誰がために散る もう一つの「特攻」(1)〜(5)

2007.06.26 Tuesday 01:19
くっくり



 大阪商大在学中に学徒動員で海軍に入り、3度の出撃の末、散華した久家稔は、回天を志願したころの19年8月の日記にこうつづっている。

 <俺達は俺達の親を兄弟を姉妹を愛し、友人を愛し、同胞を愛するが故に、彼等を安泰に置かんがためには自己を犠牲にせねばならぬ。祖国敗るれば、親も同胞も安らかに生きてゆくことはできぬのだ。我等の屍によって祖国が勝てるなら満足ではないか>

 <ぼくは、女性にささげる二十歳の青春を、お国のためにささげる>。昭和20年1月9日、金剛隊として出撃した塚本太郎はノートにそう記していた。

 多くの日本人を救い、日本の伝統を守るために自らの命をささげる−。当時の特攻隊員の証言や日記からは自己犠牲の思いが強く伝わってくる。それは、現在の若者以上に命を尊いものと考えていたことの証しでもある。

■  ■

 特攻を志願した竹林らは8月31日夕方、土浦海軍航空隊を出発、汽車を乗り継いで呉に向かった。呉の海軍潜水学校で2、3日滞在した後、潜水艦基地を経て倉橋島大浦崎の第一特別基地隊に着いた。竹林は言う。

 「呉に着くまでは、軍服にいかりのマークを付けないように指示されたので予科練の練習生には見えなかった。どこに行くのかさえも教えられなかった。それほどの極秘作戦だった」

 第一特別基地では、魚雷の構造などについて座学が始まった。

 「そこで初めて、もしかしたら人間魚雷かなという予感がした」

 竹林ら第13期甲飛100人が大津島の回天基地に着いたのは9月21日。この日から死へのカウントダウンが始まった。

(敬称略)

◇ 

 鹿児島・知覧の航空特攻基地を舞台にした映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』(東映)の観客動員数が伸びているという。

 若い特攻隊員と彼らを取り巻く肉親や恋人の心の動きが詳細に描かれ、それが現代の若者たちの心をとらえているのだろう。

 航空特攻とは違うもう一つの特攻隊、人間魚雷「回天」の搭乗員たちと彼らを取り巻く人たちの証言から、彼らが命をかけて守ろうとしたもの、そして現代日本人が忘れかけている「何か」を探る。(宮本雅史)

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