江戸時代を見直そう(2)
2010.03.30 Tuesday 00:53
くっくり
【鈴木春信「吉原美人合」より「桜美人」】
■鬼頭宏(上智大学教授)
私は縄文時代から一万年ほどの人口の変動を見ていますが、原始、古代、中世、近世、近代、現代といった時代区分はもうやめるべきだと思っております。
むしろ文化、文明、或いは人間の暮らしに基礎を置いた日本独自の——それは世界どこでも通用する見方だと私は確信していますが——政治史とは違った見方を作り上げるべきではないでしょうか。
戦後、江戸時代に対する見方は大きく二回ぐらい変わっていると思います。最初は唯物史観にのっとった階級闘争史観。そもそも明治政府は江戸時代がいかに悪かったかということをずっと言い続けてきたのですが、広い意味での封建社会批判というのが一九五〇年代、あるいは六〇年代まで非常に強かった。封建制をいかに払拭して近代化をすべきか、ということが盛んに言われてきました。階級闘争史観はそれを別のかたちで引き継いだと考えられます。
しかし、ある時にガラッと変わる。駐日アメリカ大使であったライシャワーさんたちの見方が内外の経済学者、あるいは社会学者などにもどんどん広がっていった。それは、欧米以外の国でなぜ日本だけが高度経済成長を成し遂げたのかといえば、封建制を経験していたからであり、江戸時代の経済的な達成があったからだという見方です。それまで駄目だと否定してきたものが一八〇度変わったのです。
そして最近になって、持続可能な社会、あるいは循環型社会として、江戸時代がいかに素晴らしかったか、ということが強調されるようになりました。私もついつい尻馬に乗って、『環境先進国』というタイトルの本を書きましたが、よく考えてみると、江戸時代というのはすべて良かったのか、あるいはずっと環境先進社会だったのかと言うと、そうではありません。江戸時代の人々がそれなりに創意工夫をして、困難を乗り越えてきたということを我々は学ぶべきであって、江戸時代と同じになればいいということではないと私は考えます。
〈中略〉日本の人口を長期的に見ると、人口の増加、停滞、減少が交互に何度か現れています。例えば縄文時代の前半は人口が増加し、後半は減少します。弥生時代から奈良時代、平安時代にかけては人口が増加します。弥生時代の人口はだいたい六十万と言われています。奈良時代から平安時代にかけては六百万から七百万ぐらいです。人口は十倍ぐらいに増えています。しかし、鎌倉時代に少し人口が減り、室町時代からまた増え始めます。十七世紀の増加につながっていく。十八世紀から十九世紀にかけて、人口は一回落ち込んでまた元に戻るんですが、殆ど停滞していました。そして幕末から人口がまた増え始める。明治五年の人口はだいたい三千五百万。それが現在では一億二千万を超えていますが、二〇〇五年から減少に転じています。
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