外国人から見た日本と日本人(18)

2010.06.14 Monday 19:16
くっくり



 それだけではありません。早朝の審査に間に合うように、前日は茨城にいる先生の剣友が、自宅に泊めてくれるというのです。彼自身も翌日は審査を受ける大切な日だというのに、快く受け入れてくれたのです。私と先生は段審査の用意をして、東京駅からつくばエキスプレスの乗り込みました。当日は自信を持ち、落ち着いた気持ちで杖道の審査に臨み、見事“初段”を取ることができました。先生との稽古が実った瞬間でした。これも自宅を提供し、様々な手配をしてくれた先生方のおかげです。反対の立場だったらどうでしょう。トルコに見知らぬ外国人が訪ね「武道を学びたい」と望んだ時、ここまで親身になり世話をするでしょうか?師匠は見返りを求めることなく、ただ「学びたい」という私の心に応えてくれるのです。茨城の先生と師匠の間には武道家同士に存在する“深い信頼関係”があります。これこそ武道の精神なのではないでしょうか。武道館で指導に当たる他の先生方も同様です。稽古中は無駄な言葉を発しません。どんな場面でも弟子を信じて、自ら気付くまで待ってくれているのです。何と言う忍耐力でしょう。先生方も一様に長い時間をかけて、自分自身の修行を続けているのです。

〈中略〉その昔、「オスマン帝国」が繁栄していた頃、トルコの人々の心にも、日本の武道と同じ精神がありました。日々、自分を鍛え、目上の者には礼を尽くすという姿勢です。現在のトルコは、駄目になっています。目先のことやお金に捉われ、父親を尊敬することすら忘れています。優秀な若い人材はいるのですが、トルコに失望して、アメリカやヨーロッパへ出て行きます。自分の国を捨てるのです。

 もう一度言います。私は、日本の武道の心を国へ持ち帰り、十年後二十年後の国を創り上げていく決心です。帰国したら、人々に杖道を伝えます。

■セルゲイ・ハルラモフ=ロシア人。1962年(昭和37年)モスクワ生まれ。モスクワ大学で日本の歴史、、経済、文学などを勉強する。1983年、冷戦時代のピークに、ソ連から初めて訪日、東海大学に10カ月間留学。1994年から、在日ロシア大使館一等書記官・文化担当官として4年間日本に住む。現在はビジネス・コンサルタント。滞在期間通算7年。

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