2013.06.15 Saturday 02:48
くっくり
「日本びいきの右派」というレッテルを張られ、韓国の横暴な民族主義者の「検閲に引っ掛かり、散々な目に遭」い、その挙句、人民裁判にかけられ、謝罪を強要される。一二万通の抗議のメールが送りつけられ、研究室のドアに卵が投げつけられ、ソウル大学校教授辞職の危機に追い込まれる寸前になったのでした。民族主義者の検閲を意識して書かなければならなかったことは第二部の「7 日本軍慰安婦問題の実相」で李教授が言及している日本人学者の名前を眺めればわかるでしょう。本意でなかったであろうことは私にはすぐ読み取れました。「自己検閲」を行い、じっと耐え、次章の一手に力を蓄えています。ここは表面的な字面だけでは、李教授の真意を読み取れなくなります。李栄薫の受けた傷の大きさは如何ばかりでしょうか。そのことも私には以心伝心で通じてきます。
李教授は植民地収奪論、民族主義の神話に対して資料で以って戦いに臨みました。供出米に関して「米が輸出されたのは総督府が強制したからではなく、日本内地の米価が30%程高かったからです」(七八頁)と指摘します。また、土地調査事業についてある教授は「片手にピストルを、もう片手には測量器を抱えて」と書き、ある歴史小説家は、土地調査に抗議した農民を日本人巡査が「木にくくりつけ、即決処分で銃殺を行う場面」を描くのですが、「法が存在していたという事実を完全に無視している」と李栄薫は嘆き、このような歴史を事実だと若者が思い込んだなら、「野蛮人のように乱暴に二十世紀の歴史というものを考えることでしょう。なんとも恐ろしいことです。」(八七頁)と結びます。李栄薫の将来への憂いとこれではいけないという悲壮な決意が伝わってきます。前政権の歴史清算運動である「過去史清算」のテレビ番組に出演したのも、「聞違った事実認識に基づいている」、「社会に向かって発言しなければならないという一種の強迫観念にかられていました」(一七二、一七三頁)「もうこれ以上は黙っていることはできないという気持ちが高まっていたようです」と振り返ります。しかし李栄薫には、「日本の右翼と同じで「慰安婦」を自発的に金稼ぎに行った「公娼」であると発言した」という批判を受けるという悲劇が待ち受けていました。こんな歴史像が流布され、真実とされるならば、日韓関係は永久に亀裂が入ったままであるとの危機感もあったのでしょう。マッカーシズムに対峙したD・リースマンなどのアメリカ知識人を髣髴させるものがあります。いうならば韓国版マッカーシズムである親日派狩りに正面から挑んだのが李栄薫であったのです。書き出しでも述べましたが、我々は隣国で何が起こったのか、今何が起こっているのか、知らなければなりません。
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