外国人から見た日本と日本人(1)

2007.10.16 Tuesday 00:42
くっくり



 だから、私たちは親から「お寺に行け」と言われた。昔、道教の寺では中国の古典を教えていた。寺子屋のような感じだったから、そこで中国というものを学んだよ。けど実際に入ってきた中国は全く違った。

 日本は「いさぎよさ」「切腹」の概念を我々台湾人に残していた。中国の価値観は「どんな汚いことをしても生き残る」というものだ。我々台湾人に受け入れられるはずがない。だから、二・二八事件ではその2つの価値観が衝突して負けたんだよ。負けるのは当たり前、だってこっちは「いさぎよく死ぬ」という価値観なんだから。だからみんなバタバタ死んじゃった。

 日本は今、中国とペタペタしてるようだが、日本と中国が仲良くできるはずがない。そのコンフリクトが台湾だ。日本にはすでに死んでしまった価値観が台湾に残ってる。日本が台湾に置いていった価値観だ。我々の世代は下の世代に「言葉(日本語)」を残すことはできなかった。でも価値観は残せたと思う。

 台湾語に「あさり」という言葉がある。日本語でいさぎよいこと…つまり「あっさり」が台湾語として残ったのが「あさり」だ。「あさり」という言葉はそのまま台湾語でホメ言葉になっている。「あさり」は日本が台湾に残した日本精神(リップンチェンシン)なのだ。

■イビチャ・オシム=旧ユーゴスラビア(ボスニア・ヘルツェゴビナ)のサラエボ出身のサッカー選手、指導者。2006年、日本代表監督に就任。
日経新聞2007年1月31日付インタビュー記事より

 千葉の監督になって驚いたことの一つが、負けチームにサポーターがブーイングではなく“次はがんばれ”と励ますことだった。どうもこの国には結果だけにとらわれない文化がある、ということに気づいた。

 日本には豊かであることを逆にコンプレックスに感じているサッカー関係者がいる。ハングリーでないと。でも、経済的に恵まれ、何でも選べる中からあえてプロを選んだ日本の選手にはサッカーをする喜びがまだある。そこは欧州のカネまみれのサッカーより、ずっといいと私は思う。

 日本に来てサッカー観が変わった。日本に感化され、同化したという意味ではない。それでは皆さんもつまらないし、私が監督をするメリットもない。ともに働きながら、日本人の面白さに感じ入った、ということです。何というか……日本のアンビバレントなポリバレント性に。民主主義を原則としながら天皇制があるみたいな。みんなを尊重するやり方といいますか。


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