朝日の沖縄戦教材配布に曾野綾子さんが物申す

2014.11.15 Saturday 00:53
くっくり


産経新聞2014年11月5日オピニオン面掲載
曽野綾子の【透明な歳月の光】
No.615 朝日の沖縄戦教材配布(上)
<「軍の洗脳」と片付けられぬ実情>
 
 10月26日付の産経新聞の記事によると、朝日新聞は「今夏、沖縄戦について『日本軍は住民を守らなかったと語りつがれている』などとする中学・高校向けの教材を作成して学校に配布し」たという。

 私はその教材を見ていないのだが、軍というものは、警察と違って、直接市民を守るものではない、と理解している。最近の自衛隊が、災害出動などで市民生活に非常に大きな貢献をしているので「軍は民を守るものでしょう」という概念が定着したのだが、それは本来の軍の目的にはないものであろう。

 軍は、大きな意味ではその国を守るために存在するのだろうが、直接市民を守るものではない。私は渡嘉敷島(とかしきじま)の集団自決を取材中、島民がアメリカの艦砲射撃を恐れて、軍陣地と予定されている地点になだれ込んで来そうになった時のことを、当時の守備隊長から聞いた。その時、この隊長は、軍陣地内には民間人は入れられない、と言っている。なぜなら、陣地は真っ先に敵の攻撃目標になるから、民間人を巻き込んではいけない、ということが常識だったようである。

 朝日新聞社編集の教材には、敵の手に渡さないために、母や妹を我が手で殺す他はなかった人の言葉として、「わたしたちは『皇民化教育』や日本軍によって、『洗脳』されていました」と書いてあるそうだ。

 確かにそういう面もある。私も終戦の年、13歳だったが、米軍が上陸してきたら、捕虜になるより自決するのだ、と漠然と考えていた。その時、もし手元に2発の手榴弾があったら、そのうちの1発は抵抗のあかしとして米軍に向かって投げ、残りの1発は家族の環の中でピンを抜いて自決するのだ、という筋書きを覚悟していた。それが当時の常識だったのだ。

 しかし沖縄の心をそう簡単に片づけてはいけない。昭和43年、『生贄の島』という本のため沖縄の旧制高等女学校の生徒たちの終戦時の記録を現地調査した時、私は実に人間的だったたくさんの沖縄県人や、自分を失わなかった軍人の言動の資料を得ている。

 以下その一部を、今週と来週の2度にわたって紹介する。

 米軍の砲撃で、座波(ざは)正子の姉と妹は即死し、兄と叔父と祖母は深手を負った。しかし祖母は、静かに身を捩(よじ)りながら正子に言った。

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