朝日と東京(中日) その居直りがいけない
 今日も朝日社説と産経社説は対照的でしたね。
 あと、年末に朝日社説と毎日社説がブッキングというのがありましたが、今日は朝日社説と東京(中日)社説がブッキング?

 “記者の間では読売、朝日、毎日、中日、北海道各紙の論説トップと中国の駐日大使の定期懇談会が毎月開催されていることは有名です。”
 ……やはりこの話は本当だったんでしょうか。

朝日社説:自民総裁選 靖国を避けて通れるか
 秋の自民党総裁選に向けて、年明け早々からさまざまな動きが出てきた。

 世論調査などで一番の人気は安倍官房長官である。その安倍氏が首相の靖国神社参拝の是非について、総裁選での争点とすべきではないと言い出した。

 「総裁選で議論することで、より外交問題化、政治問題化する。本来、外交問題化、政治問題化させないことが大切ではないか。この問題について議論を深めていくことが果たして本当にいいのか」

 これに対して、総裁選への意欲を見せ始めた山崎拓・元副総裁が「次の首相が参拝するかしないかはアジア外交に影響する」と反対する声をあげた。

 連立政権のパートナーである公明党の神崎代表も、次期首相は参拝を自粛すべきだという考えを示した。

 一方、小泉首相は安倍氏を応援するかのように「靖国は心の問題だ」と持論をぶった。だから、政治の争点にしない方がいいというわけだ。

 私たちも、戦没者をどう追悼するかの問題が争点になるのは悲しむべきことだと考える。だが、現実に大きな争点になってしまっているのは明らかだ。

 中国や韓国との政治的な対話のパイプは詰まり、苦労して作った日中韓の3カ国首脳会談まで流れてしまった。
東アジア共同体構想をはじめ日本のアジア外交が行き詰まり、欧米からも懸念の目を向けられている。

 中国など相手側に問題がないわけではない。それでも、こじれにこじれた外交をどう立て直すか、次期総裁つまり次の日本首相の座を争う政治家たちに、打開策が問われないはずがないではないか。

 隣国の首脳と会談できない首相にはらはらしている国民も、中国の巨大市場でのビジネスを心配する経済界も、次の首相がどう切り開いてくれるのか、大きな関心を寄せているはずだ。

 自分が首相になっても参拝するというなら、それでもアジア外交はこう打開するという展望を語る責任がある。参拝しないという人にも、靖国問題がなくてもただでさえ厄介な隣国関係をどう再構築するのかを語ってほしい。

 もともと参拝支持派の安倍氏はこの問題を避けたいように見える。最近は、先の戦争やA級戦犯をどう見るかについて「政治家は言わない方がいい。歴史家に任せるのが賢明だ」と述べている。

 だが、昨年8月の小泉首相談話にあるように、植民地支配と侵略の歴史を認め、被害にあった国の人々に謝罪するというのは政府の基本方針である。この認識まで政治家として語れないというなら、首相候補の資質が問われる。

 山崎氏らには、首相の参拝に批判的な福田元官房長官を担ぎ出す環境づくりの狙いもあるかもしれない。

 これから秋まで、さまざまな思惑が浮き沈みしながら事実上の総裁選が繰り広げられていく。議論の土俵を狭めることなく、活発な論争を期待したい。

 例によって気になった箇所、ツッコミ入れさせてもらいますね(^^ゞ

『私たちも、戦没者をどう追悼するかの問題が争点になるのは悲しむべきことだと考える。だが、現実に大きな争点になってしまっているのは明らかだ。』
『中国や韓国との政治的な対話のパイプは詰まり、苦労して作った日中韓の3カ国首脳会談まで流れてしまった。』
 こらこら。大きな争点にしたのも、中国や韓国との対話のパイプを詰めたのも、朝日新聞を代表とする左翼メディアですがな。
 そもそも靖国参拝を政治問題にしたのは朝日新聞なんですから(拙エントリー1/6付「■くっくり社説:朝日新聞社説 私たちこそ理解できぬ」参照)。何回も同じこと言わせんといて!

『中国の巨大市場でのビジネスを心配する経済界』
 「なぜ靖国神社に行くのか分からない。個人の趣味を外交に使うのはまずいんじゃないか」と暴言を吐いたユニクロ・柳井社長など、『中国ズブズブ』な人たちのことですね。こういう人たちは確かに存在しますね。でも、
『隣国の首脳と会談できない首相にはらはらしている国民』
 どこにこんな国民がいるんですか?経済・文化面ではちゃんと交流が続いてるし、支障を感じてる国民なんかほとんどいないと思いますよ。
 もっとも、日本はいま土下座外交から抜け出して普通の外交に戻れるかどうかの瀬戸際にいるわけですから、そういう意味ではらはらしている国民はたくさんいると思いますけどね。

『自分が首相になっても参拝するというなら、それでもアジア外交はこう打開するという展望を語る責任がある。』
 1月8日放送「報道2001」で、安倍さんはこのように言ってます。
 「靖国参拝は軍国主義につながるという批判がありますが、これは誤解に基づくものであって、誤解に基づく批判であれば、それを解く努力をするべきであって、われわれは誠意をもって、誤解を解く努力をしていかなければならない」

 もともと“戦没者の追悼”というのはその国が主体的に決めて行うことであって、他国が口を挟むべきものではありません。「参拝をやめろ」などと要求するのは内政干渉です。日本が主権国家である限り、その内政干渉に屈して参拝をやめるという選択肢はありえません。内政干渉しておいて、それが叶えられないからと言って首脳会談を拒否する方が異常なのです。
 「勝手に言っとけ!知るか!」じゃ問題ですが、そうでなく、こちらは「あなた方は靖国参拝を誤解している。その誤解を解くために会って話し合いましょう」と中韓に対して現在、扉を開いている状態なのです。これ以上どうしろと言うのでしょう?

 しかし朝日新聞は「靖国、靖国」ってほんとしつこいですね。
 中国様のためを思ってやってるんでしょうが、向こうは逆に困ってると私は思いますよ。
 5年間も繰り広げられてきた靖国参拝を巡っての小泉首相との対立の末、「小泉はもう何を言っても聞く耳もたん」「靖国はもうカードにならん」を一番実感してるのは他ならぬ中国でしょう。
 とは言え、「参拝をやめないと首脳会談しないぞ」といったん見得を切ってしまった以上、矛を収めるのはなかなか難しい。日本と違って非常にメンツを重んじる国ですからね。
 つーことで、ほとぼり冷めるのを待ってるのに、朝日は「靖国、靖国」といつまでも騒いでる。「もうそっとしといてくれよ。これじゃいつまで経っても首脳会談できないよ。だって、この状態で会談したら『中国は靖国参拝を認めた』ってことになって、俺らのメンツ丸つぶれじゃん」。
 だから本当に首脳会談を復活してほしいのであれば、朝日は靖国のことはもう言わない方がいい。

 って、これはあくまでひとつの見方。もちろん逆の見方もあり。小泉首相の任期切れがだいぶ先ならともかく、もう9月で終わりですからね。
 「小泉は何言っても聞く耳もたんから、もう相手にせずに次の首相に賭けよう」というパターンの場合、中国サイドは当然、靖国参拝しない人間に次の首相になってほしいと考える。
 ということで、指令。「朝日よ、靖国問題を煽れ。そして参拝賛成派の安倍と麻生を叩け。反対派の福田を首相にしろ。そのためならエロ拓を持ち上げてもかまわん」。
 ちょうど今は東シナ海ガス田問題、総領事館員自殺問題でもめてる最中。「朝日よ、靖国問題を煽れ。そしてガス田や自殺問題を目立たなくさせろ」。まさに一石二鳥。朝日もやりがいあるね。

『この認識まで政治家として語れないというなら、首相候補の資質が問われる。』
 煽ってますね〜。でも安倍さん、朝日の挑発に乗っちゃだめよ。
 安倍さんが政府見解とは違う歴史認識を示したら、「政府の一員なのにおかしいじゃないか」と叩いてくる。逆に政府見解と同じ歴史認識を示したら、「これまでの持論と違うじゃないか。首相になるためなら持論も曲げるのか」と叩いてくる。
 どっちにしても安倍叩き。捏造してでも安倍叩き(「NHK番組改変虚偽報道」を思い出せ)。それが朝日の一貫したスタンス。

 ちなみに安倍さんが言った「政治家は言わない方がいい。歴史家に任せるのが賢明だ」、これはもともと大平正芳首相(当時)の言葉ですね。以前何かで読んだけど、安倍さんはこの大平首相の受け答えをとても評価してるみたいです。
 私としても、首相候補たるもの、歴史認識についてははっきり語ってほしいという気持ちはありますが、今それをやると朝日がまた大騒ぎして、確実に中韓の内政干渉を呼び込みますからね。だから今は言わない方がいい。

『議論の土俵を狭めることなく、活発な論争を期待したい。』
 「これからも靖国問題で争って下さい。我々朝日新聞も全力で煽っていきますので」という宣言として承っておきます。

 あと、最後の方に脈略なく福田さんの名前が登場してますが、サブリミナル効果でも狙ってるんかしら?朝日は福田さんが首相になることを願ってますからね。

 
 さて、東京新聞(中日新聞)は今日もすっごいですよ〜。
 「朝日以上の電波やなぁ」と感じることが増えてきた今日この頃。

東京新聞社説:小泉氏と靖国 その居直りがいけない
 これが国の最高責任者の発すべき言葉だろうか。「靖国参拝自体がいけないのか、中国、韓国がいけないからいけないのか、はっきりしてほしい」と、小泉首相は言った。その居直りがいけない。

 外遊先のイスタンブールでも首相は靖国にご執心だったようだ。年頭会見と同じ発言を繰り返した。おれの勝手だ、余計な口を挟むな、と言わんばかりに。まるで批判されるのを楽しむように。

 物事を単純化して異論を退けるような、発展性のない議論につきあうつもりはさらさらないが、理解に苦しむ点はただしておきたい。

 首相は自民党総裁選の争点に関して「靖国の問題を自分から提起したことはない。参拝しろとか、してはいかんとか、誰にも言うつもりはない」と述べている。

 二〇〇一年総裁選で八月十五日参拝を公約して、党の有力支持団体、日本遺族会の票獲得に動いたのは誰だったか。小泉氏である。

 それでいて、ポスト小泉の総裁選は靖国を争点にするな、と言うのなら、そんな身勝手はない。

 盟友であった山崎拓氏が「外交問題でないと強弁しても、内政問題であり、争点になる」と言っている。その通りだ。
次の総裁は小泉スタイルを継ぐのかどうか、党員も、国民だって、知っておきたいだろう。

 そもそも、靖国参拝をわざわざ目立たせて、外交問題に発展させたのは首相自身だ。いまさら「精神の自由、心の問題だ」と自分の殻に閉じこもるのでは、無責任だろう。

 参拝自体がいけないのか、外国が駄目だと言うからいけないのか、と居直ってみせる首相に、日米・日中戦争、その責任の所在をめぐっての思慮分別は感じられない。極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判と、そこで断罪されたA級戦犯の評価を抜きにして、靖国は語れないのに。

 次期総裁候補の一人、安倍晋三氏も小泉氏と同類らしい。先日こう言った。「先の戦争をどう評価するかを政治家が言うと、外交的、政治的意味を持ち、あまり賢明ではない。それは歴史家に任せたい」。意味が分からない。歴史認識を語れぬ総理総裁候補など、候補たりえない。


 連立与党にあって控えめな公明党の神崎武法代表が、さすがに次の首相の参拝自粛を求めている。(1)歴代首相は侵略戦争を深く反省する談話を出している(2)靖国神社はA級戦犯が合祀(ごうし)され、かつての戦争を称賛している(3)そこに首相が行くのは内閣の方針と矛盾する−というものだ。

 また口先だけかと軽んじられないよう、神崎氏にはお願いしておく。

 最初の3段落、めちゃヒステリックですな。朝日新聞といい、靖国が絡むと何でこうヒステリックになるんやろ?「心の問題」だからでしょうか(^_^;?

『物事を単純化して異論を退けるような、発展性のない議論』
 は?東京新聞のことですか?朝日新聞もそうだけど。

『二〇〇一年総裁選で八月十五日参拝を公約して、党の有力支持団体、日本遺族会の票獲得に動いたのは誰だったか。小泉氏である。それでいて、ポスト小泉の総裁選は靖国を争点にするな、と言うのなら、そんな身勝手はない。』
 争点の具にする愚かさに気づいたからじゃないですか?
 後ほど引用しますが、今日の産経一面「平成十八年 はしがき4『首相の戦い、最終決戦へ』」を読むと、そんな気がしてなりません。
 というか、そもそも靖国参拝が総裁選の公約として挙げられるという状況、つまり政治問題になってること自体がおかしいのであってね。何度も言うけど、そういう状況を作ってきたのは朝日新聞はじめ左翼メディア。昔のように首相の参拝が「日常」だった時代では、決して公約になんてならなかったのです。

『盟友であった山崎拓氏が「外交問題でないと強弁しても、内政問題であり、争点になる」と言っている。その通りだ。』
 おお!東京新聞が「靖国問題は内政問題」と認定しましたよ。明日からはもうこの問題で「参拝はアジアの感情を傷つける」てな論法は使えませんぜ、旦那。

『そもそも、靖国参拝をわざわざ目立たせて、外交問題に発展させたのは首相自身だ。』
 小泉首相が参拝をわざわざ目立たせて、外交問題に発展させた?はぁぁぁ?!
 競馬予想みたいに参拝Xデーを予想したり、参拝したら大々的に一面で報道、「中韓の反発は必至です」とご注進、テレビはニュース速報まで出して、何度も何度も同じ映像流して……。
 朝日社説へもツッコミ入れたけど、わざわざ目立たせて、外交問題に発展させたのはあんたらメディア自身なんですよ。いいかげん気づいてよ(T^T)

『極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判と、そこで断罪されたA級戦犯の評価を抜きにして、靖国は語れないのに。』
 朝日新聞も東京新聞も「東京裁判とA級戦犯の評価」をちゃんとやったことがあるんですかね?
 彼らの論説を見てると、いつも、「日本は東京裁判を受け入れた」→「A級戦犯は戦争犯罪人」→「彼らが祀られている靖国参拝はダメ」で終わりですやん。
 まさに『物事を単純化して異論を退けるような、発展性のない議論』。
 東京裁判を、いや日清戦争あたりからのアジア史を一度検証、評価して下さいよ。靖国を語るのはそれからにして下さい(私も歴史の勉強についてはまだまだなので、あまりえらそうには言えませんが)。

『次期総裁候補の一人、安倍晋三氏も小泉氏と同類らしい。先日こう言った。「先の戦争をどう評価するかを政治家が言うと、外交的、政治的意味を持ち、あまり賢明ではない。それは歴史家に任せたい」。意味が分からない。歴史認識を語れぬ総理総裁候補など、候補たりえない。』
 また来た。安倍さんへの挑発。しかも朝日より露骨に煽ってる。
 東京新聞も勝手ですな。「靖国参拝は外交的にまずいからやめろ」とこれまでさんざん“外交第一”の主張をしてきたくせに、安倍さんが「外交的にまずいから言わないでおく」と言ったら、「何言ってんだよ。意味わかんねーよ。語れよコルァ」だなんて。


 ↓はい、お口直し。

産経社説:ポスト小泉 靖国を政争の具にするな
 九月の自民党総裁選で首相の靖国神社参拝を争点化しようとする動きについて、小泉純一郎首相は訪問先のトルコで、「靖国参拝をしろとか、するなとか、どの人にも言うつもりはない。精神の自由、心の問題だ」と語った。

 この問題に関しては、そもそも靖国神社が日本人にとって、いかなる場所なのかに思いを致したい。国のために亡くなった二百四十六万余柱の霊が祀(まつ)られ、国民のだれもが心静かに戦没者を慰霊できる場である。参拝したくない人は行かなくてよいのだ。

 それを政治問題化し、「ポスト小泉」の政争の具にすることで喜ぶ人たちはだれだろう。中国、韓国両国との関係修復のために後継首相は靖国参拝すべきでないという意見が与党内だけでなく、財界からも出ている。

 だが、次の日本の首相が靖国参拝をするかしないかを“踏み絵”のように扱うことの愚かしさを知らなくてはならない。その是非には外国の政治的思惑や策謀が絡んでおり、総裁選がそれに乗じられてしまうからである。

 しかも靖国参拝に反対している前原誠司民主党代表が中国脅威論に言及したことで、中国首脳と会談できなかった。このことは、靖国参拝が中国にとって政治カードのひとつでしかないことを明確に物語っている。


 もちろん、政府は、首相の靖国参拝が平和への祈願だけでなく、日本固有の伝統・文化であることも内外に十分説明すべきである。

 一方、首相は「総裁選は国会議員と党員で実施されるが、国民が参加する形にしたいということは十分理解できる」と述べた。

 自民党は全国十一ある衆院比例代表のブロックごとに党員以外の国民も参加できる「プレ総裁選」を検討している。国民的な盛り上がりに欠かせないのは、各候補者が自らのマニフェスト(政権公約)を提示することだ。首相になった場合の明確な政策目標や政策を実現するための具体的な手段や方策を示すべきだろう。

 櫻井よしこさんは十二日付本紙朝刊で「後継者には改革のみならず志を求める」と訴えた。「志を持つ国」をどう築き上げるのか。候補者にその志のあるなし、これこそが真の争点であるといいたい。

 「靖国を政争の具にするな」。が、そんな産経も一面を見ると、ちょっと角度の違う記事が載ってる。一部引用します(ネットソースなし)。

■平成十八年 はしがき4『首相の戦い、最終決戦へ』 政治部 乾正人
(前略)
 首相は「今年は必ず当たる予想があります。それは、『今年、小泉首相は退陣する』。これは当たります」と茶化すが、その前に大仕事がある。
 自分の意中の人物に政権のバトンを渡すことだ。その際のキーワードは、「構造改革継続」と「靖国参拝」の二つだ。
 構造改革に関しては意欲の濃淡はあれ、待ったをかける候補者はいない。「改革反対派」のレッテルをはった「異分子」を去年の衆院選で党外に放り出したからだ。

 焦点は後者の靖国参拝だ。
 五年前の自民党総裁選以前に、首相が熱心に靖国神社に参っていた記憶は私にはない。
 そもそもの動機は、対抗馬だった橋本龍太郎元首相の票田とされていた日本遺族会の切り崩しという政略的なものだったのではないか。
 橋本氏は首相在任時に、中途半端な形で靖国神社を参拝、中国や韓国から反発を受けると、在任時は二度と九段の鳥居をくぐらず、遺族会の信頼を失っていたからだ。

 しかし、特攻基地だった鹿児島県・知覧を訪ね、特攻隊員の遺書を読むうち首相の心中に大きな変化が生じたのは想像に難くない。さらに、首相就任直後に「八月十五日ではなく、前倒しして参拝すればアジア各国の反発は最小限ですむ」という加藤紘一元幹事長らの進言を容れて妥協したにもかかわらず、現実はそうならなかったことが、公約を「信念」にまで高めた。首相の靖国参拝は、「心の問題」であるのは確かだが、国家の威信をかけた譲れない問題となったのである。

 このことを理解できなかったかつての盟友・山崎拓元副総裁は、国立追悼施設建設にのめりこみ、昨年十月の内閣改造・党役員人事で首相補佐官というポストさえ失った。福田康夫元官房長官が主要閣僚や党三役に起用されなかったのも「靖国問題」が大きな要因だ。「ポスト小泉」レースは、この時点で火ぶたが切られた。山崎氏が最近、福田氏との連携をにおわせ、自民党総裁選での靖国問題の争点化を声高に言うのは首相との「決別宣言」でもある。

 では、小泉首相は総裁選で誰を支援するのか。
 極論すれば、首相にすれば「構造改革」と「靖国参拝」を継続する人物であれば、「意中の人」と喧伝されている安倍晋三官房長官に限らず、麻生太郎外相でも竹中平蔵総務相、それに占い師の細木数子さんご託宣の武部勤幹事長でも構わないのではないか。
 首相にとって後継首相に福田氏ら「アンチ小泉派」が就くことは、自らの政策の否定につながり、衆院選大勝を帳消しにするほどの政治的敗北を意味するからだ。

 自民党総裁選は「小泉派」対「アンチ小泉派」の最終決戦の場となり、靖国問題をはじめ国家のあり方の根本を問うものとなろう。それだけに、われわれ記者も興味本位に流されない「ポスト小泉」報道をこころがけたい。

 別に「靖国を政争の具にしろ」と言ってるんじゃなく、これまでの経緯からそうなってしまわざるをえないだろう、という主張なんでしょうね。
 靖国問題を含めることの是非はともかく、総裁選が「国家のあり方の根本を問うもの」となることには私も賛成です。

 
 最後に、全然別の話。
 日本ではあまり大きく報道されなかった小泉首相のトルコ訪問について、記事を2本ご紹介。

首相、邦人救出のトルコ人元機長に謝意 「日本人は感動した」
 【イスタンブール=高木桂一】トルコ訪問中の小泉純一郎首相は十二日午前(日本時間同日午後)、イスタンブール市内のホテルで、イラン・イラク戦争の最中の一九八五年三月に、テヘランに取り残された日本人二百十六人を救出したトルコ航空機のオズデミル元機長(75)と会い、感謝の意向を伝えた。

 面談は小泉首相の強い要望で実現した。小泉首相は「砲弾が飛び交う中、邦人を救出していただき、日本人はみな感動した。あなたがこの任務を引き受けなかったら、救出できなかった」と頭を下げた。元機長は「邦人救出は私の任務だった。自分はその後、日本への直行便の機長を務めた」と応じた。

 トルコでは昨年、NHKの「プロジェクトX」で二年前に放送された日本人救出劇を描いた番組が、トルコ語で流された。その際には「多くの日本国民から、在アンカラ日本大使館などを通じて感激のメッセージが届けられた」(外務省筋)という。

 当時のトルコ側の対日支援は明治時代から続く両国の友好を象徴しているが、実は日本への「恩返し」の意味もあった。

 オスマン・トルコ帝国のアブドル・ハミト二世は一八九〇(明治二十三)年、明治天皇への特派使節としてオスマン提督を日本に派遣した。しかし、使節団六百五十人を乗せたトルコ軍艦「エルトゥールル号」は、帰路に暴風に見舞われ、紀州・串本沖(和歌山県)で沈没してしまう。このとき日本側の手厚い救護で六十九人が救出され、日本の巡洋艦でトルコに送還されたのだった。

 この友好を象徴する出来事はトルコの小学校の歴史教科書にも書かれており、「トルコ国民は日本への恩を忘れない」(トルコ政府関係者)という。

小泉首相トルコ訪問 現地メディア 破格の扱いに
 【イスタンブール=高木桂一】小泉純一郎首相がトルコを訪問し、両国関係の強化を打ち出したことについて、トルコのメディアは十日から十一日にかけて一斉にトップ級で報じた。

 小泉、エルドアン両首相の会談を受けた十一日の主要新聞は「お祭り騒ぎ」(ホテル従業員)といったところだ。「中東における連帯」(テュルキイ紙)、「中東和平のためのトルコ・日本の協力関係」(イェニ・シャファック紙)、「トルコ・日本間の協力関係」(ラディカル紙)、「鳥インフルエンザへの共同対策」(ヴァタン紙)−などの見出しで大々的かつ肯定的に伝えた。

 一方、テレビも十日の両首脳の共同記者会見を四局が生中継し、ニュース専門局「NTV」などは約五十分に及んだ会見を、時間を延長して最初から最後まで完全放送した。

 外交筋は「他の主要国首脳の訪問の際には見られない破格の扱い」と驚きを隠せない様子だ。

 小泉首相GJ!トルコGJ!(≧∇≦)
 トルコの皆さん、わが国の首相を歓迎して下さってありがとうございます。また「エルトゥールル号」のことを語り継いで下さってありがとうございます。恩を仇で返してくるどこかの国々とは大違いです。
 日本のメディアはこういう親日国の話題をもっと取り上げるべきですね。

※お薦めフラッシュ
 日本とトルコ


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Posted by くっくり 01:41 | 朝日新聞 | comments (12) | trackback (2)
コメント
トルコ在住です。首相がこちらにいらしていたとき、トルコはクルバンバイラムという宗教行事の真っ只中。「犠牲祭中の国賓」として報じられていました。大成建設がメインになってやっている地下鉄の工事(海底トンネル)を視察したり、トプカプ宮殿やブルーモスクを見学(観光?)したり。共同記者会見のときは風邪でもひいているのかしら?と思うような目の腫れが痛々しい首相でしたが、次の日からは「小泉節」が出ていたようですね。江利チエミの『ウスキュダル』などを歌う映像が流れていました。アンカラはともかく、イスタンブルに首相が訪れるのは史上初。私もいいときにトルコにいました!
Posted by りょん | URL | 06/01/14 02:31 | g1IA8umo

小泉首相、トルコとの歴史的な友好関係を確かなものにされたようです。マスコミはトルコに興味がないようですね。扱いが小さすぎます。
イラクのサマワに寄るかなとも思ったのですが…。任期中の訪問(閲兵・激励)はほぼなくなったようです。
残念!
Posted by さぬきうどん | URL | 06/01/14 02:38 | dX4dJhFc

東京新聞は、最近、朝日を上回る反日カラーを打ち出していますね。『靖国の評価は歴史家にまかせる』は、大平首相の言葉だったんですね。勉強になりました。小泉首相のトルコ訪問は、よかったと思います。しかし、それを少ししか報道しない日本のマスコミの反日ぶりが、いつものように腹立たしい感じです。 ミケ
Posted by 屋根の上のミケ | URL | 06/01/14 06:47 | gWoHmlsU

靖国参拝問題ですが、首相や外務大臣が宗教・信仰心を大切にしている国家を訪問し、靖国参拝が「国のために命を捧げた国民に敬意を表し不戦を誓っているものである」ということについて理解を求めていく、つまり特定アジア以外の諸外国を味方につけて外堀を埋めることから始めるのがよいと思います。そうすれば「靖国問題のために日本が孤立している」というデマが払拭できるでしょう。
Posted by しろふくろう | URL | 06/01/14 09:02 | w8Ce3h.I

>物事を単純化して異論を退けるような、発展性のない議論
中国との問題を靖国問題一本に単純化して異論を退けてるマスコミが言うかね…
Posted by もにお | URL | 06/01/14 13:40 | MSIqIqlk

こんにちは」。
毎日の日課で、こちらを読ませて頂いています。
とてもためになっています!!
日本とトルコのフラッシュを見て、涙が溢れました。
感動です〜〜!
それにしても日本のマスコミは首相のトルコ訪問は、余り報道せずに、どこかの将軍さまが中国極秘訪問のことばかり報道していました。
マスコミは親日国はお嫌いなのかな!?
どこの国のマスゴミ・・・。ヒドすぎです。
Posted by dekotyan | URL | 06/01/14 14:05 | KAWVyyu6

>今日は朝日社説と東京(中日)社説がブッキング
>記者の間では読売、朝日、毎日、中日、北海道各紙の>論説トップと中国の駐日大使の定期懇談会が毎月開>催されていることは有名

くっくりさんやはりこの話は本当っぽいですね。
朝日、東京のみならず北海道新聞の社説もどう内容のものでした。
自民党総裁選*「靖国」外しはおかしい(1月14日)
Posted by 怪人物X | URL | 06/01/14 14:15 | CwWHjSvY

エルトゥールル号関係ではこのAA劇場も涙がちょちょぎれる・・・。
トルコと日本(AA劇場)
http://iroiro.alualu.jp/syosetu/torukoaa.html
Posted by Keiz | URL | 06/01/14 15:29 | NRmNNE0g

Keizuさん 

見ました(T_T) 初代大統領と日本人のつながりを読み より深く理解出来ました↓

官邸HPより

>小泉総理は10日午前(同日午後)、トルコ初代大統領ケマル・アタチュルクをまつるアタチュルク廟(びょう)を訪れ、献花しました。その後、「建国の父アタチュルクの偉業に敬意を表します、日土(日本とトルコ)両国の友好発展を祈念します。」と記帳しました。
Posted by hiro | URL | 06/01/14 18:24 | Xje89vUc

くっくりさん、あの筑紫のNEWS23では、小泉首相の
トルコ訪問を子供達と折り紙を折る映像を流して、
「小泉首相訪問の成果は見るべきものがなく、
国会が始まる前の息抜きになった」と報じていました。

こりゃこんな番組見てたら真実なんて
語れないですわね。思わずTVに向かって
怒鳴りましたよ。
Posted by 胡弓弾き | URL | 06/01/15 01:26 | H8MrzqPQ

「戦争の評価は後世に委ねるべき」という趣旨の発言をして叩きまくられた政治家がいたような記憶があるんですが。
誰だったかな。
Posted by 煬帝 | URL | 06/01/15 15:58 | fKGmyxRY

この記事を読み、感極まって泣いてしまいました。
このように古い恩義を忘れずにいてくれる国に本当に感謝したい。
実はあまりトルコに良いイメージはなかったのだけど、完全にイメージが変わりました。
トルコの方と接するときは、このことを忘れずに感謝の念を伝えようと思います。
このような記事を載せていただき、ありがとうございました。
Posted by そら | URL | 06/01/16 11:35 | MEARmxWo

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靖国神社に固執する朝日新聞
自民総裁選 靖国を避けて通れるか 秋の自民党総裁選に向けて、年明け早々からさま
Posted by 憂国の書 | 06/01/14 10:54

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Posted by メタモルフォーゼ・ニッポン | 06/01/14 11:15