映画「この世界の片隅に」が追求したのはイデオロギーよりリアリティー

2016.12.09 Friday 18:39
くっくり


 原作は、こうの史代さんの同名の漫画です。

 こうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」と「この世界の片隅に」が私は大好きで、毎年、夏になると必ず読み返しています。
 3年前の夏には、こんなエントリーをUPしました。

2013/8/12付:「はだしのゲン」より、こうの史代さんの漫画をお薦めします

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 映画「この世界の片隅に」のストーリーはほぼ原作通りです。

 戦前〜戦中〜戦後間もなくの広島が舞台です。

 中でも主な舞台は広島の呉市。
 主人公の「すず」がお嫁に行った先です。

 「すず」は絵を描くことが好きな、おっとりとした18歳の女性です。

 戦時下の庶民の暮らしをユーモアを交えながら描写しているのが、この作品の大きな特徴です。

 厳しい時代でありながら、ほのぼのとした感じで、映画も原作と同様、クスッと笑ってしまうシーンがたくさんあります。

 戦時下を描いた物語というと、とかく暗い部分が強調されたり、イデオロギー色が前面に出たりするものですが、この作品ではそういうことはありません。

 毎年夏にやってるような反戦ドラマの多くは、後付けの戦後民主主義の思想で、「こんな戦争は間違ってる!」とか登場人物に語らせたりしますが、もちろんそんなことも一切ありません。

 何しろ、憲兵さんに怒られるという普通なら緊張するシーンも、この作品では笑いに変わっていくのです。

「『昔の人は愚かだったから戦争をしてしまった。そしてこんな貧しい生活に…』というように片づけられる気がするんですけど、彼らは彼らなりに工夫して幸せに生きようとしたということを、この作品で追いかけて、つかみたいというふうに思ったんです」(2016年10月19日 NHK「おはよう日本」より、原作者こうの史代さんのコメント)

 あえて言えば、「日常の中にたまたま戦争があった」というテイスト。

 もっとも、日本の敗色が濃厚になるにつれ、日常は少しずつ壊れていきます。
 最初は「日常の中に戦争がある」だったのが、「戦争の中に日常がある」に逆転していく感じ…。

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