北ミサイル発射でまたしても官邸の危機管理能力の無さが露呈
北朝鮮のミサイル発射の一報を受けて4月13日午前9時過ぎにUPしたエントリーで、私は「日本政府も何か、バタバタしてる感があります」と書きました。
バタバタしてると私が感じたのは、主に以下の2点からでした。
・アメリカや韓国ですでに「ミサイルが発射された」と報道されてるのに、同じ時間帯に流れたテレビの速報テロップは「日本政府は発射を確認していない」。
・日本政府の公式発表として最初に田中防衛大臣が「発射されました」と記者会見するまでに、すごく時間がかかった。
その後の報道を見てますと、やはりそのあたりが問題点として指摘されているようです。
■田中防衛相、袖を引っ張られるよう会見場を退出(2012年4月13日13時21分 読売新聞)
「ミサイル発射の情報」という午前7時55分頃の韓国メディアの速報を受け、防衛省詰めの報道陣は一斉に確認に走った。
「発射されたのではないのか」「黄海に落下物があったという情報がある」といった報道陣の質問に対し、同省担当者は「確認していない」と繰り返すばかり。その間、米CNNなどはミサイルは発射され、しかも失敗だったと伝えていた。
ようやく田中防衛相が記者会見をして発射を発表した時には、発射探知から43分もたっていた。「我が国への影響は一切ありません」と声を張り上げたが、記者から質問が飛ぶと、「それ以上の情報は分析中」と遮る事務方らにスーツの袖を引っ張られるようにして会見場を退出する姿はこっけいですらあった。
国民の安全確保に責任を持つ関係省庁はいら立ちを募らせた。警察庁幹部は「正確な情報はない」と繰り返し、「午前8時20分過ぎに官邸から発射情報がようやく伝わった」とぶぜんとした様子。同庁は情報を把握し次第、即座に全国の警察に伝え、警戒を呼びかける役目だ。別の同庁幹部は「準備は万全でも結果的に立ち上がりが遅れた」と話した。
海上保安庁は「発射報道」を受け、被害確認のために航空機や巡視船の出動指示を出したが、その直後に「我が国領域への影響はない」との防衛相発表があり、慌てて指示を取り消した。同庁幹部は「航行中の船などに被害が出ていたら、情報伝達の遅れが救助の遅れにつながったかもしれない」と指摘する。
発射を確認すれば運航中の航空機に注意を呼びかける国土交通省は午前8時4分、「政府としては事実を確認していない」との第一報を官邸から受け取った。危機管理担当者は「『事実を確認していない』では対応のしようがない。『発射した模様』くらいは伝えてほしかった」と話した。
発射当時、石垣島を取材していた読売テレビ「ミヤネ屋」の中山リポーターによれば、Jアラートや防災無線からの情報は全くなしで、住民や観光客はテレビの「発射されたらしいが日本政府は未確認」という速報で初めて事態を知ったと。
しかもそこから動きが全然なくて、特に近くにテレビやラジオがなかった人は、そもそもミサイルが発射されたのかされてないのか、発射されたとして今どこを飛んでるのか、もうどこかに落ちたのか、そういったことが一切分からなかったと。
発射から2時間ぐらい経って、ようやく防災無線の「ミサイルが発射されましたが、すぐに落下したのでこちらには影響は全くありません」的な放送があって、住民一同「え?そうなの?」とキョトン……という感じであったと。
宮古島でも似たようなことになっていたようですね。
■【北ミサイル失敗】頼みの「Jアラート」鳴らず 「情報あったら教えてください」 混乱の沖縄・宮古島(産経2012.4.13 10:13)
北朝鮮が人工衛星と称する長距離弾道ミサイルを発射した13日午前、ミサイルが上空付近を通過し危険物が落下する可能性があった沖縄県宮古島市で一気に緊張が走った。「Jアラートは鳴ってないですよ」「情報あったら教えてください」。情報が錯綜(さくそう)する中、市職員や連絡要員の自衛官が慌ただしく情報収集に追われた。
宮古島市役所が突然慌ただしくなったのは、午前7時45分ごろ。「Jアラートが鳴るかもしれない」「官邸が慌ただしいという情報があるようだ」。連絡要員の自衛官や政府の職員が慌ただしく行き交う。Jアラートの端末と防災無線の置かれた部屋に下地敏彦市長も入り、職員は防災無線の前で待機した。しかしその後「官邸の動きがなくなったようだ」との情報が入り、いったんは「誤情報」との雰囲気に。
ところがテレビのニュースが、「北朝鮮がミサイルを発射したと海外メディアが報道」と流し始めると、再び空気が緊迫。自衛官は携帯電話で「Jアラートは鳴ってないんですよ」「テレビのニュース見てる?」と関係各所と連絡を取り合ったが、「(Jアラートが)鳴らないと動きようがない」とテレビのニュースを食い入るように見つめた。一方で、午前8時過ぎに政府の緊急情報ネットワークシステム「Em−Net(エムネット)」から「発射は確認していない」とのFAXが流れるなど混乱は続いた。
その後、報道陣から「地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備されている基地で照明弾のようなものが打ち上げられたようだが」との質問も出たが、市は「確認できていない」と繰り返した。
その後、下地市長はテレビで藤村修官房長官の会見を見て日本への影響がないことを確認。「特別な影響は出ないということで安堵(あんど)している。市民らにもこの情報を伝え、通常通りの生活を続けていただきたい」と述べた。
ただ、肝心のJアラートが鳴らなかったことについて「不安だった。あれだけテストしたのに作動しなかったのかと思った」。「韓国と日本の情報になぜこれほど差が出るんだろうという気もする」と話した。
こういう時にどんな仕組みというか、どんな伝達方法でやりますよって取り決めになってたのか、私は詳しくは知りません。
が、政府内で情報伝達がスムーズに行かなかったことは間違いないようです。
<北朝鮮のミサイル発射を巡る動き>
7:40ごろ
防衛省、米軍からミサイル発射の早期警戒情報を受ける
7:50ごろ
韓国YTNテレビ、北朝鮮が発射と速報
8:00ごろ
韓国国防省、7時39分に発射と発表
8:00すぎ
政府、「発射の報道があるが日本としては発射を確認していない」と発表
8:15
米ABCテレビ、発射は失敗との米政府関係者の見方を報道
8:23
田中防衛相が記者会見。「7時40分ごろ飛翔体が発射され、1分以上飛行して、洋上に落下した模様」と発表
8:36
藤村官房長官が記者会見。「落下物などによる日本への影響は一切ない」と冷静に対応するよう国民に呼びかけ
8:40ごろ
韓国国防省、発射後、数分で分解したと発表
8:45
安全保障会議。野田首相が情報収集と国民への情報提供に努めるよう指示
8:45まで
総務省が沖縄県などと連絡をとり、被害情報がないことを確認
9:00
韓国が外交安保関係閣僚会議を開催
9:13
閣議
9:30
フィリピン、朝鮮半島沖に落下したと確認。ルソン島沖の飛行禁止区域を解除
9:50ごろ
韓国外交通商相、発射失敗を確認と発表
10:10
田中防衛相がルース駐日米大使と電話協議。北朝鮮問題での緊密な連携を確認
10:20ごろ
英ロ、深刻な懸念を表明
10:30
防衛省が緊急幹部会議
民主党の輿石幹事長ら幹部が対応を協議
11:05
2回目の安全保障会議
(日経新聞2012/4/13 11:14より)
結局、テレビに張り付いてた私みたいな人間が、最も早く情報をゲットできてたってこと?
何のためのJアラート、防災無線なんでしょうか?
てか、何のための「政府」?
前回、2009年のミサイル発射の際に誤報を打ってしまったから、それで発表が慎重になってしまったんだという擁護論もあるようです。
それにしてもですよ、日本政府が「北朝鮮から何らかの飛翔体が発射された」という情報を得たのが7時40分頃でしょ?(藤村官房長官の会見による)。
そこから田中防衛大臣の記者会見まで、何と40分以上ものタイムラグですよ。
それも突然のことならともかく、ずーっと前から発射は予告されてて、野田首相や田中防衛大臣以下、「万全の態勢で臨みます」と述べていたにも関わらずですよ。
さらには、「不意を突かれた」なんて言ってる“日本政府関係者”もいるそうで、もう怒り心頭ですわ。
「日本政府関係者は、アメリカの情報などから13日の発射の可能性は低いとみていて、今回は完全に不意を突かれたと漏らしています」ですと(テレ朝04/13 11:50)。
あんた無限大の平和ボケやろ(-.-#)
平和ボケを∞で囲ったるわ。ほれほれ!
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
∞平和ボケ∞平和ボケ∞平和ボケ∞平和ボケ∞平和ボケ∞平和ボケ∞
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
……すみません。
怒りのあまり、つい我を失ってしまいました<(_ _)>
今回の公表遅れについて、どのメディアもほとんど例外なく、官邸に原因があると報道してますね。
曰く「官邸で情報が止まった」「官邸が事実確認に手間取った」……。
藤村官房長官は「検証する」と言ってますが、尖閣衝突事件しかり、福島第一原発事故しかり、情報隠蔽体質の民主党政権のことです。あまり期待はできませんね。
ちなみに、“日本政府関係者”によると、防衛省が置く10カ所のレーダーで、7時45分から54分までミサイルが飛行していたことを確認しているそうです(テレ朝04/13 09:08)。
また、7時43分頃、宮古島の自衛隊基地からは信号弾が打ち上げられていました(日本テレビ4月13日(金)9時25分)。
防衛省や自衛隊のせいにして責任逃れするのは無理ってことでOK?
↓クスッと笑ったあとで、思わず溜息が出てしまった書き込み。
151 名前:名無しさん@12周年
投稿日:2012/04/13(金) 13:23:07.43 ID:lCoBWxbJ0
韓国「発射した」
中国「発射した」
米国「発射した」
自衛隊「発射した」
官邸「わかんない」
335 名前:名無しさん@12周年 メェル:sage
投稿日:2012/04/13(金) 16:23:11.53 ID:43aFHCes0
韓国「発射した」
中国「発射した」
米国「発射した」
自衛隊「発射した」
官邸「消費税増税」
閑話休題。
今回の政府の対応について、当日(4月13日)の関西テレビ「アンカー」で、青山繁晴さんが電話でコメントされてました。
生ではなかったのでかなり編集されてると思いますが、いちおうメモっとくとこんな感じ。
「これは、今回も遅かったね、ごめんなさいで済む話じゃなくて、場合によっては、総理の進退につながるほどの話であると、考えています。
しかも、午前8時3分の日本政府の発表ぶりというのが、『一部報道では出ているが』と、つまり、報道に先行されてることを、自らのんきに認めたような発言になっていて、まあ、ずいぶんといろんな角度から、日本政府の危機管理能力はここまで落ちているのかということに、愕然としてます」
「今回のミサイル発射失敗の今後の影響で一番大きいのは、北朝鮮の金正恩体制が不安定になるということです。
北朝鮮が異例の早さで失敗を認めたこと自体が、もう、国内での異変を物語っているといえます。
大きなチャンスの扉が開いているということであって、金一族の支配体制が続く限りは、拉致問題の解決も含めて、日本によって良い方向に進むことはありませんから。
金一族の独裁を終わらせて、北朝鮮国民の苦しみも終わらせるようにすべきだという発信を、まずしなきゃいけない」
その青山さんですが、4月11日の「アンカー」では、北朝鮮のミサイルより重大な問題があるとして、このような解説をされていました。
◆北朝鮮のミサイル発射は、政治ショーに過ぎない。日本にとって軍事的な脅威に変化はない。なぜなら、日本を狙うミサイルの発射実験と実戦配備はもうとっくに終わっているから。
◆ミサイルよりも重大な問題は、日本と北朝鮮の両政府が、終戦直後に旧ソ連に抑留され北朝鮮に移送後死亡した旧日本兵らの遺骨返還について、去年の11月頃から協議をしていること(実際に報道もされました)。
◆北朝鮮は、拉致問題を旧日本兵らの遺骨返還にすり替えて、米朝間の遺骨返還(朝鮮戦争で死亡した米兵の遺骨返還)と同じにしたいと考えている。北朝鮮がこの狙いを貫いていけば、生きている拉致被害者まで殺害する可能性も否定できない。
◆中井洽元拉致担当大臣の昨年からの北朝鮮側に対する動きはこれに乗っかった裏交渉であり、野田首相もこれを容認していると北朝鮮は受け取っているとみられる。北朝鮮のミサイルよりこっちの方が重大問題。ミサイルの大騒ぎの報道に騙されないように。
詳細は拙エントリーより4月11日放送「アンカー」起こしをご覧下さい。
確かに、ミサイル報道に必要以上に煽られてはいけないと思います。
本当は私も今日は、別の話題でエントリーを立てようと当初は考えてました。
ただ、今回のことは北朝鮮の脅威というよりはむしろ、日本の危機管理に大きく関わっている問題なので、あえて1本エントリーをまとめさせていただいた次第です。
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Comments
完全に情報を伝えて迅速に国民に公表していたら、政府中枢におられる散々不適切と言われる大臣が意気揚々としゃべらんでいい国家機密を語り出すのが目に浮かびます。それに比べれば・・・
2009年 麻生内閣時、ミサイル誤報でのマスコミ報道と比較
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090404-OYT1T00805.htm?from=navr
誤報と報道しないのはどちらがマズイのでしょう
原発再稼働・消費税増税の理屈もこの内閣が言う事全て嘘臭い気がします
http://www.nicovideo.jp/watch/sm17533937
(上記の動画はYouTubeでは見つかりませんでした…)
アメリカの観測では飛翔体が途中で消えてしまったこと、日本は発射基地まで電波が届くレーダーがないことが理由のようで
す。
もちろんこれは発車直後の憶測も入っているようですが。
日本は偵察衛星は写真撮影を行う衛星だけで、熱源探知をするような早期警戒衛星は所有していませんしね…
自衛隊が探知できなかったかどうかですが、FPS5レーダー(通称ガメラレーダー)は立地的に探知できる位置にあった、という話もありますが。(目標の高度にもよる)
また、海上自衛隊のEP3電子偵察機やAWACSも出張っていたはずですので、レーダー、若しくは発射時の赤外線を探知していた可能性は高いのでは?と勝手に想像しています。
また、アメリカは3機保有するRC-135コブラボール電子偵察機を、3機とも沖縄に展開しましたから、これはほぼ確実に目標を捕捉し、ほぼリアルタイムで自衛隊には情報は伝わっていたでしょう。
ただ、ではその情報を日本政府とどれだけ共有していたかどうかとなると、大いに疑問です。
まあ、あれだけアメリカから安全保障問題における信頼を棄損することをやっていれば、自業自得というか、信頼されなくて当たり前でしょうね。
重要な情報は自衛隊とだけ共有すれば良い、という判断が為されても不思議は無い様な気が・・・・