2009.01.31 Saturday 00:31
くっくり
「シュリーマン旅行記 清国・日本」より
上海から横浜に向かう船上での記述
快適な旅のあと、われわれは六月一日朝六時、日本で最初の、小さな岩ばかりの島が見える地点に到達した。私は心躍る思いでこの島に挨拶した。これまで方々の国でいろいろな旅行者に出会ったが、彼らはみな感激しきった面持ちで日本について語ってくれた。私はかねてから、この国を訪れたいという思いに身を焦がしていたのである。
「シュリーマン旅行記 清国・日本」より
八王子・宝顕寺を訪れた際の記述
われわれは高名な宝顕寺で休憩した。寺は、針葉樹、椿、シュロなどの美しい木立ちに囲まれている。
寺は木造で、屋根は茅(かや)で一メートルの厚さに葺(ふ)かれ、田舎にある日本の寺がそうであるように、屋根の棟にそって百合の花*1が植えられている。境内に足を踏み入れるや、私はそこに漲(みなぎ)るこのうえない秩序と清潔さに心を打たれた。大理石をふんだんに使い、ごてごてと飾りたてた中国の寺は、きわめて不潔で、しかも頽廃(たいはい)的だったから、嫌悪感しか感じなかったものだが、日本の寺々は、鄙(ひな)びたといってもいいほど簡素な風情ではあるが、秩序が息づき、ねんごろな手入れの跡も窺(うかが)われ、聖域を訪れるたびに私は大きな歓びをおぼえた。
〈中略〉どの窓も清潔で、桟には埃ひとつない。障子は裂け目のない白紙がしわ一つなく張られている。僧侶たちはといえば、老僧も小坊主も親切さとこのうえない清潔さがきわだっていて、無礼、尊大、下劣で汚らしいシナの坊主たちとは好対照をなしている。
*1 [訳注]百合の花はイチハツだと思われる。百合は乾燥に堪えない。イチハツはアヤメ科の多年草で、火災を防ぐということで藁葺屋根の上に植えられた。
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