2008.09.16 Tuesday 01:39
くっくり
七年まえには国家主席 ― つまり大統領にあたる ― 劉少奇が、どのような法的根拠も裁判もなしに、紅衛兵と称する子供の群の罵声(ばせい)のなかで消え、一昨年は林彪と参謀総長の黄永勝とが、どういう風にしてだかよくわからないが消息を断った。そのあと国防省も参謀総長も、空席のままである。毛沢東は過去に四人の参謀総長をつくり、四人のことごとくを粛清(しゅくせい)している。
アメリカの上院が毛沢東の粛清調査のための小委員会を、サウスカロライナ大学の教授を首班としてつくり、その結果が二年ほどまえに発表された。これによると戦場で死んだものをべつとして、粛清された人数は最低見つもり三千二百万人という。この数字の真偽を論じる資格はぼくにはないが、話半分とかりにしても気のとおくなるほどの数である。
≪いい面ばかり書き続け≫
中国共産党の幹部二十一人のうち、林彪以下八人がいまは消え、この七月の共産党立党記念日にも恒例の行事がついに行なわれなかった。一方、地方の軍の司令官は、多くが十年以上据えおきで、各地に根を生やしている。よくはわからないけれど、北京の宮廷の凄惨(せいさん)な権力闘争と地方の軍とは、無関係のようにさえ見える。
つい一昨年までの日本の「軍国主義復活」を罵り、天皇を裁判にひっぱり出せとまでいっていた北京が、そのご突然、四次防結構、天皇陛下によろしくといい出した。態度の急変には、唖然(あぜん)とするほかない。ソ連の軍事的脅威という問題のほかに、国内の不安にたいする対策としての面があったのだろう。日本と手を組んで台湾との外交的関係を日本に切らせれば、北京としては成果を国民に誇ることができる。
どこの国にも、いい面もあれば悪い面もある。
いいところばかりを案内される旅行者のうちの単純な人たちが、いいことずくめの報告をするのは当たり前といえるし、工業化社会の喧噪(けんそう)と汚濁にうんざりしている人間が独裁社会特有の「健全さ」に憧れることがあったとしても、べつだんの不思議はない。しかし大新聞の多くが、まるでいいことづくめのようにこの国について書きつづけているのは、いったいどういうことだろうか。
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