朝日慰安婦訂正「先送り」を金融機関の失敗と同列に扱う池上彰氏

2015.01.31 Saturday 02:30
くっくり


〈前略〉朝日はなぜ長い間訂正しなかったのか。「朝日が反日だから」などという批判もありました。

 しかし、私はそうは思いません。朝日新聞は、日本の大企業にありがちな、典型的な誤りを犯したのではないかと考えています。それは「問題の先送り」です。ここで私が想起するのは、バブルがはじけた後、不良債権が積み上がるのを見ながら、何もしないで処理を先送りしてきた日本の金融機関の失敗の数々です。

 バブルの最中に土地を担保に融資した資金の多くが、バブル崩壊後に焦げ付きました。担保にしていた不動産を直ちに処分していれば、不良債権処理は、それほど大変なものではなかったはずです。

 しかし、過去の貸し出しを不良債権と認定すると、以前の担当者つまり自分の先輩や上司の判断が間違っていたことを認めることになります。なかなかできることではありません。まして先輩が本社の上層部にまで出世していたら、自分の出世に響きます。

 その結果、多くの不良債権が処理されないまま、先送りされてきました。その間に、担保になっていた不動産価格は下落。不良債権の額は増大。結局、経営破綻(はたん)する金融機関が相次ぎました。

 各金融機関の歴代トップは、「自分の在任中にさえ問題が起きなければ、それでいい」と、先送りを続けたのです。

 朝日新聞も、問題先送りを続けてきたのではないか。朝鮮半島での強制連行の証言を報道した後、これを否定する他社の報道があったにもかかわらず、事実関係の検証をしませんでした。

 その間に、日韓関係は悪化。安倍政権が誕生して、朝日新聞の報道姿勢に批判を強めると、朝日としても、いつまでも知らん顔はできず、遂(つい)に過去の誤報の検証に踏み切りました。

 一口に不良債権といっても、融資先の経営状態によって「破綻先」「破綻懸念先」「要注意先」など各種に分けられ、対応策が異なります。実際には「破綻先」でも、「要注意先」に区分するなど、現実を直視しない対応が続き、経営の悪化を招きました。

 朝日新聞の対応も、同じようなものではなかったのか。そう考えると、朝日の失敗は、典型的な日本的企業の失敗と言えるのではないか。朝日新聞は過去に金融機関の問題先送り体質を批判してきました。自社もまた同じだった。この自覚と反省から再生への取り組みをすべきではないかと思えるのです。


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