やはり教育は大事!藤原正彦さんインタビュー
2011.06.20 Monday 19:48
くっくり
*2 「百年戦争」=藤原さんは、日本の近代史を語る時には、ペリー来航の1853年からサンフランシスコ講和条約が発効する1952年までの百年を「百年戦争」としてとらえないと歴史の真実は見えてこないと考えています。ちなみに林房雄(明治36年〜昭和50年)の『大東亜戦争肯定論』では、幕末の1845年から敗戦の1945年までを「百年戦争」としています。
——そのとおりですね。
藤原 もし日露戦争で日本が負けていたら、中国、満州、朝鮮はいまもロシアのものですよ。下手をしたら北海道もね。私たちは知るべきなんです。日本がいかに歴史的に大きな働きをしてきたか、別の言葉で言うと、白人から見たら小癪なことをしてきたかということをね。そういうことが頭に入っていれば、胸を張って堂々と世界と渡り合えるはずです。
数学者の岡潔先生は、ご自分の分野で世界の三大難問と言われる問題を全部一人で解いてしまった。二十年ぐらいかけてね。そのときにご自分が二十代の末にフランスに留学して、あちこちの美術館などを見たおりに、「高い山から谷底見れば瓜や茄子の花盛り」という南紀の囃し歌が浮かんだというお話をされました。「高い山」というのは日本文化、「谷底」はフランス文化と理解すればいいと思います。要するに自分が奈良に籠ってあのような大きな仕事ができたのは、日本の文化や伝統に対する圧倒的な自信があったからだと。さらにアインシュタインが相対性理論を発見したのは、彼がユダヤの文化や伝統に対して圧倒的な自信があったからに違いないと。
やはり先人の業績とか祖国の栄光に対する誇りがないと、心底からの自信は出てこないんですよ。そして学術上の仕事も芸術上の仕事もできない。だからこの自信と誇りは絶対必要なんです。日本が世界一の軍備を持とうと、五百年間世界一の経済繁栄を続けようと、心底からの自信と誇りは出てきません。
自分の経験をお話しすると、ケンブリッジ大学でノーベル賞やフィールズ賞の受賞者たちに囲まれることもありました。傲慢で自信過剰な私だって、ヨーロッパの知性というものに圧倒されそうになる。そういうときには「小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ 緑なすはこべは萌えず 若草も籍くによしなし……暮行けば浅間も見えず 歌哀し佐久の草笛……」と口ずさみ、「俺はあの美しい信州で、あの遙かなる草笛を聞きながら情緒豊かに育ったんだ。おまえたちにこういう情緒はあるまい」と思ってぐっと胸を張るわけです。それで翌日からまた阿修羅の如く研究に邁進できるのです。世界の舞台に出ていって剣ヶ峰で闘うようなときは、自分たちの文化や伝統に対する底深い自信がないとやっていけないんですよ。さっき言ったとおり経済や軍備ではダメなんです。
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