北方領土の日によせて【将兵万葉集】(1)シベリア抑留者

2010.02.06 Saturday 01:51
くっくり



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■ふるさとはまぶた閉づれば浮かびくる利根の河原に遠き筑波嶺
■命あらば国を見る日もあらむかと痩せし手足をじっと見つめる
■ふるさとを見るまで死なぬと語りいし友も眠れりナホトカの丘
■病める者癒して国に帰さんと我も病めども今日もメスとる
 (シベリア捕われの歌)

 中村泰助
  群馬県、東京医専。
  昭和十二年から二年間北支に、
  十七年から五年間北支・北朝鮮に軍医勤務。
  シベリアに抑留、二十二年に帰国。

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■倒木の下敷きとなり死にたりき同胞哀れ雪降りしきる
■シベリアの二重の窓に氷張る寒き夕べは日本し思ほゆ
■青き眼の下に過ごせしこの十年虐待されしこと幾そ度
■来む年の春には船が着くならむ後半年を死なれじと思ふ
 (朔北の道草)

 野口哲夫
  熊本県出身、陸軍軍属、台南師範卒、関東軍情報部勤務。
  シベリアに抑留され、悲惨な生活の為発病、抑留十年後に帰国。

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■囚れのかなしき身ゆえ星のごと流れて燃えて消えなむものを
■母恋ふる心のもだしがたき日よつもるともなき粉雪の降る
■日の丸の扇ひらかむ時のため益良武夫は堪ふべかりけり
■十年の苦闘の末に残れるはただ一片の誠なりけり
 (朔北の道草)

 前田忠雄
  陸軍中佐、関東軍第五軍の情報参謀。
  シベリアに抑留され、中央アジアまで送られ、
  サマルカンドの獄にも入れられた。

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■枯れ落ちて旅立ちし戦友寒々と衣類まとわずシベリアの果て
■亡骸を収めんとして運びしが枯木のごとく軽きかなしさ
 (捕虜体験記)

 真弓一郎
  終戦時関東軍野戦造兵廠。
  戦後シベリア・タイシェトに抑留され、四年後に帰国。

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■妻子らは我が帰りを待兼ねて夜毎迎えに枕辺に来ぬ
■如何ほどに蒙古嵐はすさぶとも砕けて散るな大和男子よ

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