護憲派共感?!「サイボーグ009」第16話“太平洋の亡霊”
2011.09.12 Monday 19:13
くっくり
日常に突如として現れる非日常が戦争であるならば、本作品の平博士は個人的な私怨から、戦争の教訓を忘れた平和ボケの世界に戦争の悪夢を現出させる神になるという自己矛盾を演じてしまう。終戦記念日の一月前という放映時期もあり、当時のインパクトは相当なものだっただろう。作品内でこれほどストレートにこの問題を扱うことのできない現在の視点から観たとき、本作品のテーマはいっそう鮮烈なものになる。
脚本を執筆したのは、例によって辻真先。氏は左のように語っている。
「SF的なプロットは無茶苦茶でしたが、都築道夫さんの小説……『いじわるな花束』だったと思います……精神から物質を作り上げるというアイデアがありまして、それで強引にというか、正面きって徹底してやったわけです」
平博士は、戦争で尊い命を失った人々の霊に報いるためには、絶対に再び戦争を起こさないという決意以外にないと語る。が、相変わらず世界は軍備拡張にうつつを抜かし、あまつさえ唯一の被爆国、日本にさえも軍需で私腹を肥やす企業が存在する。博士にはそれが我慢できなかったのだ。ドクロ化した英霊を乗せたゼロ戦は、俺たちの死は無駄だったのか、とかつての戦友が乗る自衛隊機を撃墜し、ビキニの水爆実験の目標として使われた悲劇の戦艦・長門は、放射能を発散させながらサンフランシスコを目指す。
平博士と009たちの会話シーンには、広島の慰霊碑の全景と、碑文「安らかにお眠り下さい、過ちは決して繰り返しませぬから」のイメージ・ショットが挿入され、スーパーで重ねられた戦争を否定する日本国第九条の文面がスクロールしていく。もちろん、バックは小杉太一郎による劇場版『009』の感動的なあのコーラス曲だ。
憲法の文面を画面に出す趣向については、辻は脚本に書きながらも無理だろうと思っていたとか。思い入れたっぷりなこのシーンの演出は、おなじ戦中派の芹川有吾と意気投合した結果のようだ。旧日本軍の亡霊の復活から瓦礫に還るくだりまで、一貫してムソルグスキーの「禿山の一夜」が効果的に用いられているが、この選曲も芹川によるものという。
「当時、某県の教育委員会の方から、猖獗(しょうけつ)を極めるアニメは子供たちに悪影響を与えるという文句がきました。そこで、岩波かどこかへこのフィルムをもっていき、上映と公開討論をやった覚えがあります」(辻真先/談)
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