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「アンカー」オバマ“核廃絶”は実現可能か?

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■8/12放送「アンカー」青山繁晴の“ニュースDEズバリ”

オバマの“核廃絶”演説に広島・長崎の市長も期待表明・実現可能?青山ズバリ

090812-15kakusan.jpg 日本の核武装には絶対反対の青山さんですが、オバマ大統領のプラハでの「核なき世界」演説については非常に懐疑的です。

 なお、先週に続き今週もメインキャスターの山本浩之キャスターは夏休み。岡安譲キャスターが代わりを努めています。で、もう一人、先週に引き続き林弘典キャスターも同席。

 間投詞(「あの」「その」など)や言い直しもできるだけ再現しました。但し、細かい相づちなどは支障のない範囲でカットしています。
 画像はYouTubeで拾ったビデオからキャプチャさせていただきました。


 内容紹介ここから____________________________
 
岡安譲
「青山さんのコーナーなんですが、えー、先週はマニフェストでした。今週はどんな話題をしていただけるんでしょうか」

青山繁晴
「はい。あのー、今週、予感されてる方も、これかなと思ってらっしゃる方もいるんではないかと思うんですけれどね。というのは、この1週間考えていただくと、毎年のことなんだけども、やっぱり重大なことありましたよね。それはあの、皆さんご承知の広島、長崎の原爆記念日であって、64回目の夏がやってきたわけですけれども、今年の広島、長崎の平和記念式典は、もう過去とは全然違う大きなことがありましたよね。それは今年の4月5日にチェコのプラハという所で、オバマ大統領が核なき世界ということを、世界最大の核大国のアメリカが核なき世界ってことを言ったと。で、それについて、たとえば広島の秋葉市長などはですね、もう絶賛する、もうオバマさんと手を組むことが一番なんだという雰囲気を非常に強く出された。で、これは実はその、普通の国民の方々、あの、それは広島、長崎、被爆地の方々もほんと含めてだと思いますけど、普通の国民、つまり豊かな常識、健全な常識を持ってる国民こそ、大丈夫なのかなって疑問をほんとは持たれたと思うんですよ。そんなにオバマさんを持ち上げて、それが本当にその、被爆者の願いである核なき世界にほんとに結びつくのか。それほどオバマさんの言ってること、当てになるのかってことを、みんなほんとは思われたと思うんですよ。ところがね、なかなかね、そういうふうに言いにくいんですよ。こういうその、美しい言葉で語られることっていうのはですね。であると同時にその、すごく核という大事な問題なんですね。だから今日のキーワードはあえてこうさせていただきました(フリップ出す)」

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岡安譲
「『美しいバラ』」
 
青山繁晴
「はい。あの、これは昔からよく言われることですけど、バラは美しければ美しいほどトゲがあるんだと。美しいバラにはトゲがあると。オバマさんのおっしゃるような非常に美しいことの影に実はトゲがあって、で、そのトゲは手を刺してチクリと痛いっていうだけじゃなくて、核の問題に関わることですから、これはその、皆さんの中で多くの方がほんとに大丈夫なのかなと思われた疑問を、だからこそ、真っ正面から今日は具体的に見ていきたいと思ってます」

岡安譲
「はい。コマーシャルのあと青山さんに解説していただきます」

(いったんCM)
 
 …………………………VTR開始…………………………

 日本に原爆が投下されてから64年。
 今年、広島と長崎の市長が平和宣言の中でオバマ大統領の支持を表明した。

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【広島市 今月6日】
広島市 秋葉忠利市長
「オバマ大統領を支持し、核兵器廃絶のために活動する責任があります」

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【長崎市 今月9日】
長崎市 田上富久市長
「(オバマ大統領の)プラハ演説への支持を表明する取組みを始め、核兵器のない世界への道をともに歩んでいこうではありませんか」

 核兵器廃絶を願う広島、長崎の思い。

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【チェコ・プラハ ことし4月】
オバマ大統領
「核兵器のない平和で安全な世界を追求すると、信念を持って明言します」

 核保有大国の大統領が高らかに語った核廃絶への道。

 しかし現実には北朝鮮による2度目の核実験が行われ、イランでも核兵器開発の疑惑が持たれるなど、新たな核への緊張は高まっている。

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 広島、長崎の願う「核のない世界」が実現する日は来るのか。
 
 …………………………VTR終了…………………………

岡安譲
「オバマ大統領のプラハでの演説というのは、もちろん広島、長崎の被爆地の皆さんにとってはもちろんですが、ま、核廃絶を願う全ての人にとって力強いメッセージだったとは思うんですが、ただ、その美しいバラ、その核廃絶という花を咲かせるためには、とってもすごーい道のりのトゲが待っているんだということなんですが、青山さんに詳しく解説していただきます」

青山繁晴
「はい。あの、今、VTRにもちょっとありましたけどね、その、4月5日、プラハでオバマさんが演説したその翌月の5月に、林ちゃん、何がありましたか」

林弘典
「はい、あ、何ですか?」

岡安譲
「過去最速の質問ですね、これは……(一同笑&ざわざわ)」

青山繁晴
「4月5日にオバマ大統領があの、プラハで演説をして、その翌月、5月に何がありましたか」

林弘典
「核実験」

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青山繁晴
「その通り。よかった(一同笑)。最初何かちょっと凍りついた感じなんですけど(一同笑&ざわざわ)。5月に北朝鮮が2度目の核実験をしました。さっきあの、VTRでもありましたけれども。だからさっそくオバマさんの核なき世界っていう演説に対して、挑戦が始まったとも言えるんですけどね。しかしその、北朝鮮のことだけじゃなくてですね、この広島、長崎の被爆者の願いにこれがつながるのか、ひょっとして逆作用が、逆効果になったりしないのかってことを、僕はすごく心配してるわけなんですね」

村西利恵
「逆効果ですか」

青山繁晴
「で、あの、まずちょっとお話ししておきたいんですけど、あの、実は僕、新人記者の時代から、つまり外交・安保とか専門の仕事をする前からですね、広島と長崎にもう訪ねていきまして、あの、全部正確に数えたわけじゃないけども、広島には30数回、長崎には20数回行ってるんですね。あわせて60回以上行ってますけれども、そこで多くの被爆者にお会いしました。たとえば忘れられないのは、長崎の荒れ果…、ごめんなさい、あの、ありのままに言うけど、荒れ果てた一軒家に被爆者のおばあさんが一人で住んでおられて、で、その時にね、まさしく、どうして核なんか作るんかのうという話をされましたよ、その、そんなものを作られたために、その、自分たち、普通の生活者がずーっと生涯ですね、家族を失い、そのおばあちゃんもあの、今、健在かどうか正直分かりませんけども、その、後遺症にずっと苦しんできたわけですよ。だから、あの、僕は普段この番組でも何度も申しました。その、日本も核武装する権利はあって、自然権として主権国家としての権利はあってですね、議論をすることによって抑止力になったり、日本も被爆国だからと言って最初から持っちゃいけないってことになりませんと。ただ、同時に僕は日本の核武装にあくまで生涯かけて反対しますと言ってきたのは」

村西利恵
「それはいつもおっしゃってますね」

青山繁晴
「実はそういうその、おばあさんを見ててもですね、核兵器というのはほんとに武士道に反するものであって、何にも戦争と関係のない、武器なんか持つことも関係ない人をこうやって生涯にわたって、子々孫々の代まで苦しめるってことを現場で見てきたからなんですね。だから従って今日のお話もですね、その、被爆者の本当の願いにオバマさんの話っていうのは、演説っていうのはほんとに有効なのかということに焦点を絞って考えたいんですけど、そのためにはまず8月6日の広島で行われた今回の原爆、平和記念式典での秋葉市長の平和宣言っていうのをちょっと見ていただけますか」

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村西利恵
「はい。抜粋です。『私たちはオバマ大統領を支持し、核兵器廃絶のために活動する責任があります。この点を強調するため、世界の多数派である私たち自身を「オバマジョリティー」と呼び、力を合わせて2020年までに核兵器の廃絶を実現しようと世界に呼び掛けます。We are the Obamajority. Together, we can abolish nuclear weapons. Yes, we can.』と、最後は英語で…」

青山繁晴
「はい。ま、だから世界に呼び掛けるってことで最後、英語で言われてるわけですけど、Obamajorityっていうのは、僕も最初聞いた時ちょっとギョッとしましたけど」

村西利恵
「造語なんですね」

青山繁晴
「ま、造語ですね。前半オバマさんで、で、こっち見たらmajorityになってるわけで、その、オバマさんを支持する人が多数派なんだと。ま、逆に言えば、僕のようにやや批判的に見てる人は少数派だってことにもなるんでしょうが、その、こういうふうに呼んでるってことは、もうオバマさん絶賛ですよね。まるで世界政府の大統領になったかのような感じもするわけですが、そのあとに、その、私たちは核兵器を廃棄することはできますと。abolishっていうのは廃棄する、捨てるってことですね。そして最後にYes, we can.と。あの、大統領選挙でよく聞いた言葉です。で、オバマさんもプラハ演説の中で1回だけこのYes, we can.っていうの使ってますけど、しかし、オバマさん自身もあんまり使わなくなってるんですよ」

村西利恵
「最近は」

青山繁晴
「ええ。つまりもう中身が問われることになってるから。で、それをあえて秋葉さんはYes, we can.まで使われて出されたってことは、これ全体の印象としては本当に一種のオバマ礼賛だと思うんですね。で、じゃあその肝心の4月5日のオバマ演説ってのはどうだったかっていうのを、ちょっと見ていただけますか。はい」

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村西利恵
「『私はアメリカが核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言する』」

青山繁晴
「はい。これあの、プラハ演説ってのは非常に長いもので、あの、前半は核と違う話が延々と続いてるしね、あの、後半の核になってからも非常に話が長いんで、これもうほんとに抜粋中の抜粋ですけれども、しかしこれは歴史に残る一言であることは間違いがないんですよ。その、アメリカ合衆国っていう核大国が、核のない、つまり1個も核がない世界をちゃんと追求していくんだってことを言ったっていうのは、もちろん画期的なことです。で、なおかつオバマさんはそのあとに続けて、自分たちアメリカは核の保有国だけじゃなくて唯一核を使った国として、こういうことを進めていく道義的責任があると言ってますね」

一同
「はい」

青山繁晴
「で、道義的責任っていうことはその、僕ら当然着目したんですが、但しこれは誤解なきように。広島、長崎に原爆落として悪かったとは言ってないんですよ。一言も言ってません。そこに道義的責任があるんじゃなくて、使った国として、これから核のない世界を作るのに道義的責任があるって言ってるわけであってですね」

岡安譲
「確かに、行動することに道義的な責任があるってことを言ってますよね」

青山繁晴
「ええ。これから自分たちがやることに道義的責任があるって、その、核のない世界を作っていく努力をすることには道義的責任があると。くれぐれも誤解なきように。ここもその、美辞麗句にごまかされないようにしてほしいんですね。広島、長崎(に落としたこと)は悪かったとは一言も言ってません。だからオバマさんは広島、長崎に現れることは今回もなかったわけですね。広島、長崎からずいぶん被爆者、被爆者の方の声としてリクエストにあったけど、実は訪れることはなかったと。そしてですね、この、そのオバマ演説の中について、その、大事な点がもう一つあってですね。あの、さすがに優秀な大統領だから、こういう言葉だけで終わらずに具体的な道筋という言葉を使ってですね、具体的にこうやるんですってことを、あれこれあれこれ出してあるんです。で、そこにはまあ専門用語も出てくるんですけど、それは専門用語は難しいから、すごくその、ざっくばらんにまとめると、こういう感じかなと思うんですね」

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村西利恵
「まずアメリカ、ロシアで核兵器を減らし、世界の核兵器ゼロにつなげる」

青山繁晴
「はい、これあの、見ただけでも、うーんと皆さん思われると思うんですよ。つまりアメリカ、ロシアで核兵器を減らしていくと。で、それは今までもアメリカ、ロシアの間で交渉してたわけですね。で、それがどうして世界の核兵器ゼロにそのままつながるのかなあと」

村西利恵
「そうですね。まずここで減らしてるだけで、なくすわけではないですよね」

青山繁晴
「そうです。そうですし、あの、仮にアメリカ、ロシアが万々一、あの、今から説明しますけどゼロにしないけども、仮にゼロにしたとしても、北朝鮮や中国の核はそれでなくせるっていうのはどういう仕組みなのかなと

岡安譲
「核保有国はアメリカ、ロシアだけではありませんからね」

青山繁晴
「その通りですね。だからちょっと不思議な話なんですが、まず、でもね、一番の問題点は今、村西さんが少し触れたね、その、減らすということだけじゃないですか。これは実は正しい。実に正しくてですね、あの、かつて世界中に3万発の核兵器あった時代があったんですよ。で、今はずいぶん減りました。減りましたけど、それで世界が安全になったとは誰も思ってないでしょ?」

一同
「ああー」

青山繁晴
「つまりはっきり言うと、数の問題だけではとても言えないわけですね。で、今現在どれぐらいあるかというとですよ、あの、いちおうストックホルム国際平和研究所ってスウェーデンの研究所がいちおう権威あるとされててですね、ま、推測も含めてそこがカウントしてる数はですね、だいたい今、ロシアが4800個ぐらい持ってて、で、アメリカがだいたい2700個ぐらい持ってると。で、これをまあその、お互いすごくたくさん持ってるから、だんだん減らしていくのは、おそらく減らしていけると思うんです。今までもその交渉やってるから。しかしそれはあるところで必ず止まるんですよ。あるところって林ちゃん、どこですか」

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林弘典
「はい。えっとあの、たぶんその、他の、アメリカとロシア以外の国のところまでは落とさないっていうことなんですか」

青山繁晴
「うん。これは非常に正しいですが、その国って岡安さん、どこですか」

岡安譲
「中国じゃないですか」

青山繁晴
「その通りですね。中国は今、その、ストックホルム国際平和研究所によると、186発持ってるわけですね。で、この中国はこういう話に全然乗っかってない。そもそもオバマ演説に反応してるのはこのロシアだけであって、国家として。中国もフランスもイギリスも、そういう核保有国は反応してないんですね。イスラエルもですね。で、えー、特に中国は全然それに関心持つ気配もいちおう見せてない。もちろん関心あるでしょうが、応じるはずはない。ということは、中国は186発の核兵器は減らすつもりはないわけだから、その、中国の核弾頭数を、から、下回るわけにいかないんですよ。たとえば5倍以上のものは普通で言うと持たなきゃいけないってことになるから、800とか900とか1000とかは、あの、アメリカもロシアもそれぞれ持ちたいってことになるから、これは実は減っていくだけであってゼロにはならないと。アメリカ、ロシアも減らすだけなのに、どうして世界の核兵器がそこでゼロになるのかってことは、これ全然つながらない話になるんですね。それからもう一つ、オバマさんが示した道筋っていうのはこうなんです。はい」

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村西利恵
「新たに核兵器を持とうとする国には厳しい『規制』を作って抑える」(パネルは『規則』と表示)

青山繁晴
「はい。これもあの、まず根本的な問題として、今、世界政府があるわけじゃないから、その、規則を作って抑えるっていうだけだったら、たとえば今の北朝鮮だって、今のような核開発はなかったんじゃないかって話になりますし」

岡安譲
「そうですね、うん」

青山繁晴
「それからあの、プラハ演説を読み込むとやっぱり大きな疑問、これすでにあの、世界から声が上がってますけどね、おかしいと思われるのは、イランのことを特にあの、何度も何度も書いてるわけですよ、言ってるわけですよ、オバマさんはね。で、イランがもし核開発をしたら厳しい規則を受けることになりますよと言ってるけども、しかしイランの核開発っていうのは、基本的にイスラエルがもう核を持ってることを頭に置いてるから、それを対抗するために核開発やってるわけでしょ。ところがイスラエルに対して、もうすでに、あの、持ってるとは言ってないけど、世界の誰もが持ってるの分かってるイスラエルに対しては、どういう規則を当てはめるのかっていうのがないんですよ。ということは、オバマさん、すごく新しいこと言ってるようでいて、実は今までのアメリカのやり方、今までのアメリカの国益追求をね、その、アメリカにとっての世界のあり方とそんなに変わってないんじゃないかということになるわけですね。で、そうすると今までのことをその、オバマさんが自ら示してくれた道筋も含めていうとですよ、オバマさんのその核なき世界って演説には本当の目的が別にあると。はい。それをちょっと出していただけますか」

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村西利恵
「『核なき世界』宣言の本音は、核兵器の維持コストを削減。そしてテロリストの手には渡さないと」

青山繁晴
「はい。この本音と書いたのは、その、本当に目指してるのはね、それがずーっと、100年も200年もあとは核なき世界を目指してると、その、思ってるかもしれない。自分の生きてる間にはできないともおっしゃってましたから」

村西利恵
「おっしゃってましたね」

青山繁晴
「演説の中でね。しかし当面はほんとはこういうことを言ったってのは、政治的な目的があって、それは本音であって、一つは核兵器の維持コストっていうのは実は大変なんですよ。で、これは日本のように核兵器を持ってない国にはやや思い込み、誤解があってですね、たとえば評論家の方でも日本は核兵器さえ持てば、今の防衛費がずっと安くすむんだという方もいらっしゃるんですよ。講演会などでおっしゃってる方いますが。実際の核の現場を訪れてみますとね、僕はロシアへは行ったことないんですけども、その、アメリカの核の現場行ってみると、もう維持コストは大変なんですよ。その、維持・管理が大変な上にその、人材も一番良い人材を投入しなきゃいけないし、核兵器って意外に劣化が進むもんだから、新しく更新していかなきゃいけない

岡安譲
「へえー」

青山繁晴
「持ってるだけで大変なんですよ。ところがアメリカは去年9月からの金融危機でカネがない。ロシアもその、天然ガスとか油の値段が下がってしまってカネがない。だからそこで実はあの、利害が一致するから、とりあえず美しい言葉で飾ってるけども、要するに維持費を減らしたいっていうのが本音の目的なんですよね」

一同
「うん」

青山繁晴
「それからもう一つ、このテロリストの手に渡さないっていうのは、その、イランとかその、それから北朝鮮も含めてアメリカが神経質になるのはですね、そこがイスラエルと違うところっていうのはアメリカの本音なんですよ。というのはイランがもし核開発していったら、これをテロリストに売るんじゃないかと。で、テロリストとアメリカは、要するにアメリカは勝てないでいるわけですね、未だね。イラク戦争、結局勝てなかったでしょ。だからこれアメリカだけでできないから、テロリストの手に渡さないためにはアメリカの力だけじゃなくて、世界中の力を借りなきゃいけないから、だからこういう世界が反論できない言葉で綺麗に表現してみせたと。それがオバマ演説のいわば正体ではないかなと思うんですね。で、このことについて実はアメリカの国内でも、オバマさんのいわば支持層から疑問の声が上がってて、それはこれなんですね。はい」

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村西利恵
「6月10日のNewsweek誌ですが、『最も危険なのは、オバマが自分自身の言葉にとらわれてしまうこと、そして言葉が多大な期待を生んでしまうことだ』と」

青山繁晴
「はい。あの、Newsweekっていうのは決して保守ではなくて、どっちか言うとリベラルの方なんで、その、オバマさんに近い陣営だと思われますけどね、これは実はね、このオバマさんがその、プラハでの演説以外にエジプトのカイロで演説して、アメリカとイスラム世界の和解って美しい言葉を言ってですね、たまりかねたように出てきたこれはあの、論評であってね、すごい危険だと。最も危険なのはオバマさんが自分の言葉にとらわれ、つまり酔ってしまってですね、そしてそういう綺麗事ばっかり言う政権になってしまうんじゃないかと。その裏で実は悪い事態が進んでいくんじゃないかってことがとても心配だし、そして言葉はこれほんとに、このあとには、世界に対して多大な期待を生んでしまうんじゃないかと、それはたとえば広島、長崎での今回の平和宣言にも表れてしまってるんじゃないかということなんですね。で、そして、えー、これはたとえば日本の外務省でもリアルに問題を考えてる人がいます。はい、ちょっと出していただけますか」

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村西利恵
「『アメリカが核兵器を削減すれば喜ぶ国が多い。日本には2つの悩みが生まれた』」

青山繁晴
「これは、アメリカが核兵器の数を減らしていくと喜ぶ国があるんだよと。これは複数なんですけど、この話はちょっとあとでさせていただくとしてですね、これとも関連して、今現在、オバマ演説のおかげで日本にはすでに2つ悩みがもうできましたと言ってるんですね。で、その悩みっていうのは何でしょうか。はい、出していただけますか」

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村西利恵
核を削減すれば、かえって核拡散を招く

青山繁晴
「はい。えー、これが悩む日本の1つ目なんですね。実はもう1つあるんです。もう1つある。これもこのあとでお話しするんですが、しかしこの段階でですね、皆さんにあえて問いたいキーワードが1個あってですね、今日の2つ目のキーワードは実はこれです(フリップ出す)」

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村西利恵
「ここでズバリキーワードは『YES, JAPAN CAN』と。どういうことですか」

青山繁晴
「はい。これは『YES, WE CAN』じゃなくて、『YES, JAPAN CAN』。日本にしかできないことがあると。日本にしかこのオバマ演説に関連してできないことがある。悩みがあるからこそ日本にしかできないことがあるはずです、というお話をしたいんです」

村西利恵
「はい。この核兵器の削減が核拡散になぜつながるのか。CMのあと詳しく話していただきます」

(いったんCM)

岡安譲
「CMの前に青山さんに日本の悩みとしては、核の削減が核拡散を招くということでした。いったいなぜなんでしょうか。そして『YES, JAPAN CAN』、いったい日本には何ができるんでしょうか。解説をお願いします」

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青山繁晴
「はい。この核を削減ていうのはもちろん、アメリカとロシアの核が削減されていけば、かえって核の拡散を招くんじゃないかと、招くだろうと思ってる。これ日本の悩みと書きましたが、さっき外務省の話、出しましたけどね、外務省だけじゃなくて防衛省とか、たとえば内閣官房の中の専門家でも同じ意見で、実は僕も同じ意見なんですね。それはどうしてかというと、理由は極めてはっきりしてるんですよ。はい、出していただけますか」

村西利恵
核兵器の数が減れば1つの核兵器の重みが増す

青山繁晴
「はい。これはあの、いつもこの『アンカー』で申しました通りね、たとえば核問題だからといって、その、専門用語を使わなきゃ分からないとか難しい話じゃなくて、これあの、人間のやることですから、結局、世間の常識と根本的には同じなんですよ。核兵器をその、たとえば4700とか2700とか、ね、4800とか2700持ってる国がどんどんどんどん減らしていけばですよ、他の国の数少ない核の重みがそれは当然増していくことになるじゃないですか」

村西利恵
「はあー」

青山繁晴
「で、それはあの、たとえばもっと具体的に言うとですよ、たとえば北朝鮮は今、5つか6つの核爆弾しかなくてですね、で、しかもはっきり言うとボロい核だと思われますよ」

村西利恵
「ボロい」

青山繁晴
「ええ。で、その値打ちが相対的に当然上がってきますよね。で、その、北朝鮮の様子見てたらですよ、今、核を持ってない国でも、たとえば1個でも2個でも、それから技術的に低い物でも、その、核兵器を持つことの意味がこれでぐっと上がるわけですよね」

岡安譲
「確かにそういう野心を持つ……」

村西利恵
「持てば話し合いに持ち込めるとか……」

青山繁晴
「そうです。北朝鮮は今あの、核兵器だけを交渉材料にしてるわけですからね。だからアメリカ、ロシアの数を減らしていくと、平和に近づくんじゃなくて、そういう小さい国々が少しでも核兵器を、1個でも2個でも持とうってことに必ずつながっていくわけですね。だから当然こういうことになるんですが、はい」

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青山繁晴
「核拡散時代へとなるんですが、もう一つ大事なことは、この核の拡散ていうのはね、いわばオバマ演説までは、あくまで国の話だったんですよ。ところがオバマ演説をきっかけにこれ、テロリストまで含むことになっちゃったんですね。ということは、1つ1つの核兵器の核爆弾の重みが増すわけですから、当然値打ち、価格も上がっていくわけで。その、イランであれ北朝鮮であれ、テロリストに売りたいっていう欲求は高まっていくし、それからオバマさんがわざわざテロリストに核渡ったら、困るんだってことを言ってしまったから、テロリストの側は高くても買いたいってことになるわけですよね」

一同
「うーん」

青山繁晴
「だからこの核の拡散という言葉自体もですね、国家からテロリストまで広がるっていうね、これはあの、美しいバラのトゲとしては、本当にこれは深いトゲになりかねないってことなんですね。で、それからもう一つ日本の具体的な悩みとしては、これがあります。はい、出して下さい」

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村西利恵
核の傘がなくなる

青山繁晴
「はい。これは今どうして、日本は自然権として核武装の権利があると、政府は国会で何度も公式に答弁してるのに、どうして日本、核武装しないかと。非核三原則、特に1番目2番目ね、作らない、持たない、があるかというと、アメリカがいざとなったら核の傘で守ってくれるからってことなんでしょ。しかしオバマさんはアメリカもう核はやめちまうって言ってるわけでしょ、いちおう演説では。それ傘がなくなるわけですよね。そうすると、まさか2年3年先はともかくとしてですよ、20年30年先で、たとえば秋葉市長は2020年までに世界の核をなくすとおっしゃってるけど、そうやって2020年とか30年とかなれば、なるほど、むしろその時に中国がたとえば核兵器を1発も持たずに全部捨てましたと、それ誰かが想像できますか、残念ながら」

村西利恵
「あり得ない……」

青山繁晴
「まともに物事、まともに僕たちの子々孫々の運命考えたら、それは今は少なくとも、とてもじゃないけど考えられない。その時代考えると、ああ、もしオバマさんの言ってることが本気ならば、核の傘がなくなっちゃうんだから何が起きるかというと、日本核武装につながるってことになるわけですよ。だから麻生政権、麻生政権じゃなくても日本政府は、オバマ演説に対して何のコメントもできないでいるわけですね。その広島、長崎の麻生首相の話もですよ、ラクイラのサミットで初めて核なき世界って言葉使われたと言ってるけど、オバマさんていう言葉は一言も使ってないわけですよ。要するにこれは日本にあの、巨大な矛盾を押しつける話になっててですね、これは日本としたら非常に悩むことになってるし、もう現在悩みが始まってるわけですよ。しかし悩みが始まってるからこそ、こういう良い機会が活かせる。はい、出して下さい」

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村西利恵
「それが、11月に来日予定のオバマさん」

青山繁晴
「はい。えー、11月中旬頃ですね、今の調整では。オバマさんの初来日することに、もうそれは来ること自体は決まってます。そして今まで世界はこのオバマの核演説に対して、良いですねーっていう、こうね、一般的な礼賛だけしてて、さっき言った通り、中国はじめとして核保有国がこの演説をどうとらえるのか、どこも何もやってないわけですよ。日本、日本が被爆国としてまさしく一番オバマさんに迫る権利があるわけですね。あなたの言ってることはトゲが実は隠されてんじゃないか、その心配についてここでね、具体的にもっとはっきりと分かりやすい道筋を出せということを要求できますから、だからYES, JAPAN CAN.なんです。日本だけができる。あの何十万人もの犠牲者をもう日本としてオバマさんにそれを迫ることができるし、それから本当はですよ、まだ、今からだと3カ月以上ある上にですね」

村西利恵
「そうですね」

青山繁晴
「総選挙終わっていかなる形が、政権ができてからも2カ月あるわけでしょ。そしたらこの時に、11月にも広島、長崎に行きなさいよということも求めることができる」

村西利恵
「オバマさんに対して」

青山繁晴
「オバマさんは今のところその気は全然ない。むしろね、僕に伝わってきてるのは、アメリカ警戒してるんですよ。8月6日、8月9日に広島、長崎に来いと言われたから。どうして警戒するかというとですよ、オバマさん行ったらアメリカ国内でもう火を吹くような議論になるわけですよ。アメリカは未だに広島、長崎に原爆投下したのは正しかったと言ってる人が、ほんとにそれこそマジョリティーなんだから。だからオバマさんにほんとにやる気があったらですよ、11月に広島、長崎に行けるはずです。だから、それを迫りましょうということなんです。これはその、僕たち有権者とそれから、あの、次にいずれにしろ出来るであろう新政府と両方、手を組んでやることだと僕は思ってます。はい」

岡安譲
「あの、まあトゲがあるにしてもですね、現職のアメリカ大統領が核の廃絶を訴えたというのは、もうないわけですよね」

青山繁晴
「その通りです」

岡安譲
「そしてオバマさんと、それから私たち日本国民の究極のゴールっていうのは、やっぱり一緒じゃないですか。その方法論は違えども。だから青山さんのおっしゃったように、確かに11月、何としてでも広島、長崎に行ってもらって、そこはもう真摯に真正面から話し合いたい……」

青山繁晴
「そうです。そうです。だから僕はさっきのコーナーの途中でもね、あの、歴史的な宣言であることは間違いないと申しましたね。だから、礼賛してちゃ駄目なんですよ。そこを具体的に突っ込んでいくことが大事なんで、それをやりましょうということです」

岡安譲
「はい、分かりました。ありがとうございました。以上、青山さんの“ニュースDEズバリ”でした」

 ____________________________内容紹介ここまで


 もちろん世界から核兵器がなくなるに越したことはないんですが、現実的にはほとんど不可能ですよね。
 みんなが「いっせーのーせー!」でポイッと同時に全部捨てるなんて無理ですから。たとえ自分は捨てる気でいても、「他の奴らは捨てるふりして実は持ち続けるんじゃないか」という疑念は払拭されないわけですから。

 核兵器を持てば軍事的に有利になるし、国際社会における発言権も増します。つまりその国の国益にかなう。経済制裁されて一時しんどくなったとしても、インドやパキスタンみたいに結局なし崩しに認めてもらえるとなれば、「我も我も」ってなっちゃいますよね。

 こういう核のいわば優位性が存在し続ける限りは核廃絶なんて無理でしょうし、さらに日本は今、日本を敵視する隣国を抱えているという現実があります。
 そうである以上、日本も核武装を考えざるをえないのではないか?最低限、議論はしておくべきではないか?議論するだけでも牽制になるわけだし……というのが私の今の考えです。

 もちろん唯一の被爆国(核保有国の核実験による被爆者が世界に大勢いるんだから、実は唯一ではないんだけど)として、日本が核兵器の恐ろしさを国際社会に発信していくことは大切でしょう。
 ただ、もし「核廃絶は可能だ」と現時点で本気で考えてる人がいたとしたら、それは国際情勢や軍事を全く知らないか、あるいはもう宗教の域に達してしまってる人じゃないかしら?と。

 8月9日放送の「たかじんのそこまで言って委員会」に池田眞規さん(日本反核法律家協会会長)って方が出演してましたが、この方の発言を聞いていてよけいにそう感じました。
 (見逃した方はこちらに動画が。動画が消えちゃってる場合、あるいは動画を観る時間のない方は、だいたいの内容がこちらにあります。


※拙ブログ関連エントリー
【一覧】「アンカー」青山さんコーナーテキスト起こし

※参考リンク
ON THE ROAD 青山繁晴の道すがらエッセイ
 青山さんのブログです。ご本人に直接コメントが送れます。
誰にも手渡してはならない自由意志
 拙ブログで紹介しきれなかった青山さんの発言を起こして下さっています。

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