2007.03.12 Monday 17:15
くっくり
突然、思い出話を書く。突然に思い出した。六十年以前のこと十歳の頃で、ぼくには不思議な老人の友人がいた。
何者だったのか、町では奇人変人扱いされていて、子どもたちは決して近寄るなと親からきつく言われていた存在で、中には石をぶつける子すらいたが、ぼくは仲がよかった。
理由はよくわからないが、ぼくには洋々たる将来があり、驚くべき才能があり、人相学的にも金満の相があると言うので、すっかりいい気持ちになっていたのかもしれない。結構一緒にいた。
その老友人は日本の話をよくした。とても奇人変人と馬鹿にされている人の言葉と思えないもので、「日本人ってのはね、世界一行儀の悪い、しかも、公徳心のない民族だからね」とある日言った。
これは衝撃だった。なぜなら十歳のぼくの意識では、日本人ほど礼儀や行儀を重んじ、私を犠牲にしてでも公に尽くす民族はないと、信じ込んでいたからである。ぼくはムッとした。
すると老いた友人は、「日本人はね、他人の目だけが恐くて神が恐くない不思議な民族でね。他人が見ていなければ、どんなハレンチでも平気でやる。だから、頭の下げ方から、戸の開け閉めの方法、下駄(げた)の揃(そろ)え方、風呂敷の包み方まで、何から何まで決まりごとにしなければならなかったのだ。そうだろう。その証拠に自由を覚えたとたんに、ハレンチ仕放題じゃないか。そうだろう」
ぼくは老人との友人関係を断った。そして、六十年後に急に思い出した。
(あく・ゆう=作詞家、作家)
(2007/03/10 17:45)
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