【過去】独特の災害史観を持つ日本人は何度も立ち向かい乗り越えてきた

2018.09.15 Saturday 00:24
くっくり



 「この人たちが快活なのを見ると救われる思いだった。笑ったり、しゃべったり、冗談を言ったり、タバコを吸ったり、食べたり飲んだり、お互いに助け合ったりして、大きな一つの家族のようだった。家や家庭から追い出されながら、それを茶化そうと努め、助け合っているのだ。涙に暮れている者は一人も見なかった」

 「驚嘆したことには、あちらこちらに新しい建築の枠組が立てられていた。その進行の早さは驚くべきものだった」

 クララの見た火事は日本橋から京橋にかけて一万戸を焼いた大火でした。

 東京医科校(現東京大学医学部)で教鞭を執ったドイツ人でエルウィン・ベルツも同じ火事を目撃し、クララと似たような記述をしています。

 「日本人とは驚嘆すべき国民である!今日午後、火災があってから36時間たつかたたぬかに、はや現場では、せいぜい板小屋と称すべき程度のものではあるが、千戸以上の家屋が、まるで地から生えたように立ち並んでいる」

 「女や男や子供たちが三々五々小さい火を囲んですわり、タバコをふかしたりしゃべったりしている。かれらの顔には悲しみの跡形もない。まるで何事もなかったかのように、冗談をいったり笑ったりしている幾多の人々をみた。かき口説く女、寝床をほしがる子供、はっきりと災難にうちひしがれている男などは、どこにも見当らない」

 「涙も、焦立ったような身振りも見ず」「いつまでも嘆いて時間を無駄にしたりしなかった」「不幸や廃墟を前にして発揮される勇気と沈着」「お互いに助け合ったりして、大きな一つの家族のよう」「(新しい建築の)進行の早さは驚くべきものだった」「はっきりと災難にうちひしがれている男などは、どこにも見当らない」……。

 このたびの大震災における被災者の方々とほとんど変わりのない、百数十年前の日本の被災者の落ちついた様子に、驚かれた読者さんも多いのではないでしょうか。

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 話を大石久和氏の論文に戻します。
 公平を期すため書き添えておきますと、氏は建設省の出身です。つまり公共事業推進派です。
 ただ、そのことを割り引いても、氏の話には非常に説得力があると私は感じました。

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