【現代文】GHQ焚書「敗走千里」より支那軍の実態

2017.01.26 Thursday 02:15
くっくり


 唇の厚い男は、舌をなめずりなめずり、淫(みだ)りがましい笑いを黄色く濁った眼に浮かべながら、大きな掌の上で翡翠(ひすい)の耳飾りをいじり回している。
 「貴様ァ、相変わらず女一方なんだな」銀貨の男は、相手を軽蔑しながらも、やはり、張開元の自由にした女に気を惹かれているらしい。「で、その女は好かったか? 幾つぐらいなんだい?」
 「二十ぐらいかな……そりゃ好い女よ」
 「ふーむ、そんな女が今時分まだこんなところにまごまごしてるのかな……で、そりゃ、どの家だい?」
 「そこの橋を渡ってよ、クリーク*3について左に行って……」と言いかけて、張開元は急に警戒し出した。「でもな、その女はもういないよ、南京に行くと言ったから…」
 銀貨の男は、そう言う張開元の眼をじっと見つめていたが、やがて、はっとしたように
 「おめえ、まさか、やっちまやしめえな」と言って、ぎゅっと、銃劍で何かを突き刺す真似をした。
 「ううん、もったいねえ、そんな馬鹿なことするもんか」張開元は慌てて弁解した。「俺はただ、この耳飾りを貰って来ただけよ」
 「ふむ、そんならいいけど……それで、家はどこだい、何か商売している家か」
 「そんなこと、覚えちゃいねえ、滅茶苦茶に飛び込んだ家だからな……そいで、その女、年寄りの婆さんと、地下室に縮こまっていたのよ、婆さん、脚が悪くて、歩けねえらしいんだ」
 張開元は、そう言ってなかなか女のいる家を教えなかった。何か自分の所有物をでも他人の目から匿(かくま)うような態度だった。
 「ふん、俺ァ女なんかどうでもいいんだ」銀貨の男は、ポケットの銀貨をざくざく言わせながら張開元の前から去った。
 陳子明はすべてを見た。そして、聞いた。彼は、これだけで戦争なるもの、更に軍隊なるものの本質を殘らず把握したように思った。戦争なるものが一つの掠奪(りゃくだつ)商売であり、軍隊なるものはその最もよく訓練された匪賊(ひぞく)*4であるということである。(p.3-7)

*1 斥候=本隊の移動に先駆けてその前衛に配置され、進行方面の状況を偵察しつつ敵を警戒する任務をいう。
*2 洪傑(ホンチェ)=分隊長の名前。位は軍曹。
*3 クリーク=排水や灌漑 (かんがい) ・交通などのために掘られた小運河。
*4 匪賊=「集団をなして、掠奪(略奪)・暴行などを行う賊徒」を指す言葉。近代中国の匪賊についてはこちら参照。


[7] << [9] >>
comments (5)
trackbacks (0)


<< 国会開会式で陛下の威厳・野田幹事長が宮中の一部と結託・ご譲位問題は中国の大チャンス…青山繁晴「虎ノ門ニュース」
対馬仏像韓国地裁判決で前住職「異次元の世界」「時空を超えた論理」「永遠に分かり合えない」 >>
[0] [top]


[Serene Bach 2.04R]