2008.09.16 Tuesday 01:39
くっくり
≪「色つき」の情報は御免≫
北京と手をにぎりさえすれば、日本の貿易は前途は洋々としているかのようにいくつかの大新聞は書いた。この国のGNPのひとり当たりは百ドルと百五十ドルとのあいだで ― 昨年の日本は三千ドル強 ― 耕地面積が少ないから食糧は慢性的に不足している。総貿易額はわずか五十億ドルで台湾より少なく、そんな状態の国との貿易にどれほどの期待ができるかは、子供でも察しがつく。
ある大新聞の幹部が、わが社の中国報道は偏向しているといわれるが、日中復交のためには相手の欠点を書いたりしないのが当然ではないか、と述べているのを雑誌で読んだ。談話の速記だから、多少の語感のちがいはあるのかも知れない。もしこのとおりにいったとしたら、おそるべき傲慢(ごうまん)さである。
新聞の任務は、新聞人自身がたえずいっているように事実のあたうるかぎり忠実な報道である。北京と手をにぎるのなら、まず必要なことはこの国の実情についての、均衡のとれた情報の提供であろう。新聞人の勝手な判断で色のついた世界像を示されたら、国民のうける迷惑ははかり知れない。
現在の日本は、中ソの奪いあいの対象となっている。日本という大工業国がどちらに肩入れをするかで、中ソの力関係は深刻な影響を受ける。そういう外交上の困難な位置に、日本は立たされているのである。しかもその事態についてさえ、国民は十分に認識していないのではないか。
日本人はもっと多くを「知る権利」がある。色つきの情報をしか知らされなかったことによる不幸を、われわれは三十年まえに、すでに経験しているのである。
(むらまつたけし)
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【視点】「正論」が始まる前年の昭和47年、日中共同声明が調印され、日本国内は日中友好ムードに沸き立った。一方、中国は文化大革命が最終段階を迎えていた。産経以外の全国紙は北京に特派員を置いていたが、その実態はほとんど伝わってこなかった。当時の新聞には、歯が浮くような文革礼賛記事が載っている。
村松剛氏は海外から得た情報として、中国から香港への脱走者が年々増えている事実や3200万人が毛沢東に粛清されたとする米下院の調査報告書を挙げ、いいことしか書かない日本の「大新聞」を厳しく批判した。また、「日中復交」のために相手の欠点を書かない傾向を「おそるべき傲慢(ごうまん)さ」とも指摘した。
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