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01首相の靖国参拝反対派への反論(上)【暫定版】

目次【暫定版】はこちらです。

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首相の靖国参拝反対派への反論(上)【暫定版】
 
 
<1>日本は中国・韓国に配慮すべき?

<1>-(1) まず踏まえておくべきこと


死者への慰霊や追悼の方式はその国が独自に決めるべきことであり、他国にああせよ、こうせよと言われて従うべきものではありません(本来なら話はここで終わりです)。

中韓国民の多くは靖国神社には『A級戦犯』だけが祀られていると思っています。が、もちろんそんなことはありません。第二次大戦で戦死した将兵の他、「ひめゆり部隊」の女子学生や従軍看護婦、学童疎開船「対馬丸」の死没者、本土へ連絡業務のために残留していた樺太真岡郵便局の電話交換手の女性9名(終戦後自ら進んで残留し業務を続けましたが、ソ連兵が押し寄せてきたため自決)なども祀られています。また、第二次大戦の戦没者だけが祀られているのでもありません。明治維新以来、国のために命を捧げられた方々が祀られています。そして、靖国神社は「神社」なので墓もなければ位牌もありません。これらは日本国民には周知の事実ですが、中韓国民のほとんどは知りません。知らずに批判しているのです。

・中韓政府及びメディアは、上記のこと以外にも正しい事実をきちんと国民に伝えてはいません(特に中国はひどい)。例えば、小泉首相は参拝の理由についてこれまで「将来にわたって平和を守り、二度と戦争を起こしてはならないという不戦の誓いのため参拝する」といった説明を繰り返してきましたが、彼らはそのことを国民には伝えようとしません。もっと言えば、行わなかったこと(戦争を賛美)を伝えて、実際にしたこと(平和の祈念)は無視するのです。

<1>-(2) 靖国神社の概念が理解されていない

・靖国神社はキリスト教の教会のようなものと言えるかもしれません。祈りを捧げるための場であり、決して軍国主義を煽る場ではありません。キリスト教にも暗黒の時代がありましたし、善人だけがキリスト教徒というわけでもありません。キリスト教の名の下、戦争を仕掛けたこともあります。人々を弾圧した事もあります。だからと言ってキリスト教を否定するでしょうか?そしてこれは殆どの宗教に言える事ではないでしょうか?

・あるいはこのような考え方もできます。靖国神社の土台をなす日本の神社・神道は、西欧的な意味の宗教ではなく、日本人の精神文化、心のふるさとであり、それゆえ宗派を問わずお参りできる場なのです。靖国神社を何度も参拝した大平正芳首相は敬虔なクリスチャンでした(アーリントン墓地も非キリスト教信者が訪れたり献花をしています)。

<1>-(3) アーリントン墓地との比較

・アメリカのアーリントン国立墓地には歴代大統領が参拝しています。アーリントンには南北戦争で奴隷制を支持した側の南軍の将兵も埋葬されています。中韓がよく言う「A級戦犯が祀られている神社に首相が参拝することは侵略戦争を正当化することになる」という理屈をそのまま使えば、アメリカ大統領がアーリントンに参拝することは南軍将兵の霊を悼むことになり、奴隷制を正当化することになってしまいます。が、大統領のアーリントン参拝は全く問題になっていません。黒人はじめアフリカ諸国がアメリカに抗議したという話も聞いたことがありません。

<1>-(4) 中韓が日本に注文をつける権利があるのか?

・中韓は靖国参拝を非難する理由付けとして、極東軍事裁判(東京裁判)で認定された『A級戦犯』が合祀されている点を挙げていますが、中韓はそもそも東京裁判を持ち出す法的資格を持っていません。第一に、東京裁判の「判決」に日本が従う(「裁判」に従うのではなく「判決」に従う。詳細は<5>-(2)-1を)と取り決めたのは、サンフランシスコ平和条約(講和条約)ですが、この点について、上坂冬子氏は次のように指摘しています。
サンフランシスコ平和条約に署名、批准していない国には『いかなる権利、権原又は利益』も与えないと書かれている。サンフランシスコ平和条約には日本を含む49カ国が署名、批准しているが、その中に中国も韓国も見当たらない。ご丁寧にも条文として、ここに署名、批准していない国によって日本の利益が『減損され、又は害される』ことはないとまで書き入れてあるのだ。つまり条約に署名しなかった国には、クレームをつける資格もないことになる」(産経新聞05年12月29日付「正論 靖国問題は外交の根本変える好機」)。
(注:当時の国際情勢から、中華人民共和国と中華民国政府はいずれも招かれず条約の締結国にはなりませんでした。詳しくはこちらを【8/28 14:05追記】)

日本や韓国は法治国家なので感情論で法を曲げることは本来許されません。ところが靖国神社については、『A級戦犯』の分祀・廃社などなどの超法規的処置を、中国や韓国から求められ続けているのです。

<1>-(5) 戦争を賛美する遊就館?

・靖国神社の敷地内にある遊就館が戦争を賛美しているとして、中韓だけでなく日本国内からもよく批判の対象とされます。が、どの国にも戦争博物館はあり、自国の立場からの主張を展開しています。中国や韓国の抗日記念館を見て下さい。明らかに史実に反する展示があったり、日本から見たら到底受け入れられない主張が展開されたりしています。例えば中国の「南京大虐殺記念館」には、虐殺の死者を表す「300000」という数字があちこちに埋め込まれています。が、日本の大虐殺肯定派の学者の中ですら、この数字を肯定する人はいません。
 ちなみに現代史家の秦郁彦氏がかつて中国人学者に30万人説について聞いたところ、「『たくさん』という意味だ」との答えが返ってきたそうです。自国民の反日感情を煽るためなら、また国際社会に日本の“悪行”をアピールするためなら、歴史の捏造も厭わない国だということを日本人は知っておくべきです(この傾向は韓国にもあります)。

・中韓の抗日記念館は政府の資金で成り立っていますが、遊就館はそうではありません。民間からの資金で成り立っており、政府から賛助は受けていません。靖国神社も同様です。
 また自由で民主的な社会では、表現の自由は守られなければなりません。日本は言論・表現の自由のない中国とは違います。「親日反民族行為者財産帰属特別法」(簡単に言えば、日本統治時代に日本に協力したと認定された人物、およびその子孫が所有する財産を没収する法律)のような近代国家の法体系に反する法律を成立させる韓国とも違います。日本は自由で民主的な国家であり、表現の自由は法律で守られています。遊就館の表現の自由も守られなければなりません。

・なお、06年8月25日付産経新聞朝刊にて、遊就館が展示内容を変更する旨報道されましたが、靖国神社に直接電話で問い合わせをされた「てっく」さんによれば、「遊就館の大前提である『近代国家成立のため、我が国の自存自衛のため、更に世界史的に視れば、皮膚の色とは関係のない自由で平等な世界を達成するため、避け得なかった多くの戦いがありました。それらの戦いに尊い命を捧げられたのが英霊であり、その英霊の武勲、御遺徳を顕彰し、英霊が歩まれた近代史の真実を明らかにする』との方針に変わりは無いことを明言していただきました。変えたところは大東亜戦争の展示のところ、『ルーズベルトの大戦略』の1『アメリカ国内経済の問題』でルーズベルトが大東亜戦争を目論んだ、との説明部分『だけ』」とのことです。


<2>それでも日本は中国に配慮すべき?

<2>-(1) 中国が『A級戦犯』について要求する権利はない


・日中の関係の根本は、1978(昭和53)年に締結した日中平和友好条約で規定されていますが、これに関して、屋山太郎氏が次のような指摘をしています。
 「日中両国は1972年に共同声明、78年に平和友好条約を結んだが、同条約第3条は『平等、互恵並びに内政に対する相互不干渉の原則』をうたっている。また同条約締結の際、極東裁判や判決については全く触れていない。中国が全く触れる権利のない問題を取り上げ、日本の政財界人、マスコミを操ろうとするのは内政干渉そのものだ」(産経新聞06年2月10日付「正論 『靖国』で確認したい4つのポイント」)。

・国際派日本人養成講座編集長の伊勢雅臣氏は言います。「人と人との関係で問題が起こったら、法律や契約を基に解決するのが、近代社会の原則である。国と国との問題も同様で、ある国が他国に何か要求をして問題となったら、両国が締結している国際条約、および相互条約に照らして、判断しなければならない。サンフランシスコ平和条約、および、日中平和友好条約のいずれを見ても、中国には『A級戦犯』について、我が国に何かを要求する権利はないのである」。

<2>-(2) 「中国人民の感情を傷つける」のウソ

・中国政府要人はよく「戦争指導者(『A級戦犯』)が祀られている靖国神社への首相の参拝は中国人民の感情を傷つける」と言いますが、本当にそうなのでしょうか?
 『中国民主化運動海外連席会議』のアジア地域代表で、高校まで中国で過ごした生粋の中国人である相林氏によれば、「江沢民は3年前にイタリアを訪問した時に無名戦士のお墓に献花しました。数年前に米国を訪問した際にアーリントン国立墓苑で献花しています。アーリントン墓地には、朝鮮戦争で中国人民解放軍と戦った兵士も祀っています。旧敵国兵士に敬意を表するのであるならば、江沢民は来日の際に靖国神社にも献花するべきなのです」(『正論』05年8月号)。
 朝鮮戦争は、中国側の解釈では、アメリカの侵略に対する反撃だったはずです。その侵略の手先が眠る墓になぜ江沢民は献花することができたのでしょうか?

・アーリントン墓地にはもちろんアメリカ歴代大統領も行きます。行き続けています。中国人民は「日本の首相は靖国に行くな!」と言うのなら、「アメリカ大統領はアーリントンに行くな!」とも言うべきでしょう。こうなると、所詮、中国政府の言う「人民の感情」などというものは、中国政府の政治的都合によって創作され、操作されるものに過ぎないと言わざるをえません。

・中国政府の創作、操作の具体例。再び相林氏の発言。
 「実は日本に来るまで、靖国神社は『戦後、A級戦犯を祀る目的で作られた軍国主義賛美の施設だ』と教えられてきました。ところが、実際に来てみると、明治維新で亡くなられた方をはじめとする国のための戦没者を祀っていることを知り、驚きました。私たち中国民主化運動に携わる者にとって、明治維新とは中国革命のモデルであり、維新の志士たちは尊敬の対象です。中国人からみれば、日露戦争はロシアの侵略から中国を守る戦いでした。ですから、私たちが尊敬する人々、そして中国を救ってくれた恩人が祀られているところ、それが靖国神社だとわかったのです。そこで、日本に来る中国民主化運動の同志たちを、私はたびたび靖国神社に連れてきます。そして、靖国神社は私たち民主化運動の恩人たちが祀られているところだと説明すると、みなびっくりして、丁重にお参りします」。

<2>-(3) 空白の6年間〜火種をまいた朝日新聞

1979(昭和54)年4月、靖国神社に『A級戦犯』が合祀されたことが大きく報道されました。85(昭和60)年8月の中曽根康弘首相の公式参拝までの6年間に、大平正芳首相は3回、鈴木善幸首相は8回、中曽根首相は9回、参拝を行っていますが、中国政府がこれらを問題にしたという報道は全くありません(ちなみに大平正芳首相は、報道の2日後の春期例大祭に参拝しています)。
 問題にされるどころか、79年12月の大平首相訪中では、華国鋒首相、トウショウヘイ副首相などから熱烈歓迎を受けました(華国鋒首相が出迎えて歓迎式をしました。その後沿道で「歓迎」の横断幕の中を華首相が同乗して迎賓館釣魚台へ向かいました。これだけでも歓迎ぶりがわかります)。

・なぜ6年も経ってから『A級戦犯』を問題にするようになったのかについて、中国側の説明はありません。が、1985年の中曽根首相の「公式参拝」の少し前から、朝日新聞が反靖国キャンペーンを始めて、中国政府を煽る記事を書き続けたという事実があります(まさに朝日新聞お得意の「火のないところに火種を落とす」記事の実例)。
 ともかく参拝1日前の8月14日、中国政府は定例記者会見の場で、「公式参拝について中国側はどう論評するのか」との質問に答える形で、「東條英機ら戦犯が合祀されている靖国神社に参拝することは中日両国民を含むアジア各国人民の感情を傷つける」として公式に反対表明をするに至りました。その後、社会党の訪中団が北京を訪問、参拝批判で唱和してさらに反対が盛り上がりました。朝日新聞が具体的にどのように火種をまいたかについては、以下のリンクをご覧下さい。【8/29 17:10追記】

※参考リンク
拙エントリー1/17付:何度でも言う。靖国を外交問題にしたのは朝日新聞!
靖国問題に火を付けたのは報ステの加藤千洋だった!(チャンネル桜)

・その後の中曽根首相の対応にも大いに問題がありました。10月の例大祭にはそれまでほぼ毎年首相が参拝し、中曽根首相もその前年(1984年)には参拝していました。ところが中国が騒ぎ出すといとも簡単に屈して参拝を取りやめました。そして翌1986年の8月15日の参拝も取りやめてしまったのです。
 中曽根氏は2001(平成13)年、悪びれることもなくこのようなことを言っています。「あの頃、改革路線をすすめる胡耀邦さん(総書記)は、保守派の要人から非難され始めていた。胡耀邦さんと私とは非常に仲が良かった。兄弟分みたいな関係にあった。そこで私が参拝すると、胡耀邦総書記追い落としの原因をつくったようなことになるかもしれない。そういう暗示を受けたな。それで胡耀邦さんを守らなければいけないと思った。それもあってやめたんです」(『正論』01年9月号)。が、胡耀邦はその後半年足らずで失脚しました。【8/28 0:40追記】

・ちなみに06年8月19日放送の読売テレビ『ウェークアップ!ぷらす』で、在日中国人ジャーナリストの莫邦富氏は空白の6年が生まれた理由をこのように説明しています。「その頃の中国は文革後でまだ国内のことで手いっぱいで余裕がなかった。また日本が右旋回するとはその時は思ってなかった」。この説明に対してコラムニストの勝谷誠彦氏は、「国内事情が原因だったって、いま言いましたよね?そっちの国内事情で人の国の慰霊に文句言うなんて失礼じゃないか!」と反論しています。

<2>-(4) 『A級戦犯』を分祀すれば中国は納得する?

・中国はよく「A級戦犯が祀られている靖国神社への首相の参拝は許せない」という表現を使います。では、『A級戦犯』さえ分祀すれば首相の参拝を認めるのでしょうか?少なくとも中国政府が公式にそのようなことを言ったことは一度もありません。

・<2>-(6)で詳述しますが、中国に配慮する形で小泉首相が国際会議の場で謝罪をしても、「謝罪だけじゃだめだ、行動で示せ」と新たな難題をふっかけてくる国です。たとえ『A級戦犯』が外されたとしても、次に『BC級戦犯』外しを要求してこない保障はありません。さらに言えば、中国からすれば『BC級戦犯』こそ「目に見える中国人殺害の下手人」なのですから、『BC級戦犯』分祀を要求してこないと考える方が無理があるかもしれません。

・では、『A級戦犯』が分祀されなくても首相さえ参拝しなければ、中国は抗議しなくなるかといえば、それもありえません。閣僚が参拝しただけでも中国は(韓国も)抗議してきます。実際、これまでもそうでした。では閣僚も参拝をやめたら?そうなったらそうなったで、「日本の政治家は一人たりとて参拝するな」というふうに、もっと大きな括りでイチャモンをつけてくるだけです。
 一歩譲ればさらに容赦しないのが中国外交であり、次の難題をふっかけてくることは必定。すでに尖閣諸島、東シナ海ガス田盗掘などで、中国の横暴さは実証済です。

<2>-(5) 日本と中国(中国共産党)とでは宗教観が全く違う

中国共産党の指導理念とされている唯物主義の世界観においては、宗教の存在意義や正当性が完全に否定され、「神様」や「魂」の存在も全く認められていません。毛沢東時代には、自分の先祖を家で祀ることすら許されていませんでした。中国は日本の国土より27倍も大きな国ですが、靖国神社のような国の為に犠牲になった英霊の魂を祀る場所は一箇所もありません。つまり「魂」というものはもともと存在しないから、死者に対する「お参り」も「慰霊」も全くのナンセンスであり、そのような行為に何らかの意味があるとは決して認められないのです。小泉首相がいくら「死者に哀悼の意を捧げるために参拝する」と説明しても、それを受け入れはしません。

・トウショウヘイの世代の共産党指導者はほとんど成人となってから、一種の政治的イデオロギーとして共産主義思想を受け入れたため、精神的内面には「宗教的心情」を理解できるような素地が残されていたでしょうが、胡錦濤などの現在の指導者たちの場合は全く違います。物心がついてからずっと、完全な共産主義教育の中で育ったのです。同じ教育を受けた同世代の中国人が全員、徹底した共産主義者になったわけではありませんが、胡錦濤らは特別で、まさに思想と心の両面において共産主義を完璧に受け入れた優等生だったからこそ、指導者階層に登り詰めたのです。彼らの信念には揺るぎがありません。そんな彼らにいくら「慰霊」の意義を説明しても無駄です。

・繰り返しになりますが、中国は唯物論、無宗教の国です。信仰の自由はありません。中国共産党は「宗教はアヘン」として法輪功などの宗教を弾圧しています。キリスト教すらも弾圧の対象です。キリスト教徒の多い欧米に気を遣って表向きは認めてはいるものの、実際は中共が認めた教会しか活動を認めていません。よって中国には「投獄覚悟」の地下教会が多数存在しています。中国のキリスト教徒は8000万人ですが、うち75%が地下教会の信者です(アメリカの支援団体による)。

・いわば靖国問題は「文明的衝突」なのです。中国が民主主義国家になって多様な宗教観を受け入れる素地ができれば別ですが、そうでない限り彼らの理解は得られません。もっとも慰霊はその国独自になされるべきものですから、最初から理解を得る必要もないのですが。

<2>-(6) 中国は日本の謝罪を受け入れるつもりは最初からない

・小泉首相はじめ歴代首相は中韓に対して「お詫びの気持ち」を何度も表明してきました。にもかかわらず、中国は「日本は謝罪をしていない」というウソを世界にばらまいてきました。
 小泉首相は05年4月のアジア・アフリカ首脳会議(世界中が注目する場である)で演説し、10年前のいわゆる村山談話を踏襲する形で謝罪の気持ちを表しました(同年8月15日、終戦60周年にも同様の表明をしている)。これにより、国際社会において「日本は謝罪をしていない」とする中国の論拠は崩れました。
 すると、中国は今度は「謝罪が誠実ではない」とクレームをつけてきたのです。その後は「謝罪だけでなく言葉を行動で示せ」という言い方に変化しています。つまり、中国は最初から日本の謝罪を受け入れる気などないのです。アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」(アジア版)は05年8月17日付社説で、北京の見解によれば「東京の謝罪が十分と言われることは決してないだろう」と指摘しています。

「歴史問題、永遠に言い続けよ」江沢民氏、会議で指示(読売新聞06年8月10日付)キャッシュ
【北京=藤野彰】中国の江沢民・前国家主席(前共産党総書記)が在任中の1998年8月、在外大使ら外交当局者を一堂に集めた会議の席上、「日本に対しては歴史問題を永遠に言い続けなければならない」と指示し、事実上、歴史問題を対日外交圧力の重要カードと位置付けていたことが、中国で10日発売された「江沢民文選」の記述で明らかになった。
 中国は胡錦濤政権に移行した後も一貫して歴史問題を武器に対日圧力をかけ続けており、江氏の指針が現在も継承されているとすれば、歴史問題をめぐる中国の対日姿勢には今後も大きな変化が期待できないことになりそうだ。
(以下略)

 首相が参拝しようがしまいが、『A級戦犯』分祀をしようがしまいが、江沢民の指針を継承する限り、中国は日本に圧力をかけ続けるということです。

<2>-(7) 中国が変わらないと解決しない

・日中間における現在の不和の本当の問題は、日本が何をするとかしないとかではなく、中国側の態度に問題があるということが、ここまでご覧いただいてご理解いただけたと思います。中国は自らがアジア一の大国という地位を得るために、「(中国のライバルである)日本は終戦から60年経っても自責のない国で、再び軍国主義に走ろうとしている国」という絵を描きたいのです。
 が、日本がそんな国でないことは日本国民なら誰でも知っています。戦後の日本は平和主義国家であり、自衛隊は61年間、他国に対して1発の銃弾も発射していません。
 逆に中国はどうでしょうか。軍事予算は毎年2ケタ増という軍拡を続けており、チベットや東トルキスタンなどの侵略を現在進行形で行っている国です。

「日本を訪れた中国人は、この国に軍国主義など存在しないことを身をもって気付くだろう」。これは在米中国人ジャーナリストの廖建明氏の発言です。
 また、麻生太郎外相は06年8月21日、NHKのニュース番組に生出演した際にこのようなエピソードを紹介しています。「中国人のおばさんが、日本に住んでいる息子の面倒を見るために日本にやってきて3カ月ほど滞在した。3カ月後、おばさんは言った。『日本は軍国主義なんかじゃない。だってこの3カ月間、全く軍服姿の人を見なかった』」。

・06年3月末、日中友好七団体の代表団(団長は橋本龍太郎元首相)が、北京で胡錦濤主席と会談しました。親中的な言動が目立ち晩節を汚したとされる橋本龍太郎氏ですが、胡錦濤に対しこのような発言をしています。
 「母の兄、年上のいとこ、小学校1年の時の担任の先生。みな出征される時に駅へ送って行った。『靖国の杜に帰って来るから来てくれよ』と言ったきり、生きて帰らなかった方々もいた。私はそういう方々に頭を下げているのです」「多くの日本人の心の中にある靖国神社は、たいへん身近な人の率直な存在なのです」。
 しかし中国側に、この声に応えようという姿勢はみられませんでした。深い議論を試みようとする姿勢もありませんでした。中共はすでに「小泉首相の参拝を止めさせる」と決めていたのであり、その結論を変えるような話をする気がなかったのです。

・ではどうすれば問題解決ができるのか?答えは簡単です。中国は対日外交カードとして利用できる、カードとして効果があると考えるから靖国を言っているにすぎないのだから、靖国カードをカス札にしてしまえば言わなくなります。要するに「靖国を言ったらかえって我が国(中国)が損をする」と思わせることです。
 そのためには日本の世論が一枚岩であることが必要です。「中国に配慮して参拝は控えるべきだ」という声があるうちは(そういう声がごく少数派にならない限りは)、中国はそこにつけ込んで世論の分断工作をしてくるでしょう。残念ながら「中国に配慮せよ」と主張する日本のマスコミ、識者、経済人は未だにたくさん存在し、世論に少なからぬ影響を与え続けています。
(もっとも最近の中国は日本に譲歩し始めています。<4>-(4)を参照)


<3>それでも日本は韓国に配慮すべき?

<3>-(1) 韓国が『A級戦犯』について要求する権利はない

・韓国は中国同様、「A級戦犯が祀られているから首相の参拝に反対する」としています。首相の参拝は『A級戦犯』に対する慰霊になり、それは結果的に『A級戦犯』つまり過去の戦争犯罪を免罪することになり、侵略戦争肯定になるから認められないという理屈です。
 <1>-(4)の最後の項にも書きましたが、『A級戦犯』あるいは「日本の戦争犯罪、侵略戦争」を裁き、断罪したのは連合国による東京裁判でした。ところが韓国は連合国の一員ではないし、東京裁判の原告でもありませんでした。韓国は日本を裁く地位にはいなかったのです。つまり韓国は『A級戦犯』を決定した東京裁判とは関係のない存在なのです。

・1951年、連合国を中心に対日講和条約が結ばれ日本は国際社会に復帰しましたが、韓国はその条約調印国でもありませんでした。つまり韓国は日本が戦争をした相手ではなかったのです。日韓併合によって日本になり、実態的には日本とともに逆に連合国と戦争をした側でした。だから米中ソなど連合国は韓国を最後まで連合国の一員とは認めませんでした。

・東京裁判は満州事変(1931年)以降の日本の対外軍事行為を断罪したのであって、それ以前の日清、日露戦争などの歴史は関係ありませんでした。まして日韓併合(1910年)をはじめとする、日本の朝鮮半島支配にかかわる出来事は東京裁判とは無関係でした。端的にいえば、東京裁判では日本の朝鮮半島に対するいわゆる「植民地支配」は断罪の対象ではなかったのです(もし「植民地支配」が対象になれば、欧米諸国も対象になってしまいます)。
 したがって『A級戦犯』は日本の朝鮮半島支配で断罪されたのではありません。つまり『A級戦犯』は韓国とは歴史的に無関係なのです。
(ちなみに韓国は日本の「植民地」ではありません。日本に併合されて「日本」になったのです。欧米列強によるアジアやアフリカの植民地支配とは根本的に違っていました。詳細は韓国併合(wikipedia)を。中立的な観点から書かれてあります…たぶん)

<3>-(2) 韓国人の満たされない思い

過去に欧米列強によって植民地支配を受けたアジアやアフリカの国々で、かつての支配国に対して「植民地支配を謝罪反省せよ」と言ったり、慰霊方法について抗議をしたりしている国が存在しているか?答えは否です。
 知韓派の黒田勝弘氏によれば、「それらの国々は、自力で支配を打ち破って独立したという自負があるので謝罪や反省を求めない。が、韓国は自力で日本を打ち破って独立したのではない。その満たされない思い、やるせない鬱屈した心情が『ハン(恨)』となった。韓国人にとっては解放後、今にいたるまで『日本と戦争して一度勝ちたい』という心理がどこかにいつもある」。
 こんな韓国人が可哀想?だから参拝を控えよう?それはかえって韓国人に失礼にあたりませんか?

・併合中は韓国人は日本人でした。志願兵の募集には韓国人青年が殺到しました(韓国人に徴兵制が適用されたのは1944年4月)。戦場で亡くなった韓国人は日本人と同様、靖国神社に祀られています。遺族の中には、「靖国神社から外してほしい」と主張する人たちもいます。が、当時は日本人として、日本人とともに、日本のために戦って亡くなった方々なのに、靖国神社に祀らないというのは逆に差別にならないでしょうか?

※参考リンク
大日本史番外編朝鮮の巻>資料:植民地統治の検証2>大東亜戦争と上海臨時政府

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首相の靖国参拝反対派への反論(中)【暫定版】へ続きます。
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Comments

日本が中国を侵略した戦争を正しい戦争だとし戦争責任者を英霊・英雄として祀っている靖国神社に首相が参拝するのは靖国神社の主張を支持していると見なされてもやむをえないのではないか。

中国が「全国戦没者慰霊式」に抗議しないのは中国侵略戦争を反省・謝罪し戦争責任者を英雄扱いしていないからだ。
ボーンチャイナ | 2006/08/27 04:47 AM
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200608220000/
米国保守派の論客 George R. Will 氏が、8月20日の『ワシントン・ポスト』紙に The Uneasy Sleep of Japan's Dead(日本の死者の安らかならざる眠り)と題して東京発のコラムを書いていて、これが8月21日の『ウォールストリート・ジャーナル』紙に Japan's Ever-Present Past(日本にとって過去はいつまでも現在形)と題して、ほぼそのまま転載されていた。
qwerty | 2006/08/27 09:07 AM
≪靖國神社論争を前にして、米国人なら思い当たることがあるはずだ。南北戦争で南部連合が掲げた旗を今日なお掲げることについての、靖國問題ほど深刻ではないにせよ、それなりに激しい議論を呼ぶ一件を思い起こせば、米国人もまた、一国の歴史的記憶にまつわる政治というのがいかに白熱したものになりうるか理解できるのである。そして、戦死者が殉じた理念そのものは必ずしも受け入れずとも戦死者そのものは礼を以て遇する、ということがどういうことなのか、米国人には分かるのだ。≫
qwerty | 2006/08/27 09:08 AM
おはようございます。
日中双方とも、感情論を持ち出しての議論はしない方が建設的だとおもいます。それを言うと、チャイナだって、チベット侵略・併合の責任者を天安門広場に飾っている、などの感情論になりかねません。不毛です。
Gくん | 2006/08/27 10:07 AM
くっくりさん。
このエントリ、何か小冊子か本にすればいいと思います。

南北戦争(Civil War)のことに触れていられる方がいらっしゃったんで、一言。
『コールドマウンテン』という南北戦争を描いたDVDを見ました。
ニコール・キッドマンが助演でしたが、深い戦争の爪跡を感じました。
アメリカ人も馬鹿じゃないんだから、少しは物を分かってほしいと思います。
さぬきうどん | 2006/08/27 10:17 PM
中国、韓国は、第2次大戦後、
ベトナムに侵攻しましたが、敗退しましたね。
つまり敗戦国になりました。
しかし、中国、韓国は戦勝国のベトナムに謝罪もしていませんし、
ベトナムで虐殺を行なった自国の兵士の戦死者を
共同墓地に埋葬し、政府が慰霊を行なっていますよね。

自分達はいいけど、日本はダメなの?
SD | 2006/08/28 09:34 AM
はぁ〜のん気だね〜(^-^)/
あきら | 2006/08/28 12:19 PM
<1>-(4) 中韓が日本に注文をつける権利があるのか?

の中に

サンフランシスコ平和条約には日本を含む49カ国が署名、批准しているが、その中に中国も韓国も見当たらない。

と言う文章がありますが、もっと詳しくした方が良いと思います。
つまり、韓国は後で出てくる様に、戦勝国ではなくて日本そのものだったからは良いですが、問題は中国です。中国の呼び名自体が曖昧なのですが、当時の中国は中華民国、今の台湾です。中華人民共和国、今の中国は存在していないことを明らかにしておくべきではないでしょうか?
sword | 2006/08/28 12:25 PM
swordさん:
ご指摘ありがとうございます。その旨追記をしておきました。
くっくり | 2006/08/28 02:09 PM
 <1>-5について。
中国古典では「十倍」のような言葉が出たら、実数ではなく「極めて多い」と解釈する方が、史実に近くなる、とされています。

有名な「三国演義(いわゆる三国志)」では、「曹軍百万を、赤壁に焼き払う」とありますが、赤壁の戦いに参加した曹操軍は15万程度で、実際に大合戦があった跡は存在しないそうです。

この言葉、同じ三国演義で「君の才能は曹丕に十倍する」という使われ方もしていますからね。

曹操という人は、実際には三国時代、中国をほぼ統一し、文学を奨励・支援するなど、文武共に三国時代の中心です。

が、三国演義の成立当時の関係もあり「侵略者」のイメージが付加されて悪人になっています。

これって、なーんか引っかかるんですよね。

「南京虐殺30万」が受け入れられてしまうのは、一般人に対して、「本当に30万かは、どうでもいい!日本は侵略者だから、一応、悪と言わなければならないんだ!」のような感覚を煽っているような、そんな気がしますね。

これが、中国の歴史と物語に根付き、固まっている感覚だとしたら、「30万という事実も虐殺の意図もない!」と、我々が事実を言っても、解きほぐすのは容易ではないかも知れませんね。
風来人 | 2006/09/01 12:34 PM
追加。
もちろん、その民衆の意思を煽ってるのは中国共産党です。

「文化大革命」に関して、さまざまな過去の遺産が破壊されましたが、「諸葛孔明」に関する展示に関しては、毛沢東自ら「これは残していい」としました。

三国演義は、元代末期から明代初期に成立しましたが、悪玉の曹操は、侵略者・元と同様の悪で、(曹操は漢民族だが)逆賊、
善玉になっている劉備や孔明は、漢民族の正当後継者である、という主張に貫かれています。

「南京大虐殺」の描写に、過去の中国の歴史にある、虐殺の手法があまりに多く、マトモな史料が存在しないことは有名です。

しかし、情報をコントロールされている民衆は、根付いた物語に合致するので頭にスッと入ってしまい、信用してしまう。

「歴史のフィクション化」は、中国で起こっていることではないか、という仮説を言ってみたりします。
風来人 | 2006/09/01 12:49 PM
戦後の郭末若の戯曲で初めて曹操は英雄として扱われました。
毛沢東の強い指示であったとされます。
毛沢東は曹操好みだったのですよ。
細かいことですけれど、
事実を確認してください。

現在の共産党は、共産党のイデオロギー臭いところは全部、毛沢東のせいにしようと新たな伝説を作っています。
胡錦濤は天安門事件当時、少数民族の徹底弾圧をしました。自分たちのいましていることを消すために、過去に悪役(毛沢東)を求めているのですから、おどらされるべきではありません。
簡単にいえば、毛沢東以上の非道をやっている奴は、今現在のさばっているのですから。
. | 2006/09/05 11:05 AM
 毛沢東は確かに曹操のような人間も評価していますね。

 ただ、三国時代が終わってから長い間、そもそも正統王朝は魏で、当時最高の人物が曹操であることは、古書や文学を見ても当然でした。

 晋代に作られた、正史・三国志(魏志)の時点で、間違いなく魏が勝者であり、その太祖である曹操が最も大物でしたから。

 元代で、漢民族が下級の地位となると、朱子学の影響もありますが、それ以上に、民族意識で、劉備・孔明を漢民族の代表に見立て、曹操を侵略者に見立てた物語が民間で作られていったわけです。当初は、演義よりも更にこっけいな話が存在しました。

 そして、演義での赤壁の戦いの描写は、元を転覆させ、明を作った朱元璋の参謀、劉基が、陳友諒を火計で破った描写と酷似しています。

 実際は、「赤壁の戦い」は、大きな合戦ではなかったとされ、少なくとも「100万を焼き払う」というのは、伝説に過ぎないんですね。

 物語は物語なんで、このことを「三国演義は捏造だ!」とか、ばかくさい批判をするつもりはないんですが、こうした、民衆に広まった通念を、「今現在の日本軍」に見立て、悪に仕立てて支持を得るために使ってるのかなぁ、中共は。ってことなんですよ。
風来人 | 2006/09/07 07:06 AM
 毛沢東は大変な勉強家ですから、その知識は、正史には当然及んでいたでしょうね。そして曹操=悪が出てきたのは、正史三国志が出て1000年の時間がある。

 無論、孔明に関しても早い時期から「忠臣」として評価は高かったのですが。
風来人 | 2006/09/07 07:12 AM
アフリカ諸国は、フランスの教科書に文句を言ってます。

何のために、韓国人兵士が志願に殺到したかを考えるためには、第二次世界大戦中アメリカ軍に志願した日系人を考えるとわかりやすくなります。 志願した日系人は、アメリカの為の戦争・アメリカの日本をはじめとするアジアへの侵略の為に参加したのでしょうか。そうするならば、反日的な人たちです。しかし、実際は当時アメリカ政府から奪われていた権利を得るために、アメリカ政府に忠誠を示そうとしたのです。戦死したとしても彼らはアメリカの為に死んだのではなくアメリカにいる日系人の同胞のために死んだのです。もし、アーリントン以外に戦死者をアメリカの守護者として褒め称える施設があってそこにいれられることになったら、彼も遺族も満足しないでしょう。同じようなことが韓国人兵士にも言えるのではないでしょうか。

慰霊ではないでしょ。慰霊という宗教行事に文句を言うならば中国は八月十五日に行われるすべての慰霊行事に文句を言ってくるはずです。すべて、カードになりうるからです。全国戦没者追悼式になぜ中国共産党政権が文句を言わないのか考える必要があります。無名戦士の墓のようなものは千鳥が淵にあります

イスラエルでイスラエル人に靖国参拝を非難され、お前こそと言いたくなりました。イスラエルでも、無名戦士の墓的なところには連れて行かれましたが、中東戦争の経緯を考えると複雑でした。私は、中東和平の今後を考えるにオルメルト首相はそこへ行くべきではないと思います。
つよぽん | 2006/09/07 04:11 PM

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