三輪宗弘先生の「大韓民国の物語」書評で改めて見えた韓国の民族主義と李栄薫教授の苦悩

2013.06.15 Saturday 02:48
くっくり


 ここの解説は、pdfファイルからお読み下さい。194ページの下段中頃からです。

 その上で、三輪先生は韓国の歴史教科書の現状をこう嘆かれるのです。

 真理は何処にありや! 歴史認識とはいったい何なのだろうか!「朝鮮後期」に関する見方、二人の李と韓国主流派の間には大きな埋められない溝が横たわっていることは一目瞭然です。『国定韓国中学校国史教科書』の書き方は、学問論争が行われている問題の一方的な一面だけを若い生徒や学生に強制するという乱暴なやり方、その問題点を教科書に携わった書き手は何にも認識できていないのです。まさに『国定韓国中学校国史教科書』が糾弾する「独裁政治」そのもののやり方なのです。

 『大韓民国の物語』第二部「文明史の転換」の最初の章で「李朝はなぜ滅んだのか」というテーマを掲げ「歴史学者は李朝が滅んだ原因についてきちんと話をしないままでいるようです。歴史教科書を読んでも、李朝が滅んだ理由については何の説明もありません」(五八頁)と指摘して、日本が侵入してきて滅んだのならば、なぜそれを防げなかったのか、「真摯に問い直さなければなりません」と切り返します。「宝石にも似た美しい文化をもつ李氏朝鮮王朝が、強盗である日本の侵入を受けた」(三三〇頁)では歴史家は何の説明もしていないのと同じであると喝破します。簡潔に言えば、無秩序な伐採によって山林が荒廃し、土地の生産性がほぼ三分の一の水準にまで落ち込んだことが李朝崩壊の原因なのです(六四頁)。詳しくは先に言及した「朝鮮における『19世紀の危機』」論文をひもといていただくのがいいでしょう。

 『現代コリア』二〇〇六年一一月号(韓国の総合雑誌『月刊朝鮮』八月号に掲載されたインタビューの翻訳)に「民族主義で先進化はできぬ 自由主義が民族主義の代案」という記事の中で「私は奴婢史に対する研究から出発しました。朝鮮時代には人口の最大四〇%が奴婢で、奴婢に対するすさまじい差別が存在しました。……日帝時代に社会的解放がなされると、心から日帝に協力する人たちが出たものです」と李栄薫は答えています。


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