首相官邸で記者団の質問に答えた。国交正常化交渉の再開への影響に
ついては、首相は、「行方不明になっている、(日本の)、人たちの安否調査が課題として残っている」、(C)、とした上で、「まだいろんな問題が残っている。その意味でまさにスタートという感じだ。まだ道のりは長い」、と語った」。(C)、の部分を見てほしい。橋本首相は、前掲の(A)、のように、「行方不明者」、という言葉のすぐ前に、「日本の捜査当局が拉致と判断し、公表した」、という説明をつけているのだが、「朝日」、はそれを落とすことによって、あたかも日本人妻らの中での、「行方不明者」、の安否調査が残っている、と首相が語ったかのように巧妙に引用をなした。この記事だけ読むと、今回の里帰り合意は、首相も肯定的評価をする望ましいものであったという印象だけが残り、北朝鮮が日本にそれだけのことをしてくれたのならば、日本も北を助けるべきだという考えに読者を誘導する結果となる。
ちなみに、「産経」、9月10日付夕刊は、同じ首相のコメントを、「首相は日本人拉致疑惑にも触れ、『日本の捜査当局が拉致と
判断し、公表した行方不明者たちの安否調査が課題として残っている、(北朝鮮は)、もちろん拉致とは認めないだろうが、安否調
査には協力してもらいたい』、と述べ、北朝鮮に安否確認を求める意向を示した」、報じ、きちんと首相の拉致に関する立場を伝え
ている。

ここまで拉致事件を隠そうとする、「朝日」、の狙いは何なのか。それは9月10日付の社説によく表れている。里帰り合意を受けての社説は、「毎日」、を除き、「朝日」、「読売」「産経」、「日経」、「東京」、の五紙が書いているが、その中で、「朝日」、の主張は他の四紙と大きく異なる、特異なものだった。

その第一の点は、今回の合意が先に触れたように、北朝鮮が一方的に選んだ、ごく少数の里帰りのみを約束したにすぎないという、誰が見ても不十分なものだったことについて、「朝日」、以外の四紙はすべてその問題点を指摘し、北朝鮮に改善を求めているのだが、「朝日」、だけはそれをせず、今回の合意を、「評価しなければならない」、と一方的に称賛していることだ。「自由往来への道はなお遠い。この事業の行方も、朝鮮半島を巡る国際政治の荒波に、もまれ続けるかもしれない」、などと高みからの解説を付けてはいるが、北朝鮮に対して、希望者全員の里帰りを早期実現を求めることはまったくない。

たとえば、「読売」、は、「(第一陣には)、不満は残るが、これを手始めとして、軌道に乗せるよう北朝鮮に求めたい。大事なのは、希望者全員の里帰りを認めるという大原則である」、ときちんと言うべきところは言っている。「東京」、などは、「この問題
の根本は里帰りという誰にでも当然認められるべき行為を、長年にわたって国家が妨害してきたことにある。北朝鮮は外交カードとして使うのでなく、合意書で確認したように、『人道的見地に立ってのみ行う』、姿勢を貫いてほしい」、と本質的な指摘をしている。「日経」、「産経」、も社説タイトルに、「『日本人妻』、合意の問題点」、「『北』、ペースの里帰り交渉」、とずばり付け
ているとおりだ。

ところが、「朝日」、は社説のタイトルに、「里帰りを静かに迎えよう」、と付け、「里帰りを迎えるために何より大切なのは静かな環境だ。政治的な動機や、なお根深い民族差別の意識から、この事業を妨害し、人権を傷つけることは許されない」、と書いた。

日本人妻らが北朝鮮で体験したすさまじい人権侵害について日本で発言させてはならないという主張だ。これこそ彼女等の、『人権
を傷つける』、主張でなくて何であろうか。」、この点についても、「東京」、は、(日本人妻らの)、日本国内の発言が、北朝鮮
にとっては愉快でないさまざまな反応を惹き起こすことも予想される。このため、北朝鮮が里帰りを止めるようなら、日本国内での
北朝鮮に対する世論はさらに厳しくなる」、ときちんと釘をさしている。
里帰り合意について北朝鮮に、いっさい注文をつけない、「朝日」、は、拉致問題については北朝鮮に何も主張しない。拉致に関してはわずかに、「日朝間には日本人拉致疑惑をはじめとする難問が横たわっている」、と書くのみで、連絡協議会で日本側が拉致に
ついて、「行方不明者の安否調査」、という形で取り上げ、それに対して北側が、「そんな事実は無い」、と拒否したことについて
も触れもしない。

他の四紙が次に見るように、北朝鮮の開き直りを問題として日本政府に毅然と対応せよと、と求めているのと対照的だ。
「北朝鮮による日本人拉致も見逃すことはできない。(略)、日本側は、今回連絡協議会にあたり、まず日本人妻の帰国実現に力点
をおいたため、拉致疑惑は隠れたきらいもある。しかし、日本に対する主権確保という重大な問題である。北朝鮮に対しては、今後
も対応を迫るべきである。(「読売」)、「今回の協議では大半の時間を日本人妻の里帰り問題に費やさざるを得なかったが、拉致
疑惑についても突っ込んだ話し合いをしてもらいたい。(略)、北朝鮮は十分な誠意をみせてほしい」、(「日経」)、「拉致など
もっと深刻な国際犯罪疑惑が放置されているる」、(「産経」)、「被害者の救出は国民の生命と安全を守る国家としての義務であ
る。(略)、日本側が「拉致問題を詰めようとすれば里帰りが中断する」、などと、腰を引く様なことがあれば、いつまでも解決で
きない。(略)、政府はこれまで放置してきた責任も感じて、毅然と対応する必要がある。」(「東京」)、そのうえ、もうひとつ
、さらに驚くべきことは、「朝日」、が先に引用した拉致への言及のすぐ後ろに、「だからといって、国際社会が北朝鮮の破局を避
けながら開放体制への移行を促そうと努めるなかで、北朝鮮の深刻な状況にひとり背を向け続けることは、日本のとるべき選択肢で
はない」、と書いている点だ。
拉致を棚上げにして、北朝鮮への支援を行うべきだ、という主張だ。また別の箇所では、「今回の合意が国交正常化交渉のための雰
囲気を改善し、日本政府が目下の急務である、北朝鮮への食料支援を実施しやすくなるということだ」、と露骨にその狙いを書いて
いる。「朝日」、にとって拉致事件は数ある、「難題」、の一つに過ぎず、目下の急務は、被害者救出ではなく、加害者たるテロ国
家に食料を送ることなのだ。
町工場の親方 | 2015/04/06 08:32 PM
拉致問題については同じ日本人として忸怩たる思いです。当時の小泉総理が北朝鮮へ行った時は希望の光が見えたかに思いましたが、何ら進展していません。朝鮮民族は千年経っても朝鮮民族であり、その本質が変わる事は無く、まともに付き合おうとした日本が付け入る隙を与えてしまいました。拉致問題さえ無ければ、南北朝鮮とは関わり合いにならないのが一番です。

憲法9条は改正して然るべきです。反対派は平和ボケしているか利益絡みなんでしょうね。
「有事の際に国民として戦争に行くか?」という問いに対して、先進国では日本が一番「行かない」と回答したそうですが、何とも嘆かわしいです。私の叔父は旧陸軍パイロットで23才で戦死しています。私自身も20代の頃から現在に至るまで、有事の際は「国を守る」という気持ちに変わりはありません。
げんた | 2015/04/06 09:29 PM
伊藤さんの仰る事は分かりますが、先人が残した意思はそこに留まるものではないと思います。
黒人の文化、インディアンの文化を知った上で、「進むべき方向に進む。」そこは、過去とか文化とかに縛られない有るがママの進むべき道があるはずです。
死ぬまで戦ったからとか、奴隷として連れてこられたからとか、過去に囚われているだけです。
たなさんJJY | 2015/04/06 11:35 PM
先人が残した意思に留まるじゃなく

先人が残した意思を無駄にするなって事になりませんか?

進む方向を間違えるなって事を言ってるんてすよ

歴史もね、人の歩みも過去から現在
未来へ繋がってる。
前だけ向いて、どちらに向かうんですか?
間違わずに、選択のミスをしないで日本にとって正しい方向を選べますか?

過去と文化に捕らわれる。その発想が反対に理解できません

過去は先人が経験した事です
文化は、日本人が引き継いで来た事です
それが、歴史じゃないですか?
日本人が、生きてきた知恵ですよ
私達は、先人が築き上げて来た日本に住んでるんです
何も無く、今が在る訳じゃない。違いますか?

だいたいが、何百人も拉致されて
それでも、普通に北朝鮮人の人達が日本に居る
北朝鮮の総連も、何の罪も受けずにそのままだ
どうしてですか?
日本人が日本人を拉致したら捕まって罪を受けますよね?
どうして、誰も捕まってないの?
どうして、北朝鮮の実行犯は捕まらないの?
その法律が無いのなら、どうして法改正しないのですか??
自分の身内が拉致されてから、騒ぐんですか?
明日は、我が身になりませんか?
日本政府は、私達を反映してるんですわ
ゆり日本の不法滞在者が22年振りに増えてるんですよ 一万数千人、韓国人が増えてる もう、とことん嫌気がさします。 日本に来ても反日しかしませんよ。 それに、韓国の犯罪率を知ってますか? 韓国は、性犯罪者を起訴しない または、執行猶予にしてしまう その犯罪者リストは日本の要請には答えない 日本の入管は韓国の犯罪者が分からない その状態で、ビザなしの不法滞在者だらけですわ 日本人が、韓国と国交断絶を願うのは間違ってますか?? 本当に嫌だ!! | 2015/04/07 12:13 AM
過去は消せない。
それは日本の過去をあげつらうブサヨも
過去の積み重ねで現在の繁栄があると考える保守系も
共通する認識だろう。

しかし、「過去」の扱いはそれぞれ大きく異なる。
多くの日本人は悪い過去を水に流そうとするが
ブサヨは悪い過去にあくまでこだわる。
双方が歩み寄ることは恐らくない。
つまり日中友好、日朝友好は単なるお題目だけで、中身は空っぽ。
特亜との善隣外交など夢のまた夢だ。
やす | 2015/04/07 11:47 AM
優先順位という意味では、現在進めている在日排除を優先しているのだと思います。
それにより本来の日本を取戻し、拉致被害者の奪還へ進む予定かと・・・
(そもそも優先順位を付けるものでもないのですが、作戦上という意味です)
いきあたり飛蝗 | 2015/04/08 09:56 AM
本筋の話ではないのですが、異論はあります。

まず日本を尊敬する理由の中の
・敗戦後、驚異的な復興を遂げた。
・宗教的にも何ら衝突はない。
・欧米の人々とは違い、妙な下心がなくて信頼できる。
の三つですが、最初の項目はアメリカが共産勢力と対抗するために日本を含む西側諸国を経済的に復興させることにしたからであり、二番目の項目の理由は、日本はそもそもたいした宗教対立が無かったというだけで、宗教問題を解決したから衝突が無いわけではないので、手放しで誇れるものではないのではないでしょうか。
三番目の項目の理由は、日本に明確な国家の方針が無く、アメリカの安全保障政策に乗っかっているだけだから下心を持つ必要がないだけで、自分たちで明確な方針を作り、運営し始めたら、他国が自分たちの望む方向へ動いてもらわなくてはいけない状態が出てくるので、それを達成するために下心が出てきてしまうと思うのですね。
というわけで、これもあまり誇れるものではないと思うのです。

次に「日本が『国家として消滅する』ことを覚悟してまで、正しいと信じる道を貫こうとした点」ですが、これについては個人や組織がするなら誇ることも出来るでしょうし、もちろん感動もするでしょう。
しかし国家の方針としてこれをすることは間違っていると思います。
私は国の尤も基となる方針は「国を存続させ続けること」だと考えます。
この話はこれと全く正反対、国が無くなってもいいなら何のための安全保障なのか、国が消滅した後の日本人とはいかなるものになるのか─とは考えないのでしょうか。
これは個人の行動と国家の方針を混同した意見だと思いますね。

これらのことを考えると、拉致被害者を取り返す話の説明としては不適当な部分があると思います。

本当は特攻攻撃についても言いたいことはあったのですが、これ以上書くと激怒する人が出そうなので割愛しました。
もちろん特攻した人たちを非難するわけでも貶すわけでもありません。
すぷー | 2015/04/09 12:00 PM

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