2008.05.17 Saturday 03:00
くっくり
世界の声は中国には内政干渉のように、あるいは嫉妬(しつと)から来る意地悪のように聞こえるかもしれない。だがそういう反発をしてみても仕方がない。普遍的価値の尊重を求める声は、中国が今後責任ある大国として世界政治をリードしようとすれば、強まることこそあれ、弱まることはないだろう。
胡錦濤政権もそのことに気付いているはずである。先日の主席訪日の際に出された日中共同声明には日中双方が「国際社会が共に認める基本的かつ普遍的価値の一層の理解と追求のために緊密に協力する」との注目すべき文言が盛り込まれた。ストレートな表現ではないが、自由や人権の問題が日中関係においても重みを持つことを認めたものである。
日本はこれまで、中国が「昔よりよくなる」ことに円借款(ODA)などで協力してきた。その円借款が終わるまさにその年に、中国が「さらによくなる」ために欠かせない、大事な要因の一つを確認した意義は小さくないと思う。
もとより、今後の具体的進展こそが重要である。地球温暖化対策をめぐってセクター別の規制が有効かどうかは、大いに議論されるべきであろう。また、チベット問題もオリンピック向けの対話だけで終わらせてはならない。白樺ガス田の共同開発問題も然りである。
とはいえ、今回の共同声明は、率直に言って筆者の予想を超えるものであった(期待値をいたずらに高く設定して、失敗をなじることはたやすい)。北海道洞爺湖サミットに向けて地球温暖化問題での協力を謳(うた)い、日本の国連安保理常任理事国入りに関して、胡主席から肯定的な発言も引き出した。一見迂遠(うえん)で地味ながら、次のステップへの可能性を秘めている。
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