2017.04.06 Thursday 00:39
くっくり
「イザベラ・バードの日本紀行(上)」より
吹上御苑を散歩した際の記述
女性は男性とは決していっしょに歩きませんが、女性同士や子供連れで歩くことはします。それに赤ちゃんを「おんぶ」して歩くことはよくあります。男性も子供を連れて歩いたり抱いたりはするものの、家族そろっての集団というのはありません。女性は頭になにもかぶりませんが、その顔にはやさしい節度と女らしさがあり、そこがいいのです。だれもが楽しそうですが、浮かれ騒ぐところはまったくなく、おとなしくて丁重な態度は土曜日の午後家にいる人々の態度と著しい対比を示しています。人込みのなかでは行儀よくするという頼もしい習慣があるにちがいありません。というのも吹上御苑に警官はひとりもいなかったのですから。しかも東京にはほぼ六〇〇〇人の警官がいて、この庭園に配置する人員に不足しているはずはないのです。
この町に外国人は多いのに、わたしたちはおもしろいもの、あるいはめずらしいものとしてじろじろ見られました。ハリー卿*1がたいへん快活に外交経験のなにがしかを回想しているあいだに、わたしたちのまわりにはひとりでに野次馬が集まり、口を開けて黒く染めた歯をのぞかせ、とても黒い目でぽかんとわたしたちを見つめました。でもそれがあまりに丁重なので、見つめられているという気はしませんでした。
*1 ハリー・パークス。幕末期の英国外交官。薩摩藩・長州藩を支援。英仏米蘭の連合艦隊を兵庫沖に派遣し威圧的に幕府と交渉、条約における税率の改正、兵庫開港を実現させるなど、巧みな外交手腕を見せた。 1868年の戊辰戦争では中立を保ち、江戸開城にも関与、他の列強諸国が日本に介入することを防止する役目も果たした。明治維新後は日本の近代化と日英交流に貢献。大河ドラマ「篤姫」にも登場した。
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