三輪宗弘先生の「大韓民国の物語」書評で改めて見えた韓国の民族主義と李栄薫教授の苦悩

2013.06.15 Saturday 02:48
くっくり


 さらに、三輪先生は私たち日本人にこう警鐘を鳴らすのです。

 李朝後期への評価という問題を通して、韓国の民族主義歴史観というものの実態が浮かび上がってきます。この背景、この背後に潜む問題点を日本人である我々はしっかり頭の中にいれておかなければならないのです。

 さて、論文もいよいよ終盤、「ライブラリーサイエンス」専攻の三輪先生ならではの感想が述べられます。
 三輪先生が李教授と面識があることも、ここで初めて明かされます。

 日本と韓国の歴史認識が共通の基盤に立てる可能性を引き出した、勇気と知性に満ちた本書に出会え、日韓の歴史認識が怨念から事実に基づいた史実の解明につながる日が近づいたと感じました。一筋の光明がみえてきました。歴史の解釈は様々であり、国による記憶の違いがあり、際限のない道義で断罪することがないようにしたいと思いました。その基盤となるのが記録です。文書です。日本が収奪していないと李栄薫が確信したのは日本が行った土地調査の大量の文書群という記録が残っていたからなのです。朝鮮総督府の土地調査資料があったから、搾取神話に対して説得力ある反論を提示できたのです。私は改めて記録文書を後世に残し、審判を仰ぐことの大切さを教えられました。歴史家の知的廉直さの大切さも痛感いたしました。李栄薫と一緒に釜山市内から郊外の金海国際空港に向かう車中で金海デルタの土地の話を伺いました。いちいち説明はしませんが、読者賢者には『大韓民国の物語』八四頁でそのエッセンスを堪能いただければと思います。朝鮮総督府は小作農に有利な条件で土地を払い下げていたのです。

 さらに、三輪先生は韓国の言論空間の実態を、ご自身の体験とともにこう述べられるのです。

 筆者がある韓国の大学で『大韓民国の物語』について話すとメールでお伝えしたら、李教授から「韓国は民族主義という乱暴な怪物が支配しているまだ充分に現代化されていない国であることについて深く用心してください」という返事が届きました。釜山でデモクラシーセンターを見学しましたが、李承晩大統領、朴正照大統領への罵倒に満ちていました。韓国の左右のイデオロギー対立の激しさを実感するとともに、『大韓民国の物語』の理解に大いに役立ちました。

 ある韓国人の研究者の前で「李栄薫」の名前を出したら、シニカルな表情で笑いました。筆者が素晴らしい歴史家だと評価したら、冷笑をやめました。韓国国内のアカデミックな雰囲気では、「李栄薫」という名前を耳にした時、冷笑して嘲るというポーズを取るのが学者の雰囲気なのかもしれないと思いました。


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