ドナルド・キーンさんの言葉を振り返る

2019.03.30 Saturday 00:32
くっくり



 「東北は必ず、復興する」。そう信じる理由などを語った。

 3月11日直後は、ニューヨークでテレビ画面を通じて「黒い津波」の脅威に打ちのめされた。しかし、「家が流されても取り乱さず、人を思いやる日本人の姿を見て誇りがわき上がった。私から日本をとったら何も残らない。日本人として残りの人生を生きたい、と強く思いました」。

 大地震、台風、洪水。災害の多い日本では、「すべては移り変わる」という仏教的な無常観が根づいているが、「不思議なことに、和歌や物語には古来、地震や津波がほとんど出てこない。自然の無慈悲を嘆いて廃虚のまま放っておかないで、何度でもそれまで以上のものを立て直してきた。それが日本人です」。

2011/10/18付:【東日本大震災-9】外国人から見た日本と日本人(31)より再掲)


【日本人よ、勇気をもちましょう】

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 かつて川端康成さんがノーベル文学賞を受賞したとき、多くの日本人が、こう言いました。「日本文学が称賛してもらえるのは嬉しいが、川端作品は、あまりに日本的なのではないか」。

 日本的過ぎて、西洋人には「本当は分からないのではないか」という意味です。分からないけれど、「お情け」で、日本文学を評価してくれているのではないかというニュアンスが含まれていました。

 長年、そう、もう七十年にもわたって日本文学と文化を研究してきて、私がいまだに感じるのは、この日本人の、「日本的なもの」に対する自信のなさです。違うのです。「日本的」だからいいのです。

 昨年、地震と津波に襲われた東北の様子をニューヨークで見て、私は、「ああ、あの『おくのほそ道』の東北は、どうなってしまうのだろう」と衝撃を受けました。あまりにもひどすぎる原発の災禍が、それに追い打ちをかけています。

 しかし、こうした災難からも、日本人はきっと立ち直っていくはずだと、私はやがて考えるようになりました。それは、「日本的な勁(つよ)さ」というものを、心にしみて知っているからです。昭和二十年の冬、私は東京にいました。あの時の東京は、見渡すと、焼け残った蔵と煙突があるだけでした。予言者がいたら、決して「日本は良くなる」とは言わなかったでしょう。しかし、日本人は奇跡を起こしました。東北にも同じ奇跡が起こるのではないかと私は思っています。なぜなら、日本人は勁いからです。

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