2013.11.05 Tuesday 00:57
くっくり
大法廷は、わが国のすべての裁判所と同じく、付随的違憲審査権しか有しないのであるから、今回の決定では、その主文=破棄差し戻しを導くのに必要な説明をすれば足り、それ以外の判断を示す権限は有しない。今回の決定が、「半分規定が一般に平等原則に違反し無効である」と判示したのは、法令違憲のやり方そのものであり、越権行為の典型である。憲法裁判所でもないのに、あたかも憲法裁判所の如く法令違憲の判断をした以上、「憲法裁判所ごっこ」の批判は免れない。
では、大法廷は適用違憲のやり方を採った場合、どのような判示をすればよかったのか?「半分規定を本件事案に適用する限度で憲法違反である」といえばよかったのではあるが、その前に、本件事案の内容をかいつまんで紹介し、違憲判断が出てくる土俵を作るべきであった。
ところが今回の決定では、抽象的違憲審査そのままに一般論に終始し、その事案の具体的事実は書いていないから不明である。これでは、付随的違憲審査をしたくてもできないから、決定理由として完全に失格である。
今回の決定がした法令違憲の判断は、国民主権原理にも三権分立にも反する。憲法は、国民の代表者が作る国会だけに法律制定権を付与し、裁判所その他の国家機関はこれに従うことを義務づけた。それなのに今回の決定は、権限もないのに法律の規定を無効だと断定した。
裁判官は、民意による選挙を経ていない非民主的存在である。その非民主的裁判官十四人で、七百数十人の国会議員が額を集めて相談し、制定した法律をいわれなく否定したのである。まさしく黒衣(くろご)の暴走である。また、大法廷が法律の規定を無効だというのは、三権分立にも違反する。法律を廃止するには、新たな法律を制定するしかない。裁判所は立法権を有しない。
今回の決定は、その憲法判断は、すでに確定した遺産分割には遡及しないと判示した。これも前提が間違っている。遡及効とは、法律のように一般的に適用がある規定を制定時より遡って適用する場合に問題となる。しかし、今回の憲法判断は、訴訟法によりその当事者にしか効力がないから、遡及効を論ずる前提がないのである。
以上のとおり、今回の決定は、大法廷が司法裁判所の分を忘れ、憲法裁判所ごっこをしでかし、憲法秩序を自ら破壊した事案として、長く裁判史上に残るであろう。むろん判例と見ることはできない。
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