防人の万葉集
2009.12.27 Sunday 03:27
くっくり
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足柄の御坂に立して袖振らば家なる妹はさやに見もかも
(第20巻・4423)
作者:藤原部等母麻呂(ふじわらべのともまろ)
よみ:足柄(あしがら)の、御坂(みさか)に立(た)して、袖振らば、家なる妹は、さやに見もかも
意味:足柄の坂に立って、袖を振ったなら、家に居る私の妻は、はっきりと(私のことを)見てくれるでしょうか。
備考:「足柄の御坂」は足柄峠。相模国の西境であり、狹い意味での東国への出入口でした。藤原部等母麻呂は埼玉(さきたま)郡(今の埼玉県の熊谷・行田・羽生周辺)の人で、天平勝宝7年(755年)2月、防人として筑紫に派遣される時に詠んだ歌です。この人も上丁(かみつよほろ)と呼ばれる課役を負った成年男子でした。
なお、この直後の4424番は、彼の妻である物部刀自売(もののべのとじめ)が詠んだ歌です。「色深(ぶか)く夫汝(せな)が衣は染めましを御坂たばらばまさやかに見む」(あなたが御坂を越えながら袖を振る時、鮮やかに見えるように、衣を深く染めるのだったのに)。
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防人に行くは誰が背と問ふ人を見るが羨しさ物思ひもせず
(第20巻・4425)
作者:不明
よみ:防人(さきもり)に、行(ゆ)くは誰(た)が背(せ)と、問(と)ふ人を、見るが羨(とも)しさ、物(もの)思(も)ひもせず
意味:「防人(さきもり)に行くのはどなたのだんな様?」と何の悩みも無く聞く人を見るとうらやましい。
備考:防人(さきもり)として旅立つだんなさんを見送る奥さんが詠んだ歌。自分は旦那様を防人に送り出すという非常に辛い状況にあるのに、ご近所の奥さん方が「今度防人に行くのはどこのご主人?」と無邪気に問うているのを聞き、羨ましく感じている様子が大変よく表れています。
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