2006.08.20 Sunday 02:53
くっくり
きっかけは、この5年間、小泉首相が靖国神社に参拝し続けてきたことだ。
参拝支持派の雑誌は「靖国批判にだまされるな」「中国を沈黙させよ」と主張した。勝者が一方的に裁いた東京裁判は認めない。侵略ではなく自衛の戦争だった。南京虐殺はなかった。そんな論調も小泉政権下で声高になっていた。
そうしたことがかえって、戦争の実態や責任をきちんと問い直そうとする動きを招いたのかもしれない。
読売新聞は昨夏から1年かけて戦争責任を検証し、その総括を特集した。朝日新聞とはしばしば論調が対立してきた読売だが、東京裁判とは別に、自ら戦争責任を追及した意欲を高く評価したい。
結論はおおむね私たちの考え方と一致していた。東京裁判と重なるところも多い。例えば、東京裁判で絞首刑になったA級戦犯7人は、軽重はともかく、みんな責任はあるという認定だった。
日中戦争を拡大させた近衛文麿首相について、太平洋戦争を始めた東条英機首相に次いで重い責任があるとした。日中戦争が泥沼化した先に太平洋戦争が起きたことを思えば、共感できる。
「戦争を続けた責任」を追及したのは新鮮だった。このため終戦を先送りした鈴木貫太郎首相も重い責任を問われた。
気になる点もある。昭和天皇の責任を問わなかったのは東京裁判と同じだが、法的にはともかく、全く責任なしと言い切るには論拠が弱かった。
15日の社説には、「犠牲者は、日本国民だけではないが……」とあるが、おびただしい犠牲を出したアジアの人々への責任には踏み込まなかった。それも物足りなかった点だ。
この意味で、NHKが放送した「日中戦争――なぜ戦争は拡大したのか」は、南京虐殺の真相にも迫った力作だった。兵士の証言や新資料を使って、甘い見通しで始め、軍の独走を防げなかった戦争の実態を描いた。ほかにも、「硫黄島玉砕戦」「満蒙開拓団はこうして送られた」などの優れた番組が目についた。
力がこもった報道はそれだけではない。毎日新聞は連日、靖国問題を考える連載や特集を組んだ。A級戦犯合祀(ごうし)に昭和天皇が不快感を持っていたことを裏付ける元宮内庁長官のメモをスクープした日経新聞のことも忘れがたい。
朝日新聞も、大型企画「歴史と向き合う」などで戦争責任や戦没者の追悼のあり方を問い直す作業を続けている。
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