外国人から見た日本と日本人(20)

2010.09.07 Tuesday 00:21
くっくり


■金美齢=台湾人。1934年(昭和9年)台北生まれ。日本統治下の台湾で育ち、日本敗戦後国民党による台湾人弾圧時代を経験。1959年(昭和34年)日本に留学後、台湾民主化運動に参加。このため30年間以上も台湾の土を踏むことができなかった。多くの大学で講師を歴任。1988年から2000年までは学校法人柴永国際学園JET日本語学校校長も務めた。台湾の民主化が進んだ後、2000年から2006年まで総統府国策顧問。日本滞在期間50年。2009年9月、日本に帰化。
「正論」2010年1月号 金美齢【独占手記 滞日50年、「二つの祖国」のはざまで 私はなぜ日本国民となったか】より

 私は自分の経験に照らして、とくに若者に対し「日本国」のパスポートに深く感謝しなさいと言いたい。

 一国のパスポートは身分証明書であり、外国に出たら「最後の頼みの綱」である。その頼みの綱を失ったとき、私は個人にとっての国家がいかに大切であるか、個人は国に守られて生きているということを肌で感じた。台湾(中華民国)のパスポートではどこに行くのにもビザ(査証)が必要になるが、パスポートがなければビザの申請自体を受け付けない国がたくさんある。

 日本のパスポートは世界のほとんどの国にビザなしで入れる。この凄さを認識している日本人(国民)はいったいどれほどいるだろうか。パスポートはその国の国際社会におけるポジションを示す。日本人はミシュランガイドの星を有り難がるよりも前に、日本のパスポートが三つ星どころか五つ星と言えるほどの実力を持っていることを、つまりそういう国に生まれたことを感謝すべきなのである。

 ところが、そんなパスポートを持っている日本人の多くが、いま享受している諸々は先人たちが営々と築いてくれた遺産の上に成り立っていることを認識できず、国の恩恵、保護を忘れて、自分の国を蔑み、貶めようとしている。私に言わせれば、そんな日本人は日本のパスポートを持つ資格はない。即刻返上すべきである。


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