「朝鮮紀行」イギリス人女性が見た19世紀末の朝鮮(1)

2009.08.09 Sunday 00:52
くっくり



●この国に典型的庶民生活があるとすれば、それは首都にしか存在しない。イギリスの農業地帯ではロンドン志向がつよいが、朝鮮ではソウル志向がそれよりもつよい。ソウルは中央政府の所在地であるばかりでなく、官僚の生活の中心地でもある。官職いっさいの中央であり、官職に就く唯一の道である文官試験の行われる場所なのである。ソウルに行けばなにかに「ありつけるかもしれない」という期待がつねにある。したがってソウルをめざす風潮は、恒常的なものにしても一時的なものにしてもたえずあり、午後の日和のなか、両班〈ヤンバン〉の歩きぶりをまねつつ広い通りをぶらぶらしている若者の大部分は、是が非でも官職に就きたくてたまらないのである。世論などないとはいえ、流行が世論のごとく見なされる現象はソウルにしか見られない。(p.84)

●ソウルに住む人々はその生活程度を問わず、たとえ数週間でもそこを離れるなど金をもらってもいやだと考える。朝鮮人にとって、ソウルは生活するに値する唯一の場所なのである。とはいえ、ソウルには芸術品はまったくなく、古代の遺物はわずかしかないし、公園もなければ、コドゥン[行幸](引用者注:国王と従者、官僚、兵士らが町中を行進する儀式)というまれな例外をのぞいて、見るべき催し物も劇場もない。他の都会ならある魅力がソウルにはことごとく欠けている。古い都ではあるものの、旧跡も図書館も文献もなく、宗教にはおよそ無関心だったため寺院もないし、いまだに迷信が影響力をふるっているため墓地もない!(p.85)

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