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スイスが平和ボケ?

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 5月17日の産経新聞夕刊に、目を疑うような記事が載っていました。
 スイスが平和ボケになってるんじゃないかという内容です。

 改めて産経WEBを探したら、ほぼ同一の記事が4月25日付で掲載されていましたが、紙面の記事の方が日にちが新しいので、ここでは紙面を引用します。
 
※但し紙面の方は字数の都合もあるのか、ややコンパクトに編集されています。気になる方は、WEB版もあわせてご覧下さい。
 
産経新聞5月17日(土)夕刊 総合面「Inside(インサイド)」

スイス平和ボケ?
ハイジャックにも軍出動せず
理由は「業務時間外」


 永世中立だが鉄壁の守りで固めた国家。そんなスイスのイメージをすっかり塗り替える事件があった。民間航空機が乗っ取られてジュネーブの空港に緊急着陸した際、イタリアとフランス空軍の戦闘機が出動したのにスイス空軍機は全く動かなかったのだ。理由は「業務時間外だったから」。スイスに一体、何が起こっているのか? (坂本英彰)

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◇伊・仏空軍機が発進

 ロイター通信などが伝えた事件の概要はこうだ。

 2月17日未明(現地時間)、エチオピアの首都アディスアベバからエチオピア航空のボーイング767旅客機が離陸。乗客約200人を乗せてローマに向かっていた同機で異変が起こった。機長がトイレに立った隙に副操縦士が操縦室に立てこもり、通信コードを使って「ハイジャック発生」を発信しスイスに向かうことを告げた。

 イタリア空軍ユーロファイター戦闘機が緊急発進してハイジャック機を発見。同機を監視しつつスイス西部のジュネーブに向かい、フランスの空域に入ったところで仏空軍ミラージュ戦闘機に引き継いだ。

 ハイジャック機は午前6時2分(同)、ジュネーブの空港に着陸。副操縦士は操縦室の窓からロープで脱出し、駆けつけた警官に「私がハイジャックした。スイスへの政治亡命を求める」と告げた。副操縦士は拘束された。

 奇妙なのはこの間、スイス空軍機が出動しなかったことだ。なぜか。米メディア、ブルームバーグなどによると、スイス空軍の戦闘機が緊急発進するのは午前8時から午後5時の間だけ。「時間外」には、フランスやイタリア空軍が代替することになっているという。各国首脳級が集うダボス会議の際も、隣のオーストリア空軍が警戒で協力する。「それは予算と優先順位の問題」。スイス空軍報道官はそう説明している。

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◇鉄壁の守りどこへ

 スイスは1815年に永世中立国として認められたが、重武装で国土を守ってきたと思われてきた。今回の事態が明らかにしたのはイメージとは正反対の「お役所勤務」だ。

 同国では近年、「現実の脅威がほとんどない」として伝統の徴兵制に対する廃止論が高まっている。昨年の国民投票では存続派が多数を占めたが、軍事支出に対する国民の目は厳しい。政府は24時間運用に向けてスウェーデン製戦闘機22機を購入する計画だが、近く行われる国民投票で否定される公算が大きいという。

 軍事をも「外注」するスイスの選択は国民負担を減らす賢いやり方なのか、それとも200年の平和がもたらした感覚マヒなのか。意見がわかれるところだが、専門家からは防衛の欠陥を指摘する声もある。ハイジャック機が建物に突っ込むような危機的状況で、撃墜が許されていない他国軍機による対処は困難といった問題だ。イタリア空軍OBの空港専門家は「スイスへの攻撃を計画するなら業務時間外がおすすめだ」と揶揄(やゆ)している。


 私は軍事はさっぱりなので、そちらの評論は皆様に丸投げ\(^^\)
 素人の率直な感想としては、やはり「え!まさかあのスイスが?!」というものでした。

 スイスは国民皆兵で、日本とは違って「平和と安全はタダではない」という当たり前の認識や、「自分の国は自分で守る」という覚悟が国民に根付いていて、装備なんかにも当然お金をかけていて、軍も当然ながら24時間体制で任務に当たっていると思っていました。

 この本を愛読していたこともあり、よけいに。




 気になったので、スイスの軍事にまつわる現状をざっくりですが調べてみました。

 すると、swissinfo.chというスイスのメディアに、このハイジャック事件に関連する解説記事が載っているのを発見。

 そこに出てくるのが、新しい戦闘機「グリペン」の購入問題です。

スイスの空の安全 グリペン購入を巡り議論(2014-04-09 11:01)

 上の産経記事でも少し触れられていますが、「グリペン」とはスウェーデン・サーブ社製の戦闘機で、スイス政府は22機を購入する計画を立てていました。

 「グリペン」購入問題でスイス国内が議論になっている最中に、ちょうどこのハイジャック事件が起きたわけですね。

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 そして「グリペン」購入の賛否を問う(正確に言うと、「グリペン」購入も含めた軍隊補強のためのファンド創設の賛否を問う)国民投票が、5月18日に行われました。

 国民投票の結果から先に言うと、これは否決されました。

新戦闘機グリペン購入、否決(2014-05-18 17:48)


 時系列でまとめると……

昨年9月、連邦議会の上下両院で戦闘機の購入が承認。
  ↓
これに反対の立場の社会民主党、緑の党、自由緑の党、反戦主義団体「軍隊なきスイスのためのグループ(GSoA)」が連携し、決議をレファレンダム(国民審議)に持ち込んだ。
  ↓
戦闘機購入の最終判断は5月18日の国民投票で決めることになった。
これはスイス史上初めての軍隊補強のためのファンド創設の賛否を問うもので、国内で大きな議論に。
  ↓
2月16日、ハイジャック事件で空軍の対応が国内外の批判を浴びる。
  ↓
5月18日、国民投票が行われ、軍隊補強のためのファンド創設の賛否を問うイニシアチブ(国民発議)は53.4%がノーを突きつけ否決。
新戦闘機「グリペン」22機は、自動的に購入されなくなることが決定。


 この結果に、「今ある戦闘機は古くて機能しない、テロリストの攻撃などから国民を守るためにも新しい戦闘機が必要だ」として、賛成を呼びかけていた政府をはじめとする支持派は深く落胆したそうです。

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[「グリペン」のモデル機を眺めるスイス軍の司令官、アンドレ・ブラットマン氏。氏は同機の購入を強く推進していた (Reuters)]


 スイスにも、もちろん昔から左派政党や反戦団体は存在していますが、約20年前の新しい戦闘機購入の際の国民投票は、可決されたとのこと。

 それが今回は否決されたのはなぜか?

 日本とは違い、特に財政が苦しいとか、そういうことでもなさそうなんですが…(一例:ロイター2013/8/15)。

 じゃあスイスは左傾化していってるのか?となると、一概にそうとも言えないようです。

 たとえば、先ほどリンクを貼った【新戦闘機グリペン購入、否決(2014-05-18 17:48)】で紹介されているのは、

 「スイス軍は近代化されるべきであり、現代の脅威に対応すべきだが、そのための機能をグリペンは十分備えていない。機能面で疑いが残る」

 という技術関係者の声だったり、

 あるいは、左派の社会民主党の連邦議会議員の一人の

 「国民は軍隊そのものに反対しているわけではない。ただ、グリペン購入は無駄使いだと判断したのだ」

 という分析だったり。

 また、下の記事では各政党や団体の反応が紹介されており、スイスの軍事をめぐる現状が何となく見えてきます。

国民投票結果への反応 歴史上初めて軍隊が受けた国民からの「ノー」(2014-05-19 15:52)

 この中で、スイス士官協会(SOG/SSO)のドゥニ・フォワドヴォー会長が、面白い例えをしています。

 グリペン購入の拒否は、スイス軍を「盆栽軍隊」にすることだと。
 すなわち、スイス軍はその任務である「戦い方を知り、守り、助けること」ができなくなりつつあるのだと……。


 ちなみに、5月18日の国民投票では、「グリペン」購入問題を含めて全部で4つの案件が国民投票にかけられました。

 他の3つの案件と結果は以下の通り。

・世界一高額の法定最低賃金導入のイニシアチブ
 → 76.3%が反対し否決

・性的虐待者を教育現場などから追放するイニシアチブ
 → 63.5%の賛成で可決。

・家庭医促進を目的とした憲法改正案
 → 88%の賛成で可決。


 最後まで賛否の予想が付かなかった「グリペン」の案件とは違い、これらは予想通りの結果だったようです。

 「世界一高額の法定最低賃金導入」が否決されたことは、日本のメディアでも小さくですが報道されましたよね。


 最後に、やや余談になりますが興味深いのでご紹介。

 これも5月18日に行われた、但し、国民投票ではなく州民投票。

 ベルン市民が立ち上げたミューレベルク原発即時稼動停止を求めるイニシアチブ(住民発議)は、63.3%の反対で否決されたそうです。

州民投票結果 福島原発事故に背中を押された原発即停止の発議、否決(2014-05-18 20:16)

 日本では時事通信ぐらいしか報道していません。

 仮にこれが真逆の結果で、案件が可決されていれば(原発反対派が勝っていれば)、日本でもサヨクメディアを中心に大きく報道されたかもしれません。



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 気がついたらこんなに小さくなってました。

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Comments

くっくり様、スイスの件をご紹介下さりありがとうございます。

記事の中で、ダボス会議中の警戒でスイスに協力しているのは、オーストラリア空軍ではなくオーストリア空軍ではないでしょうか。スイスの隣ですし。
とぼそ | 2014/05/26 06:54 PM
とぼそさん、ご指摘ありがとうございます(めっさベタな間違いですね(^^ゞ)。修正しておきました。
くっくり@管理人 | 2014/05/26 07:27 PM
この事件、時事通信は2月に伝えていますね。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201402/2014021800061
ソースは確認していませんが、日本も大韓航空機撃墜事件の時に、各当機の通信を記録しいたものの、勤務時間外だったので対応が遅れたという話があるらしいです。

戦闘機のグリペンですが、スウェーデン製の戦闘機はエンジン出力が問題で、云わば乗用車用のエンジンを無理やりふかしてトラックを動かしているようなものだそうで。
まあエンジンについてはフランスも似たようなもので、フランス製の戦闘機がデルタ翼と言われる三角形の翼ばかりなのも、エンジンの出力の関係でこの形にしないと性能が出しにくいからで、アメリカ製エンジンくらいの出力にならないと自由に設計できないと。
エンジンの出力がそこまで機体の設計に影響を与えてしまうというのにちょっと驚いた覚えがあります。
すぷー | 2014/05/27 12:38 PM
くっくりさん、こんにちは〜〜〜

私もこの記事を読んだ時、軍隊、特に空軍に営業時間があるという話にひっくり返りそうになりました。

まあ、予算の関係なのでしょうがないかなと、自分を納得させようとしましたが、納得できませんでした。

さておき、グリペンですが、スイスに最適な戦闘機と思うのですが。整備も簡単で、戦場での運用に人手も掛かりませんし、機体の価格・運用保守コストも低く済みます。

といって安普請ではなく、電子装備、各種兵器の運用能力も十分にあります。ただ、単発なので機体は軽いですが、ややパワーに欠けるかなというのは事実と思いますが・・・・・(海外でもそこそこ売れてますし)

ミルルさん、
>フランス製の戦闘機がデルタ翼

最近のヨーロッパの戦闘機はすべてカナード翼(前翼)とデルタ翼の組み合わせです。エンジンも強力なものを搭載しています。(グリペン除く)

これらにフライバイ・ワイヤーやフライバイ・ライトを組み合わせることにより、高い運動性と機動性を確保しています。

お時間があればご覧ください。ちょっと信じ難いような飛行をしますので。

https://www.youtube.com/watch?v=B0f5EStDOF4
腰抜け外務省 | 2014/05/27 02:23 PM
>腰抜け外務省さん

>エンジンも強力なものを搭載しています
ということは、デルタ翼を採用しているのはデータがあるからということでしょうかね。
私の情報は古かったようです(^^;
supu- | 2014/05/27 07:21 PM
スプーさん、お名前を間違えて失礼致しました。(ミルルさんも御免なさい)

ヨーロッパ系の戦闘機はアメリカよりも機体規模が小さい傾向があるように思われます。(米軍は敵地に乗り込んで制空権を確保する、という運用を想定してますので)

すると必然的に搭載できるエンジンにも制限が出て、それに対する回答の一つがデルタ翼(翼面積が大きいので、翼面荷重が低くなり運動性が高まる)だったのでは?

ただ最近は、推力が7〜9トンのエンジンが比較的コンパクトに作れるようになったので、カナード・デルタと組合せ、高機動力、高運動性といういいとこどりの機体が可能になったのでは?

航空機はやたらと奥が深い世界なので、私の知識では表面的なお話しか出来なくてすいません。、
腰抜け外務省 | 2014/05/28 12:30 PM

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